患者に信頼される「言葉づかい、敬語」
医師と看護師、それぞれの役割をもって患者さんに接する
初診の際は、病気・けがといった診察の理由は違っても、誰もがなんとも言えない不安を抱えて来院すると思います。そこには治療に対する不安もありますが、病院ならではの独特の雰囲気の中での待ち時間、初対面の医師に症状をうまく伝えられるかという不安、看護師の方の接し方は自分や家族に対して優しいか…といった面まで、患者さんの思いや不安の材料は数多いといっていいでしょう。
確かに治療することが、医師・看護師の一番の使命ですが、やはりこういった不安をもって来院しているということを、常に意識して患者さんとの心の距離を縮めていく必要もあります。接遇の上で心の距離を縮めるということは、相手に配慮しながら不安を抱えた心の扉を開くためのアクションをしていくこと。つまり、医師は患者さんの症状の訴えに対し、しっかりと相槌をうって話しの内容を受け止めたという態度を見せることが必要です。
そしてこれから行う治療や検査といった説明を、患者さんの目を見て、理解しやすい言葉で説明することが、「この医師にお願いして良かった」という安心感や信頼につながります。看護師は、医師と患者さんとのパイプ役。両者のパイプの長さを縮めるだけでなく、ぎすぎすした雰囲気にならないよう、会話の潤滑油になるよう気を配る必要があります。その為にも、マスクをしていて笑顔は見えなくても、優しいまなざしで患者さんの言葉に耳を傾ける姿勢が大切です。今述べたことは、医療現場での接遇の基本です。
➤患者に好感を与える、感じの良い挨拶、聴く姿勢
患者のみなさんの「ありがとうございました」の言葉に応える
一般企業と違い、病院を出るときに「ありがとうございました」と言うのは病院側ではなく患者側です。
病院側は、患者さんに「ありがとうございます」と言わない代わりに、それ相応のサービスを提供する使命があります。では、患者の期待に応える医療サービスとは、どうあるべきなのか…。大切なこととして、相手に触れて診察し、治療をする医療従事者は、企業よりも細かな心配りが求められるということです。その為にも、医療における接遇マナーは欠かせないといってよいでしょう。
ここで、医療機関での接遇マナーの際にどうしても触れておかなければならないことがあります。それは、「患者に対しての呼称」についてです。
2001年に厚生労働省が、国立病院のサービスに関する指針で「患者の呼称は、原則として姓(名)に様を付ける」という記載をしたことを機に、患者様という呼び方が医療接遇で広がりました。確かに会話の中ということで、一番手っ取り早く、相手に解り易い改善方法での取り組みであったのかと思います。しかし、消防学校の初任科生を担当している私にとって、患者様という呼び方には、疑問を持っていました。
消防では、病気やけがをされた方は、「傷病者」という呼び方で、搬送の際の意識の確認も、「○○さん、わかりますか?」と、呼びかけます。患者⇒「患う者」傷病者⇒「傷や病のある者」、どちらも人が健康を望む以上、なりたくない自分に様を付けて恭しくして、果たしてそれが敬うということにつながるのだろうか…?接遇も形だけに捉われると、このように相手が良い印象に受け止められないのに、職場の中で正しいこととして拡がることがあります。ただ、国が指針を出す背景には、「お医者様」と呼ばれ、医療はその専門知識をもった人が偉い、お願いするしか患者は選択がないという風潮があったのも事実です。
ですが今、医療での患者との向き合い方は、様変わりしています。それは、「チーム医療」という考え方。つまり、一緒にこの病気を乗り越えるチームの一員であるという考え方です。患者・医師・看護師・介護士・事務担当者そして患者の家族が、一つのチーム。その為に医療現場の接遇で求められるのは、医療従事者も患者も『協同できる間柄を築く』ことが大切なのではないかということです。対等な立場で親しい間柄というより、互いの立場を敬い尊重し合う間柄という意味での、パートナー。とはいっても今までよく知っている仲ではない患者さんとのコミュニケーション。だからこそ、初めて出会う患者さんであっても、安心して心を開いてもらえるコミュニケーションの取り方として「接遇マナー」を取り入れて頂きたいのです。
「患者様」という呼び方が、院内接遇の改善ではないのです。患者さんに向き合う気持ち、その為のコミュニケーションの取り方が大切なのです。
患者のみなさんからの「ありがとう」を聞く為に…。
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◆ビジネスマナー・接遇を通し円滑なコミュニケーション方法を提案
問題点や改善点、実際のクレーム案件など企業ごとに内容を把握した上で、研修の内容を組み立てます。
現場ですぐに実践できるビジネスマナー・接遇を分かりやすく伝えています。
ビジネスマナー講師 谷澤優花