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松田友和

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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

1型糖尿病を持つ人のセルフスティグマとHbA1cとの関係

2023年9月4日

テーマ:糖尿病

コラムカテゴリ:医療・病院

はじめに

糖尿病を持つ人は、スティグマ(負の烙印)を感じることによる心理的苦痛を経験し、それは社会生活の質にも悪影響を及ぼすことが問題となっています。
以前に、私たちのクリニックでは、神戸市看護大学の稲垣先生との共同研究により、2型糖尿病を持つ人のセルフスティグマ(糖尿病を恥ずかしいと感じること)の問題点について報告しました。

論文投稿のお知らせ~糖尿病関連の恥について~

その中で、

  • 調査会社に事前登録した日本人の2型糖尿病患者のうち、32.9%が糖尿病関連の恥を経験し、17.5%が同僚や友人に病気を隠していました。
  • 心理的幸福感と糖尿病特有の精神的苦痛には、恥じらいのない人と恥じらいのある人の間で有意差が見られましたが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)やセルフケア頻度に有意差はありませんでした。


ということを明らかにしました。

これらは、2型糖尿病を持つ人を対象とした報告でしたが、今回は朝日生命成人病研究所附属医院が実施した1型糖尿病を持つ人を対象とした、セルフスティグマの影響についての論文を紹介させていただきます。

論文は、こちらを参照ください。

紹介論文の内容

1型糖尿病を持つ人のセルフスティグマは、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と関連がある。

  • 対象は、朝日生命成人病研究所附属医院に通院されている1型糖尿病を持つ人のうちの109人です。年齢58.3±13.5歳、男性56.8%、糖尿病罹病期間25.5±13.8年、BMI 22.9±4.0、HbA1c 7.6±0.9%(過去3回の通院時の平均)
  • 多変量解析により、BMI(β=0.36、P<0.001)と、セルフスティグマの指標であるSSS-J(β=0.23、P=0.009)がHbA1cと有意な正の関連にあることが示されました。つまり、肥満度が高いほど、セルフスティグマの傾向が強いほど、平均血糖値が高くなることを示唆しています。
  • 同じく多変量解析の結果より、フルタイム勤務(パートタイム勤務を基準としてβ=-0.44、P=0.001)や退職後・無職(同β=-0.35、P=0.010)は、HbA1cと負の関連にあることが示されました。
  • 年齢、性別、糖尿病罹病期間などは、HbA1cとの関連は認めませんでした。


まとめ

私たちの報告では、2型糖尿病を持つ人のセルフスティグマは、心理的幸福感と糖尿病特有の精神的苦痛と関連していましたが、HbA1cとは関連を認めていませんでした。今回の1型糖尿病を持つ人に関する論文報告では、セルフスティグマがHbA1cにも影響を及ぼしている可能性を指摘しています。
これらの論文報告が、糖尿病とセルフスティグマとの関係を完全に明らかにしているわけではありません。ただし、1型糖尿病および2型糖尿病のいずれであっても、糖尿病を持つということが、セルフスティグマを引き起こしてしまう可能性をはらんでいる現状を打破していく必要があることは疑いようがありません。
糖尿病を持つ人におけるスティグマについて、より広く周知されることで、活発に議論していくことが必要だと考えています。

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