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松田友和

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松田友和(まつだともかず) / 内科医

糖尿病内科まつだクリニック

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コラム

認知バイアスを知る

2022年8月29日

テーマ:心理学

コラムカテゴリ:医療・病院

~はじめに~

人との出会いで、様々な第一印象を持ったという経験はありませんか。まだしゃべったこともない人に対して、「誠実そう」だとか、「軽薄そう」だとか。私たちは、今までの経験や、自身の考え方に基づいて、初対面の人に対して想像で、「こういう人だ」と「認知」してしまいます。あとになって、相手を深く理解すると、第一印象とは違って、実はこんな人だったのか、と気づくことも経験されていると思います。
認知バイアスとは、私たちの誰しもがもっている、考え方の偏り(バイアス)や思い込みによって、間違った判断をしてしまうことです。


~なぜ認知バイアスが起こるのか~

私たちは、日々様々な情報を得て、その情報をもとに判断しています。例えば、コンビニでお昼の弁当を選ぶ時を考えてみましょう。たくさんの商品が並んでいて、目移りしてしまいます。これは美味しそうだけど、血糖値はあがってしまいそう。これは、野菜がたくさん入っているけれど、物足りなくなってしまいそう。このように、今までの経験や、知識をもとに、どの商品にするのか、判断していることになります。

このような場合には、

情報(陳列している商品を見る)
⇒直感で判断
⇒直感で判断しきれなかった場合は、論理的に思考する
⇒商品を決定する

という思考が働いています。

将棋棋士のレジェンドである羽生善治さんの著書である『直感力』のなかで、次のように語っておられます。

「何をしたらいいのか、どうなっているのか見えにくい、分からない時代を生きていかねばならない。そのときのひとつの指針となるのが直感だ。」
                       直感力 (PHP文庫) 文庫 – 2020/12/2

実際に、私たちは多くの事象を直感で決めています。この直感は、私たちが今までの人生で考えてきたことや経験してきたことをもとにしてなされる判断ですので、実際に多くの場合は、自身にとって正しい結論を導きだしています。また、直感に頼らず、常に論理的思考に沈んでしまいますと、時間がいくらあっても足りません。

しかし、一方で直感には、自分自身の思考の偏り(バイアス)があることも事実です。認知バイアスという概念を知っていることで、より正しい判断を導き出すことができるようになります。

認知バイアスには、いくつかの種類があります。
今回は、3つだけ紹介させていただきます。

【正常性バイアス】
自然災害、火事、事故、事件などといった何らかの被害が予想される状況になってしまっても、自分にとって都合の悪い情報を軽視していまい、「自分は大丈夫なはず」「大したことにはならないはず」と思い込んでしまう心理現象のことです。最近の異常気象のニュースを他人事と思っていませんか。逆に全てのニュースを自分の事と捉えてしまうと、過剰なストレスがかかってしまいますので、直感と論理的な判断を上手に組み合わせることが大切です。

【後知恵バイアス】
予想外の野球チームが20年振りに優勝しました。「今年は、優勝する気がしていたんや!」
本当ですか??
物事が起こった際に、これは予測が出来ていたことだと錯覚してしまう心理現象のことです。

【ハンドワゴン効果】
多くの人が支持している物事が、より一層支持される心理現象のことです。
ハンドワゴンとは、パレードの先頭を行く楽隊車のことで、楽隊車の後ろに行列が続いていくことから生まれた言葉です。
みんながそうしているから、それが正しいことであると錯覚してしまうことを意味しています。様々なダイエット方法が、生まれては消えていっています。これもハンドワゴン効果かもしれません。


~認知バイアスを防ぐために~

まずは、認知バイアスがあるということを自覚することです。私たちには、認知バイアスに陥る可能性があることを理解していると、重要な物事の決定の際には、直感で得た結論を鵜呑みにせずに、論理的に深堀するという対策を立てることができます。

次に、自分以外の意見や客観的なデータに耳を傾けることも大切です。私たちは、自分の考え方が一番正しいと思いがちです。確かに、自分の事は自分で判断するということも重要かもしれませんが、認知バイアスを防ぐためには、それが反対意見であっても、複数の視点から物事を判断するという姿勢も大切です。大事な物事ほど、客観的に評価することを意識してみましょう。ひと手間加えることで、無用なストレスやトラブルを防げるかもしれません。

この記事を書いたプロ

松田友和

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松田友和(糖尿病内科まつだクリニック)

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