ミネラルを知る~各論編1~
はじめに
食後の血糖値を制するための方法として、「カーボカウント」という考え方を紹介しました。
2020年12月8日記事
2021年7月6日記事
カーボカウントは炭水化物量からインスリン量を決定する方法でしたが、炭水化物を制するための考え方として、グリセミックインデックス(指数)とグリセミックロード(量)があります。今回は、これら2つの用語を紹介したいと思います。
食後の血糖値の決まり方
3大栄養素と言えば、炭水化物、蛋白質、脂質を指します。食事でこれらを摂取した際に血糖値は上昇するわけですが、それぞれが血糖値に及ぼす影響には大きな違いがあります。実は、食後数時間の血糖上昇は炭水化物量に依存しています。そのため、「カーボカウント」という考え方が登場することになります。一方、蛋白質は食後数時間以降に血糖値に影響を及ぼし、脂質はさらに遅れてだらだらと血糖値を上昇させます(下図参照)。これらは、蛋白質と脂質は消化管から吸収され、体内で代謝をされてから、血液中の糖分となりえることが要因です。
今回、紹介するグリセミックインデックス(指数)とグリセミックロード(量)は、同じ炭水化物であっても、食直後の血糖上昇に及ぼす影響は異なっているために登場した考え方です。
グリセミックインデックス(指数)
炭水化物は、糖質と食物繊維からなります。同じ糖質といってもたくさんの種類がありますので(2021年3月3日の記事参照)、それらの種類によって血糖値に及ぼす影響度合いも変わります。また、食品によって食物繊維の含有量は様々です。食物繊維を多く含むとそれだけ糖質の吸収は、ゆっくりになりますので、血糖値の急激な上昇を緩和してくれます。したがって、同じ炭水化物と言えども、その種類によって、食後の血糖上昇は大きくことなってきます。このように、実際の食品が食後の血糖上昇に及ぼす影響を数値化したものがグリセミックインデックス(指数)です。
2021年3月3日記事
ブドウ糖50 gを摂取した後の血糖上昇パターンを100として、糖質50 gを含む食品を摂取した後の血糖上昇パターンを数値化しています。
グリセミックインデックスは、GIと略されますが、健康が意識される昨今では、様々な食品メーカーより様々な低GI食品が販売されています。多くの研究により、血糖値上昇が緩やかな低GI食品は、糖尿病の合併症予防に有効であることや、逆に高GI食品は、肥満を助長することなどが報告されています。このGIを用いた食事療法は、実際の臨床の場面でも活用されています。
グリセミックロード(量)
グレセミックインデックス(GI)には、注意点もあります。
それは、炭水化物から食物繊維をのぞいた“糖質”の量が考慮されていないという点です。
例えば、じゃがいものGIは約90、イチゴは約30です。
じゃがいも1個の糖質は25g、イチゴ1個の糖質は1~2gです。
GIは炭水化物が50gになるように食べたときの血糖値の上がり方を示しますので、
じゃがいもを2個食べたときのGIが90、イチゴを15~30個食べたときのGIが30ということになります。ここで、イチゴを一度に15~30個食べることはあまりないという問題が生じます。
このように、「普通に食べる量」を考慮にいれたものがグリセミックロードです。
数値は「食品中に含まれる炭水化物の量(g)×GI÷100」で計算されます。
つまり、実際に食べるもののなかに含まれる、炭水化物の質と量を同時に示しています。
当たり前ですが、低GIでもたくさん食べれば数値は上がり、高GIでも少量であればそれほど数値は上がらないことになります。
グリセミックインデックス(指数)とグリセミックロード(量)の問題点
先ほどのイチゴの話には、イチゴは確かに血糖値はあまり上げないかもしれませんが、イチゴに含まれる果糖には血糖を上げにくくても太りやすいという落とし穴もあります。GIが低ければ、それだけで健康食品というわけではないことにも注意が必要です。
さらに、グリセミックインデックスおよびグリセミックロードは、調理の仕方でも変わりますし、何と一緒に食べたかにも大きく影響されます。じゃがいものGIが高いという話をしましたが、ジャガバタとポテトサラダでは、じゃがいもの吸収のされ方が変化します。先に、サラダや肉、魚など別の食材を食べていれば、じゃがいもを単独で食べた場合より血糖値の上昇は抑えらます。つまり、グリセミックインデックスやグリセミックロードはあくまでも参考値ですので、あまり数値ばかりに振り回されず、数値を上手に利用して、食を楽しむことが大切です。