前略 墓の中から 第1章を書いてみて
ガサガサガサッ
「ええっ!なんか虫が来ましたよ。お義母さん。」
さだ子の悲鳴。
「あなた、そんな虫なんて気にしてたらこのカロート(納骨室)のなかじゃ暮らしていけないわよ。
ゴキブリ、ゲジゲジ、クモは当たり前にいるから。
隣の佐藤さんちなんか、ミツバチが巣を作ってゆっくり寝ちゃいられないってはなしよ」
「生前、お義母さんは絶対に虫は無理だったじゃないですか、ずいぶん変わりましたね。この中にいると強くなるんですか?」
「そうね、さだ子さん、骨として形はあるけど私たちってどこに体があるのかわからないから虫も触れられないみたい。そう感じたら平気になっちゃたのよ」
カロートの中は不快なこともあるようだけど、骨となってしまうとどうやら少しずつ悟って強くなっていくようだ。ちょっと落ち着いて周りを見渡すと天井にはずしりと重そうなお墓が、そしてその下が今いるカロートの中。立ち上がる壁部分はコンクリート製なのか地下駐車場みたい。
で、足元は若干の湿気、そう土だった。
「なんで!この足元だけ土なんですか?お義母さん。」
「あなたそんなことわからなかったの?
いつか土に帰らなきゃいけないから土なのよ」
「でも、骨壺の中じゃ土に帰れないじゃないですか」
「あらそうね。それはそうと土に帰るとどうなっちゃうのかしらね。死んでも勉強しなくちゃね」
ちょっと落ち着いてきたさだ子は、最初に義母が「ずーーと言いたかったことがある」といったのを思い出しました。
意を決し聞くことにしました。
「お義母さん。ずーーっと話したかったことってなんですか?」
続く