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続・カリウムと糖尿病(前編)―食習慣・糖尿病との関係―

松田友和

松田友和

テーマ:糖尿病

はじめに(これまでのおさらい)

2023年に、「カリウムと糖尿病」というタイトルのコラムで、血清カリウム値と糖尿病の関係についてご紹介しました。

前編:カリウムと糖尿病
後編:低カリウム血症を防ぐ方法

今回の本題に入る前に、要点を簡単に振り返っておきます。

インスリンの分泌にはカリウムが重要な役割を果たしており、血清カリウム値が低いとインスリン分泌に影響することが知られています。
実際に、筑波大学・虎の門病院の研究グループが、糖尿病でない5,938例を対象に5年間追跡した調査では、血清カリウム値が正常範囲内であっても低め(4.0mEq/L未満)の場合、2型糖尿病の新規発症リスクが有意に上昇することが示されました。

また前回は、低カリウム血症を引き起こす原因は、①摂取不足、②排泄亢進(消化管・腎臓から)、③細胞内へのカリウムの移動、の3つに大別されること、特にコーラの多飲や糖質の過剰摂取が③の原因となり、周期性四肢麻痺などの症状を来しうることをご紹介しました。

外来診療では、その後も軽度の低カリウム血症の方に出会う機会が多く、今回改めて「低カリウム血症」を取り上げます。
前編では「食習慣との関係」「糖尿病との関係」という2つのテーマを、後編では「寿命との関係」と、カリウムを効率よく摂るための実践的なポイントをご紹介します。

テーマ① 食習慣との関係

見落とされがちな摂取不足

低カリウム血症というと「利尿薬の副作用」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
確かに、教科書的には利尿薬や消化管からの喪失が低カリウム血症の代表的な原因とされています。
しかし、実際に降圧利尿薬を内服している方は限られており、外来で頻繁に目にする「軽度の低カリウム血症」の背景には、もっと身近な食習慣が関わっているのではないかと、私は考えています。

まず、単純な「摂取不足」の観点から見てみましょう。
オーストラリアの成人を対象とした調査では、カリウム摂取量の全体量が推奨量を下回っており、その原因として、摂取しているカリウムの4割以上を加工食品・超加工食品が占めていたことが挙げられています。
食品は精製・加工が進むほどカリウムが失われやすいため、加工食品に頼った食生活は、理論上の摂取量より、実際に摂取できている量が少なくなることで、カリウムの摂取不足につながりやすいと考えられます。

糖質摂取で起こるカリウムの移動

さらに重要なのが、「摂取した糖質が引き起こす、細胞内へのカリウムの移動」という視点です。
前回もコーラの多飲による低カリウム血症の症例をご紹介しましたが、これは氷山の一角にすぎません。
実は健常な人でも、糖質を摂取してインスリンが分泌されると、血清カリウム値は一時的に低下することが、古くから実験的に証明されています。

代表的なのが、DeFronzoらによる研究です。健常な男性を対象に、様々な濃度でインスリンを持続的に注入したところ、生理的な範囲のインスリン濃度でも、用量に応じて血清カリウムが低下することが確認されました。
2時間の観察で、血漿カリウムは平均0.81mmol/L低下したと報告されています。

また、Nataliらの研究では、正常な方・高血圧の方それぞれにブドウ糖を摂取していただき、インスリン分泌と血清カリウム低下の関係を調べたところ、糖質摂取後のインスリン分泌そのものが、血清カリウムの低下と直結することが示されています。

つまり「利尿薬を飲んでいるかどうか」に関わらず、精製された糖質や清涼飲料水を頻繁に摂取する習慣そのものが、食後のたびに一時的な血清カリウム低下を引き起こしている可能性があります。
これが繰り返されることで、健診結果に異常値マークがつかない程度の「正常範囲内で低め」の状態が、慢性的に定着しているのではないかというのが、外来で日々感じている実感です。

テーマ② 糖尿病との関係

利尿薬の研究からわかること

2023年のコラムでは、血清カリウム値が低いこと自体が2型糖尿病の発症リスクになるという疫学データをご紹介しました。
今回は、なぜそうなるのか、そのメカニズムをもう少し掘り下げてみたいと思います。

一つの手がかりが、降圧利尿薬(サイアザイド系)を使った研究です。
高齢者の収縮期高血圧を対象とした大規模臨床試験(SHEP試験)のデータを解析した研究では、この薬による糖尿病発症リスクの上昇のうち約41%が血清カリウム値の低下によって説明できること、血清カリウムが0.5mEq/L低下するごとに糖尿病の発症リスクが45%上昇することが示されました。
血清カリウムが低いこと自体が、糖尿病の発症に直接関わっていることを、かなり明確に示すデータです。

食後高インスリン血症という視点

もっとも、外来にいらっしゃる方の多くは、利尿薬を内服していない方だと思います。
そこで着目したいのが、「食後高インスリン血症」という切り口です。

近年、食事の内容が慢性的な食後のインスリン分泌過剰(食後高インスリン血症)を引き起こすことが、大規模な疫学研究によって明らかにされています。
米国の看護師健康調査のデータをもとに開発された「食事性高インスリン血症指数(EDIH)」という指標では、赤身肉・加工肉、揚げ物、高エネルギー飲料、精製穀物などを多く含む食事パターンほど、血中のインスリン分泌マーカー(C-ペプチド)が高くなることが示されています。
このスコアが高い食生活の人ほど、その後の2型糖尿病発症リスクが高いことも、複数のコホート研究で確認されています。

先ほどご紹介したように、食後のインスリン分泌そのものが血清カリウムを一時的に低下させることは、実験的に確立された事実です。
この2つの知見を重ね合わせると、精製糖質や加工食品中心の食生活を続けている方は、食後のたびにインスリンの分泌過剰と血清カリウムの一時的な低下を繰り返しており、それが慢性的な「軽度の低カリウム血症」として定着し、さらにそれ自体が2型糖尿病の発症リスクを高めている、という悪循環が生じている可能性があります。

この「食習慣→食後高インスリン血症→軽度の低カリウム血症→糖尿病発症リスク上昇」という一連の流れを直接検証した研究はまだありませんが、それぞれの矢印を裏付ける研究は既に存在しています。
血清カリウム値が低めの方に出会ったときは、利尿薬の有無だけでなく、日頃の食生活についても振り返っていただく価値があると、私は考えています。


次回は、血清カリウム値と寿命との関係、そしてカリウムを効率よく摂取するための実践的なポイントをご紹介します。

参考文献

1. Heianza Y, Hara S, Arase Y, et al. Low serum potassium levels and risk of type 2 diabetes: the Toranomon Hospital Health Management Center Study 1 (TOPICS 1). Diabetologia. 2011;54(4):762-766.
2. Bolton KA, Trieu K, Woodward M, et al. Dietary Intake and Sources of Potassium in a Cross-Sectional Study of Australian Adults. Nutrients. 2019;11(12):2996.
3. DeFronzo RA, Felig P, Ferrannini E, Wahren J. Effect of graded doses of insulin on splanchnic and peripheral potassium metabolism in man. Am J Physiol. 1980;238(5):E421-427.
4. Natali A, Quiñones Galvan A, Santoro D, et al. Relationship between insulin release, antinatriuresis and hypokalaemia after glucose ingestion in normal and hypertensive man. Clin Sci (Lond). 1993;85(3):327-335.
5. Shafi T, Appel LJ, Miller ER 3rd, Klag MJ, Parekh RS. Changes in serum potassium mediate thiazide-induced diabetes. Hypertension. 2008;52(6):1022-1029.
6. Tabung FK, Wang W, Fung TT, et al. Development and validation of empirical indices to assess the insulinaemic potential of diet and lifestyle. Br J Nutr. 2016;116(10):1787-1798.

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松田友和
専門家

松田友和(内科医)

医療法人社団翠藍 糖尿病内科まつだクリニック

糖尿病専門クリニック。糖尿病専門医による薬物療法に加え、認定看護師や療養指導士など糖尿病専門スタッフがチームで食事療法や運動療法も行う。フットケア外来、禁煙外来、糖尿病患者友の会「ばんぶぅ会」もある。

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