脂質異常症と食事との関係について
はじめに
「グルテンフリー」という言葉をご存じでしょうか。食事という意味であるダイエットと併せて、グルテンフリーダイエットという食事療法があります。どんな方にグルテンフリーダイエットが必要なのか、そもそもグルテンフリーとは何を意味しているのか、について紹介させていただきます。
グルテンとは
グルテンとは、小麦などの穀物に含まれるタンパク質の一種であるグルテニンとグリアジンが水を吸収して網目状、コイル状につながったものです。小麦粉に水を加えてこねると、粘着力と弾力のあるパン生地が出来ます。これは、グルテンの働きによるものです。
小麦粉の種類にも、グルテンが関わってきます。ふすま類(米では「糠(ぬか)」に相当する部位)などを取り除いてから製粉するタイプの小麦粉は、含有するタンパク質(主にグリアジン、グルテニン)の割合と、形成されるグルテンの性質によって強力粉、中力粉、薄力粉に分類されます。
ちなみに、強力粉(用途:パン、うどん、中華麺など)はタンパク質の割合が12%以上のもの、中力粉(用途:素麺、たこ焼き、お好み焼きなど)はタンパク質の割合が9%前後のもの、薄力粉(用途:ホットケーキ、スポンジケーキ、クッキーなど)はタンパク質の割合が8.5%以下のものをさします。
パスタの小麦粉の種類は少しややこしいです。国産の一部の乾燥パスタは粗挽きの強力粉を用いて作られていますが、一般的な乾燥パスタは、タンパク質は多いがグルテンは少ないデュラム小麦から精製される粒子の粗いセモリナ粉という小麦粉から出来ています。ついでに、卵を用いて生パスタを作る場合に使われるのは薄力粉です。
グルテンフリーとは
グルテンフリーは、グルテンを含まない、という意味です。グルテンを含まない食事をグルテンフリーダイエット(ダイエットは、食事という意味です)と言います。
グルテンフリーダイエットと一言にいっても、その目的は様々です。
セリアック病
セリアック病とは、グルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に炎症変化を起こすことで、栄養の吸収不良が生じる疾患です。ヨーロッパでは150人に1人、米国の一部の地域では250人に1人にセリアック病がみられると言われています。一方で、日本を含むアジアやアフリカでは、極めてまれにしかみられません。セリアック病であると診断された場合は、グルテンを除去した食事、つまりグルテンフリーダイエットが重要な治療法となります。
小麦(グルテン)アレルギー
小麦だけではなく、一般的にアレルギーの症状は多岐にわたります。
呼吸器症状:喘息や呼吸困難など
耳鼻科的症状:くしゃみ、鼻水、鼻閉など
消化管症状:下痢、腹痛など
皮膚症状:蕁麻疹、かゆみなど
さらに、急激に呼吸困難になり、意識も低下するアナフィラキシーショックもアレルギー症状です。
食物アレルギーの10人に1人程度は、小麦(グルテン)アレルギーだと言われています。
その場合の治療はアレルギーの原因となっている小麦、特に含有量の多いグルテンを避けることが必要です。
グルテン不耐性(グルテン過敏症)
グルテン不耐性(グルテン過敏症ともいわれます)とは、グルテンを摂取することで、様々な体調不良を引き起こします。
腹痛、下痢、頭痛、頭がぼやける、倦怠感、抑うつ、不安等の様々な身体症状や精神症状が知られています。実は、グルテン不耐症の実態は不明な点が多く、診断基準も確立されていません。グルテンアレルギーとの区別もつきにくい病態です。広い意味では、グルテン不耐性の中に、グルテンアレルギーも含まれるのかもしれません。
その他
上記の3つが、グルテンフリーダイエットが必要なケースなのですが、実際には、もう1つのパターンがあります。それは、健康に良さそうだから、糖尿病に良さそうだから、という理由でグルテンフリーダイエットを取り入れているケースです。
何人かの有名人が、グルテンフリーダイエットをして体調が改善したと発信していることがグルテンフリーダイエットがもてはやされている要因だとされています。
確かに、グルテンフリーダイエットでは、必然的に小麦の摂取量、つまり炭水化物量が減ります。しかし、過剰に摂取していない炭水化物を減らすことが健康につながるのかどうかは明らかにはなっていません。実際に、グルテン摂取量を減らすことが長期的な健康をもたらすというエビデンスはありません。さらに、グルテンを除去した食事は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの大切な栄養素が不足する傾向があります。もしグルテンフリーダイエットを長期間続けるのであれば、これらの栄養素や代替食の質にも留意する必要があります。
さいごに
世の中にはたくさんの健康食が紹介されています。これだけを食べていれば長生きできるだとか、これさえやめていれば健康を維持できる、といった食品はありません。
様々な情報に惑わされることなく、それぞれの人の状況に応じて、健康も意識しながら、出来るだけ食事を楽しんでいただきたいです。