糖尿病性神経障害(2)
健康診断でHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が高いことを指摘されたことはありませんか?
今回は、糖尿病の検査項目の1つであるHbA1cについてまとめてみたいと思います。
~HbA1cとは~
血糖値が高いことが糖尿病の特徴です。しかし、血糖値は食事により大きく変動します。単に血糖値が130 mg/dlといっても、何を何時、どれくらい食べたかによって、その評価は変わってきます。そこで必要とされる項目が慢性の高血糖の指標であるHbA1cです。
Hb(ヘモグロビン)は、日本語では血色素量のことです。赤血球に含まれる赤い色素のたんぱく質を意味しています。まさに血液が赤い由縁です。
このヘモグロビンは酸素を体中の組織へ運ぶという大事な役割があります。血液の中には、糖分(ブドウ糖)も一定数存在していますので、ある一定の割合で、ヘモグロブンとブドウ糖がくっつきます。ブドウ糖がくっついたヘモグロビンを糖化ヘモグロビンと言います。HbA1cは、ヘモグロビン全体の中の糖化ヘモグロビンの割合を意味しています。血液中にブドウ糖がたくさんあれば、糖化ヘモグロビン量は増えますし、ブドウ糖が少なければ糖化ヘモグロビンは減ります。したがって、HbA1cは高血糖の指標になるというわけです。
~HbA1cが意味すること~
糖化ヘモグロビンの割合ですので、HbA1cの単位は%になります。正常値は6.2%未満で、6.5%を超えると糖尿病である可能性が高いとされています。血液中のブドウ糖の濃度が高いとヘモグロビンとくっつく割合も高くなると言いましたが、もう少し正確に言いますと、HbA1cが高いということは、過去1~3か月の血糖値の平均値が高いということを意味しています。なぜ、1~3か月なのか?これには、赤血球の寿命が約120日であることが関係しています。赤血球の寿命が4か月であることより、HbA1cと平均血糖値との関係は、直近1か月間が約50%、1か月前~2か月前が約25%、2か月前~4か月前が約25%、寄与していると言われています。
その日は食事内容によって左右されないというメリットがありますが、1,2週間の血糖値の変化を反映しているわけではないという点には注意が必要です。
~HbA1が測れない場合は~
健康診断の項目として、血糖値はチェックしていても、HbA1cは測定してない場合があります。そんな場合には、空腹時血糖からHbA1cを予測する方法もあります。
〇 空腹時血糖 100 mg/dl ≒ HbA1c 5.6 %
〇 空腹時血糖 126 mg/dl ≒ HbA1c 6.5 %
つまり、空腹時(朝食を食べすに採血した場合)の血糖値が120 mg/dlを超えているような場合は、糖尿病の疑いが強いと言えます。
~HbA1cと血糖値の関係が崩れる時~
最後に、HbA1cが血糖値をうまく反映していない場合があることをご紹介しておきます。
それは、ヘモグロビン自体に遺伝的な異常がある場合(異常ヘモグロビン症)と赤血球寿命が変化する場合です。
最近、特に注目されていることは、生理的(病的ではなく)に赤血球寿命が短い方や長い方がいるということです。この生理的な赤血球寿命の違いにより、HbA1cが高めに出る場合(赤血球寿命が長い場合)と低めに出る場合(赤血球寿命が短い場合)があることが明らかになってきています。血糖値のマネージメントとしてHbA1cを使うことが多いですので、注意が必要です。
糖尿病診療においては、診断においても、治療の効果判定においても、HbA1cは幅広く活用されています。しかし、糖尿病のマネージメント基本は、あくまでも血糖値をマネージメントすることです。HbA1cをマネージメントすることではないことは言うまでもありません。
参照:
・日本糖尿病学会 「メタボリックシンドローム予備群」検討のためのワーキンググループ報告
・糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 (国際標準化対応版) 糖尿病 55:485, 2012