コラム
応援するのではなく、患者と共に闘うということ
2015年4月18日 公開 / 2019年4月22日更新
応援するのではなく、共に闘うということ
医師には病気を治す手助けができます。看護師には、病気を治したいと思う心を支える助けができます。つまりそれは、患者さんの「心」に触れるチャンスが多く、共にいる時間や接点が多いのが、看護師だからです。
患者さんと共にいる時間が多いということは、医師よりも関係性を深く築くこともできます。患者さんのことを理解し、医師よりも親しみを持って接することができるのが看護師ではないでしょうか?
看護師は患者さんの入院期間中、一日を共に過ごしています。状態が良くなっていくのに気づくのも、悪くなっていくのに気づくのも、看護師が医師より先なのです。看護師の「看」という字は、「手」という字と、「目」という字が組み合わさっています。患者に「手」で触れ、その「目」で気づき、治療を支える。支える為には、患者と同じ立ち位置でなくては支えられません。遠くから声をかけて応援するのではなく、患者さんとこの病気を一緒に闘い乗り越えましょうという心の支え、寄り添う気持ちが必要なのです。
患者を支え、励ますのも看護師の役割
なかなか治らない病気の場合、治療をしていくのにも根気が必要とされます。
病院を訪れる患者さんの中には、何度も何度も病院に足を運ぶ人もいます。病院への受診回数が多いと、「一体いつまで通えばいいのだろう」と、体調の悪い中通う疲労感も蓄積され、心も折れてきます。
そんな患者さんを支え、励ますのも看護師の役割です。少しでも不安を軽減してもらうことも大事なケアの一つといえます。
私は長期間の治療を要する専門医療機関での接遇研修の際は、『ゆるやかな人間関係を築く』ということを、研修のテーマとして指導しています。
接遇を取り入れたものの、あまりにも仰々しく患者さんと接すのでは、患者さんも距離感を感じ、度々来る院内で居心地の悪い印象を持つことでしょう。
私は、「方言」も使い方によっては、患者さんの心を和らげ耳慣れた温かみのある言葉かけが出来る為、看護師のみなさんにもお勧めしています。特に高齢化社会が進むなかにおいて、ご高齢の方々にとっての地域の独特の方言やアクセントは会話を楽しみ、心和む大切なコミュニケーションだからです。ですが、その使い方として、私がお勧めするのは「会話のエッセンス」として方言を加える方法。受診最初からお帰りになるまで、ずっと方言ではなく、人柄がにじみ出る普段の会話の中(たとえば天気、食べ物、趣味、最近のニュース、喜怒哀楽を表現する際)で、料理で言うならスパイスのように、少しだけ使う方が、いいと思います。院内でどの患者さんに対しても行うお声かけは、日々の業務の中でパターンが出来ていると思います。そのお声かけは、標準語で丁寧な言葉遣いをする。ですが、例えば点滴の時に患者さんから話しかけられた時には、その会話に同調するように、方言で応答しても良いと思うのです。
丁寧な対応というのは、正しい言葉遣いでうやうやしく相手を奉ることではなく、相手が心地よく感じる優しさや思いやりのある会話ではないでしょうか?
「雨が、ずーっと降って、嫌やなぁ~。病院くるのもしんどいわぁ。」と言われたら、「ほんまやね~。そんな中よう来てくれました。ちょっとでも、はよ治しましょう。」と、伝えたなら・・・。 (香川県の方言でのやりとり)
患者さんは、どんな気持ちでしょう。
正しい日本語、丁寧な表現や敬語をきちんと使いこなすことも大切ですが、医療の現場では、慣例化したマナーよりも大切な、『あなたらしい言葉かけ』⇒「ホスピタリティ」が大切だと思います。
患者さんの今と未来を支えるのも看護師
病院という場所は、患者さんの今と、そして未来を変える場所でもあります。
終わるはずだった命がふきかえす場所でもあり、続いていた命が途切れる場所でもあります。また、新たな命が誕生する場所でもあります。
そこに従事している看護師は当然、患者の未来を支える役割も担っています。
ですから、看護師は患者の未来のことを見据えて行動する必要があります。
医師よりも距離の近い看護師は自分の言葉で、患者さんに寄り添い、思いを伝えることができます。しんどい体、不安で一杯の心、先の見得ぬ治療・・・。そんな患者さんに、一筋の明るさを見出すお声かけ。
患者さんの今と未来を考えた上で、何をするべきか、何を伝えるべきかといったことが、看護師には求められているのです。
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