前略 墓の中から 第1章 約束が違う!さだ子の嘆きその2

大橋理宏

大橋理宏

テーマ:故人の気持ちになってみた

ガサガサガサッ

「ええっ!なんか虫が来ましたよ。お義母さん。」

さだ子の悲鳴。

「あなた、そんな虫なんて気にしてたらこのカロート(納骨室)のなかじゃ暮らしていけないわよ。
ゴキブリ、ゲジゲジ、クモは当たり前にいるから。
隣の佐藤さんちなんか、ミツバチが巣を作ってゆっくり寝ちゃいられないってはなしよ」

「生前、お義母さんは絶対に虫は無理だったじゃないですか、ずいぶん変わりましたね。この中にいると強くなるんですか?」

「そうね、さだ子さん、骨として形はあるけど私たちってどこに体があるのかわからないから虫も触れられないみたい。そう感じたら平気になっちゃたのよ」

カロートの中は不快なこともあるようだけど、骨となってしまうとどうやら少しずつ悟って強くなっていくようだ。ちょっと落ち着いて周りを見渡すと天井にはずしりと重そうなお墓が、そしてその下が今いるカロートの中。立ち上がる壁部分はコンクリート製なのか地下駐車場みたい。
で、足元は若干の湿気、そう土だった。

「なんで!この足元だけ土なんですか?お義母さん。」

「あなたそんなことわからなかったの?
いつか土に帰らなきゃいけないから土なのよ」

「でも、骨壺の中じゃ土に帰れないじゃないですか」

「あらそうね。それはそうと土に帰るとどうなっちゃうのかしらね。死んでも勉強しなくちゃね」

ちょっと落ち着いてきたさだ子は、最初に義母が「ずーーと言いたかったことがある」といったのを思い出しました。

意を決し聞くことにしました。

「お義母さん。ずーーっと話したかったことってなんですか?」

続く

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大橋理宏
専門家

大橋理宏(石工技能士)

株式会社大橋石材店

神奈川・横須賀でお墓コンサルタントとして活動。「終活」全般の悩みを的確に答え、相談できる先など悩みを解決。お墓に関する悩みは特に実績があります。生前予約の墓じまい「お墓のみとり@」を主宰

大橋理宏プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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