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動機づけ面接の4つのプロセス
動機づけ面接では、チェンジトークを引き出して、将来の変化をもたらすために、4つのプ
ロセスが必要であると考えています。
1,engaging(関わる)
:絆を結ぶ。相互の信頼と敬意のある治療関係を確立することです。
2,focusing(フォーカスする)
:話題を特定する(変化の対象をフォーカスする)こと。
フォーカスの3つのスタイル
A, 指示スタイル:面接する側がフォーカスを決定する
B, 追従スタイル:相手の求めにフォーカスを合わせる
C, ガイドスタイル:指示と追従の中間。方向性を協働的に探索する。動機づけ面接におけるフォーカスのプロセスは、一般的にはガイドスタイルから始めるとされています。必要な時に、スタイルを変えていきます。
3,evoking(引き出す)
:変化への動機づけを引き出す。
キーワードは、両価性、チェンジトーク、維持トーク。
1の「関わる」、2の「フォーカスする」、は、チェンジトークを引き出すための準備とも言えます。
4,planning(計画する)
:変化へのコミットメントを固め、具体的な行動計画を立てる。
計画を立てることは最終ステップではなく、変化への最初の一歩となります。チェンジトークが多く引き出されてこれば、変化の始まりです。その際に、具体的な計画が用意されていて、それを実行する意図があると他者に表明した場合、変化を成し遂げる可能性が高くなります。
これら4つは、この順番で登場することが多いのですが、必ずしも順番通りではありません。必要に応じて、それぞれのプロセスに戻る場合もあります。
動機づけ面接の中核的技能
上記のプロセスを達成するために、動機づけ面接の際のコミュニケーション方法として、いくつかの技能があります。
・開かれた質問をする(Open question)
:対象者の振り返りを促すことができる。相手の内側にある知識の枠組みの理解が進み、協働的な関係が強化され、方向が明確になる。
・是認する(Affirmation)
:ポジティブなものを協調する。対象者に敬意を示し、大切にする。
是認することは、相手の強みや努力を認め、支援し、奨励すること。
・聞き返す(Reflection)
:相手が言い表そうとしている思考と感情を別の言葉であるいは、別の声で聴くことで、相手は自分の思考と感情について熟考することができる。聞き返しの真髄は、相手の言葉の意味を推測すること。
・サマライズ(Summary)
:対象者の述べた情報をまとめる。集め、繋ぎ、転換のサマライズがある。その人の変化に対する動機と意図、具体的な計画をまとめる。
これら4つの英語表記の頭文字をとって、OARS(ボートを漕ぐオール)と呼んでいます。
さらに、
・情報提供と助言
:対象者の許可を得てから、情報あるいは助言をだす。
情報の解釈にも手助けをする。
情報提供も必要になることがありますが、動機づけ面接の目的は、
「あなたにとって必要なものはあなたが既に持っています。それを一緒に探しましょう。」
でありますので、一方通行の情報提供では、結論を誘導してしまう可能性があります。情報提供前に、許可を求めることも大切ですし、その情報の解釈も手助けする必要があります。
動機づけ面接の定義
動機づけ面接のエッセンスを紹介してきましたが、最後に動機づけ面接の幾つかの定義を紹介させていただきます。動機づけ面接を知りたい、使いたいというそれぞれの立場から、定義づけしています。
定義1:目的に焦点を合わせた一般人向け
「動機づけ面接は、協働的なスタイルの会話によって、その人自身が変わるための動機づけとコミットメントを強める方法である。」
定義2:臨床家のための実践的な定義
「動機づけ面接は、パーソン・センタード・カウンセリング・スタイルであり、変化に関する両価性から生じる一般的な問題を扱うものである。」
定義3:技術的な定義
「動機づけ面接は、協働的かつ目的志向的なコミュニケーションのスタイルであり、変化に関する言語に対して特に注目するものである。受容と深い共感をもたらす環境の中で、個人が持つ変わる理由を引き出し、探ることによって、その人の動機づけと特定された目標に向かうコミットメントを強めるようにデザインされている。」
家庭や職場、友人関係など、様々な状況によって、動機づけ面接の考え方を上手に適応してみると、何かしらの変化が起こるかもしれません。
まとめ
今回は、動機付け面接について紹介しましたが、動機づけ面接が自律的動機づけを引き出す、唯一の方法でもなければ、最高の手段でもありません。動機づけ面接は、他のエビデンスに基づく臨床スキルやアプローチと馴染みあうとされていて、一緒に使うことで治療継続とアドヒアランスが向上すると言われています。
動機づけ面接はシンプルですが簡単ではありません。今まで説明してきた変化のプロセスは自然なものであり、誰でも直感的に知っていて、認識できるものではあると思います。しかし、動機づけ面接の実践には複雑な技能も使いこなす必要があります。動機づけ面接技能は臨床家であれば、キャリアの全期間を通じて磨くことができる技能であるとされています。また、その臨床家でも毎日の臨床の中で使う様々な技術のうちの1つにすぎないということも大切で、他の術と柔軟に織り交ぜることも必要です。
臨床家の方々にとっては、面接力のスキルアップの1つの方法として、臨床家以外の方も、人生を豊かにするコミュニケーション手段の1つとして、動機づけ面接に触れられてみてはいかがでしょうか。
参考文献:動機づけ面接<第3版> 上巻・下巻