派遣会社における変形労働時間制の労使協定作成ポイント
前回、平成30年改正派遣法では、
「同一労働同一賃金」の実現のために、
派遣先に新たな義務が課されることを紹介しました。
「派遣先は自社の従業員の待遇情報を派遣元に伝えなくてはならない」というものです。
理由は、派遣社員の待遇を決定する際に、
同一労働同一賃金の観点から、派遣先の正社員と比較する必要があるためです。
ただ、派遣先としては、
「他社(派遣元)に自社の給料(待遇)を教えるのは嫌だなあ」という反応になるのが予想されます。
そこで、派遣「元」が、一定の要件を満たす労使協定を締結した場合は、上記適用は除外されます。
労使協定の主な協定項目は次のとおりです。
①同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準と同等以上であること。
②段階的・体系的な教育訓練等による派遣労働者の職務の内容・職務の成果・能力・経験等の向上を評価し、その結果を勘案した賃金決定を行うこと。
③賃金以外の待遇についても、派遣元の正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと。
ポイントは、3つ。
まずは、「派遣先ではなく、派遣元が労使協定を締結する」ということです。
派遣先は、派遣元に自社の待遇情報を提供することに抵抗を感じると思います。
そうすると、提供義務が除外されることになる、この労使協定をきちんと締結している派遣元を多くの派遣先が選ぶことになることが予想されます。
次は、「評価制度を策定しておく必要がある」ということです。
なぜなら、上記②で、派遣労働者について適正な評価のうえで賃金決定する仕組みが求められているからです。
どのような評価制度でも結構ですが、制度を策定するにはある程度時間がかかります。
今から準備を始めることが肝要です。
さらに、「派遣元正社員と派遣社員の不合理な待遇差をなくすこと」です。
つまり、原則では派遣先の正社員との「同一労働同一賃金」が求められおり、派遣元で労使協定があれば例外となるのですが、その際には自社(派遣元)の正社員とは少なくとも待遇に不合理があってはいけないということです。
現在、正社員には各種手当があるが、派遣社員には特にない(あるいは額に差がある)等、待遇差について合理的な説明ができないようなものは、すぐに対応を検討すべきでしょう。
このように、派遣元である派遣会社にとって今回の改正は大きなインパクトがあります。
内容が伴っている労使協定がないと、選ばれない派遣会社となってしまう恐れがあります。
平成32年(2021年)4月1日施行までに、残された時間はあまりありません。