HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と血糖値との関係
私たち糖尿病内科まつだクリニックと神戸市看護大学の稲垣聡先生らとの共同研究で進めていた臨床研究がイギリスの医学誌である、” BMJ Open Diabetes Research & Care “に掲載されました。
Title: Diabetes-related shame among people with type 2 diabetes: an internet-based cross-sectional study
論文は下記のURLからご覧になれます。
[[https://drc.bmj.com/content/10/6/e003001]]
日本語に翻訳すると、
「2型糖尿病患者の糖尿病関連の恥:インターネットベースの横断研究」
となります。
糖尿病を持つ人が、糖尿病を持たない人と変わらない人生を歩むための障壁の1つとして、スティグマ(負の烙印)が注目されています。
スティグマについては、当コラムでもご紹介させていただきました。
糖尿病診療における「スティグマ」と「アドボカシー」を考える
スティグマ形成においては、糖尿病診療に携わる医療従事者の関与も示唆されています。糖尿病診療の現場からスティグマを払拭していくためには、まずは現状を把握することが重要です。そこで、この研究では糖尿病患者においてスティグマの要因となり得る背景の評価、および糖尿病療養に及ぼす影響を検討することを目的としました。
掲載された論文の内容をまとめます。
この話題ですでに知られていること
•糖尿病を持つ人は、糖尿病を持たない人よりも生活の質が低くなります。
•糖尿病を持つ人は、スティグマを感じることによる心理的苦痛を経験し、それは彼らの社会感情的生活の質に悪影響を及ぼします。
今回の調査で追加される内容
•調査会社に事前登録した日本人の2型糖尿病患者のうち、32.9%が糖尿病関連の恥を経験し、17.5%が同僚や友人に病気を隠していました。
•心理的幸福感と糖尿病特有の精神的苦痛には、恥じらいのない人と恥じらいのある人の間で有意差が見られましたが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)やセルフケア頻度に有意差はありませんでした。
•糖尿病関連の恥の経験に関連する特徴には、「若い」、「女性」、「大学を卒業していない」、「経済的負担感を感じている」、「自己効力感が低い」、および「高い統制的動機づけ(※)」が含まれていました。
※統制的動機づけについては、下記のコラムをご参照ください。
糖尿病自己管理行動に動機づけレベルが及ぼす影響
この研究が研究、実践、または政策にどのように影響するか
•この研究では、糖尿病関連の恥が糖尿病患者の精神的苦痛と心理的幸福に関連していることがわかりましたが、糖尿病関連の恥の原因、結果、およびケア方法は特定されませんでした。恥が日常生活にどのように影響し、個人の精神的苦痛を軽減するかを判断するには、さらなる研究が必要です。
研究の結論
糖尿病を恥ずかしいと感じている人の背景には特徴があり、その恥ずかしさは糖尿病療養に影響を及ぼしている可能性が示唆されました。自己効力感や統制的動機づけなど、療養支援により介入できる要素もあると考えています。