1型糖尿病を持つ人のセルフスティグマとHbA1cとの関係
はじめに
低血糖による症状と言えば、冷や汗、だるさ、動悸などを思い浮かべる方が多いと思います。実は低血糖によって、身体の左右いずれかに麻痺(片麻痺)が出現することがあることをご存じでしょうか。
低血糖症状とは
低血糖症は、エネルギー源であるブドウ糖が神経にいきわたらなくなることで生じます。
それらは自律神経症状と神経組織糖欠乏症の2つに分類されます。
自律神経症状には、冷や汗、倦怠感、動悸などがあります。これらは、警告症状とも呼ば
れていて、身体にブドウ糖が足りていないことを教えてくれています。
自律神経症状に気が付かないでいる、あるいは放置しておくと、神経組織糖欠乏症状が起こります。これは読んで字のごとく、神経組織にエネルギー源である糖が足りなくなるため、神経が働けなくことで引き起こされる症状です。
神経組織糖欠乏症状には、脱力症状、眩暈感などの非特異的症状に加えて、視力障害、低体温、片麻痺、死亡をきたしうることが報告されています。
なぜ低血糖で片麻痺が起こるのか
神経細胞から構成されている脳には様々な働きがあります。体が低血糖状態になったときに、低血糖に対して弱い(脆弱)な脳の領域が、単なるブドウ糖不足による神経障害だけでなく、神経細胞自体が障害されてしまい、細胞性浮腫を起こすことで、脳梗塞と同じような症状を起こしてしまいます。この低血糖に対して弱い(脆弱)な脳の領域として、手足の運動に指示を出している場所があります。そのために、低血糖性片麻痺と呼ばれる状態が起こり得ます。脳梗塞で生じる片麻痺とは異なり、低血糖性片麻痺の場合は発症早期で低血糖を是正する、つまりブドウ糖を投与することで、比較的速やかに(数分から数十分単位で)片麻痺は回復します。
今までに報告されている低血糖片麻痺は圧倒的に右片麻痺が多いという特徴があります。この理由は明確にはわかっていませんが、大多数の優位半球が左脳であることが一因と言われています。単純化すれば、たくさん使用している領域の方がたくさんブドウ糖を必要としているから、と言えるかもしれません。
さいごに
インスリン治療中の方や、SU剤(オイグルコン、アマリール、グリミクロンなど)など一部の低血糖を引き起こす可能性がある薬を内服されている方には低血糖を起こす可能性があります。低血糖症状には典型的なタイプだけでなく、今回紹介した片麻痺や様々な神経症状として現れる可能性があります。糖尿病の治療中の場合は、ご自身やご家族、友人に何らかの異常があれば、低血糖の可能性もあることを念頭において対応するようにしてみてください。