患者に信頼される「言葉づかい、敬語」
高齢化社会となり、高齢者の方々に対してのサービス「介護サービス」も、年々充実してまいりました。ですが、その介護施設でのサービスにおいても、人と接する際のマナー、つまり「接遇」がとても重要です。
今回のテーマは、『介護現場で必要な接遇とは』と題し、介護従事者の皆さんが、利用者様の「死を迎える」といった大変デリケートな場面に直面する際の、心構えと利用者様、ご家族様との接し方について、接遇の面から考えてみました。
実際にご依頼頂いた介護職員研修でのご質問に、お答えする形で記載しております。
ターミナルケアを希望されたご家族への声のかけ方について
●最終的に、ターミナルケア(看取り介護)を希望されたご家族への言葉・声のかけ方を教えてください。
その当事者となるご家族・利用者様の意思等から考えて、様々なケース・悩んだ末での答えである為、言葉かけやお声かけは一つとして同じものはないと言えます。ただ言えることは、『一人で悩まず、いつでも私共がご相談に乗りますので、ご安心下さい。』といったことお伝えすることではないでしょうか?
初めての事・家族となると決めかねること・相談窓口や社会的役割の方の存在を知らない方も多いと思います。そういった方々を、介護のプロとしてアドバイスできる方へと導くことも、介護職員の役割だと感じます。
ターミナルケアを行っているお部屋に、入室する時の注意点
●ターミナルケアを行っているお部屋に、入室する時に注意しなければならないことを教えて下さい。
①利用者様に対して・・・
その時のお体の状態や状況によって気を付けるべき点は変わりますが、接遇の面でアドバイスするなら、痛みや不安で眠れないことも多くなることを察して、入退室の音には気を遣い、目を覚ましていらっしゃるようなら、優しい眼差しでアイコンタクトを取って(状況や様子を読み取って)から、お声掛けすることではないでしようか?元気な方とお会いする時とは、全く逆の気配り・心配りが必要といえます。
②お部屋に入室してご家族の方と接する場合の注意点として・・・
介護職員がいかに終末期を迎えた利用者様とご家族の橋渡しをするかが大切といえます。意思表示が出来る間に、利用者様がご家族に伝えたいことは何か。ご家族は心配で面会に来ていても間柄やこれまでの面会状況によっては、利用者様に対して「どうしたらいいかわからないもどかしさ」があると思います。この両者の気持ちを上手く縮めることが出来る介護職員としての立ち位置であると、みなさんの看取り介護の努力も報われると思います。
【例えば・・・】「ゆっくり優しく、この辺りを撫でて差し上げると、痛みが和らぐようです。」といった、面会のご家族への接し方へのアドバイスを、押し付けにならないように促すことや、「○○さんが「忙しいのに、よく来てくれて有難い」と、おっしゃっていました。」といった、たまたま職員に言った内容であっても、利用者様の意思や気持ちを、ご家族の方々に伝え気持ちをつないでさしあげられるような対応が出来れば、ご家族もどんなにかお気持ちを救われるかしれません。
お亡くなりになった際、(直後に)ご家族におかけする言葉とは
●お亡くなりになった際、(直後)ご家族におかけする言葉はどういった言葉がよいか、教えて下さい。
「死」の受け止め方、その死を悼んでのなぐさめの言葉の捉え方は、人それぞれです。
マニュアル化して、このように言いましょう…というよりは、相手の気持ちを慮って(おもんばかって)利用者様、ご家族様それぞれに深々とお辞儀をしてその時の気持ちを伝えることが、人としての尊厳を最後の時まで支えてきたみなさんの応対ではないでしょうか?「残念です。」「(つい最近までお元気だった利用者様の場合)急な事で・・・。」といった、悲しみやつらさで言葉にならないといったお声かけのみで、十分かと思います。
※これは、通夜や葬儀の際のお声かけや挨拶の言葉とも共通することですが、日本人は謙虚さや「無」を大切にする文化があります。たくさん何かを話すより、言葉が続かない部分「無」から相手の気持ちを察するという能力に長けています。「何か言わなくては…」、「こういえば良い」というのではなく、皆さんの素直なお気持ちが表情や態度から伺えれば、ご家族の方々からすれば十分だと思います。
お通夜や、葬儀参列の際の介護職員としてのマナー
●お通夜や、葬儀参列時にご家族や親類の方におかけする言葉、または挨拶で適切なものをいくつか教えて下さい。
お通夜・葬儀参列時のご家族や親類の方へのおかけする言葉、挨拶の言葉で気を付けるべき点は、介護職員が通夜・葬儀に参列することは、施設の決まりなので…といったご様子で参列したり、マニュアル化した挨拶言葉で「ご愁傷様です。」といって帰るだけなら、ご家族の方・親類の方も「わざわざお越しいただかなくても・・・」と、感じてしまいます。特に地方での場合、施設で最後を迎えた事への罪悪感や周囲からの目や伝え漏れることに対して、特に敏感であると言えます。参列が職員本人の希望であるなら、葬儀の身なりを整えて(印象が大切です)自分自身も看取り介護で関わりのあった方へのお別れの意味で、参列することが望ましいと思います。「関わりがあったので先輩達と一緒にきました…」といったような、受け身な態度や、大人数での参列は控えましょう。
お声かけの仕方としては、特に「してあげた」というニュアンスが出る言葉を避けることが大切です。「ご縁があって接することが出来た。介護させて頂いたけれど、逆にたくさんの思い出や私達に思いやりのある言葉をかけてくださった。ありがたいことです。」と、いった利用者様の人柄や思い返して浮かぶご様子を、自分自身もご家族の皆さんも分かち合える言葉をおかけすることが、『ホスピタリティのあるお声かけ』ではないでしょうか?
これは、後日ご家族が改めて施設にご挨拶にいらっしゃった時にも、共通する挨拶やお声かけの一例でもあります。
ただ、グリーフケア(遺族が悲しみから立ち直る為の周囲の支えや手助け)の面からも、「気を落とさず、頑張ってくださいね」といった、精一杯介護なさったご家族にさらに頑張りを求めるような、安易な励ましは慎みましょう。
「声にならない。言葉にならない。」…人がなくなった時の一番の感情であり、言葉が悲しみで詰まるその気持ちが、ご利用者様・ご家族様への最良の受け応えではないでしょうか? 音(声)にならない、耳には届かないけれど・・・、真の心を届ける意味でも、深いお辞儀が大切といえます。
このように、介護でのターミナルケア(終末期での介護)においても、人との接し方「接遇」が重要なののです。