世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬が血糖値と体重減少にもたらすインパクト ~GIPとGLP-1の糖代謝における作用の違いから考える~
はじめに
糖尿病治療の3本柱は、食事療法、運動療法、薬物療法です。食事療法と言えば、質素な食事、味気ない食事を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、糖尿病の有無にかかわらず、人生を豊かに生きるために、「豊かな食生活」は欠かせません。心身ともに健康的に食事療法を実践していくための手段の1つに「カーボカウント」があります。
食事療法の基本的な考え方
糖尿病の食事療法と言うと、味気ない食事、質素な食事というイメージがあるかもしれません。実際は、糖尿病に特別な食事があるわけではありません。基本的には、「適切な量をバランスよく食べる」に尽きます。つまり、糖尿病食というより、長寿食と言った方がよいかもしれません。ご家族で一人だけ糖尿病だからと言って、一人だけ特別なメニューにする必要はなく、家族全員で楽しく食卓を囲んでいただきたいです。
〇適切な量とは
たくさん動く人とあまり動かない人では、必要な摂取エネルギーは変わってきます。それぞれ、体格や体質も異なりますので、同じような体型でも必要なエネルギーは異なります。
一般に、男性では1日あたり1600~2000 kcal、女性では1400~1800 kcalと言われています。例えば、コンビニやお弁当屋さんの幕の内弁当1つで、500~800kcalです。あくまでも目安ですので、目標体重や病状に応じて、個々の適切な摂取量を見つけていきましょう。体重変動などを参考にするのも1つの方法です。
〇バランス良くとは
三大栄養素は、炭水化物、蛋白質、脂質の3つを指します。1日の総エネルギー量の50~60%を炭水化物で、蛋白質は20%以下、脂質は25%以下がバランスの良い食事と言われています。勿論、それ以外にもビタミンやミネラルなどの重要な栄養素がありますので、多くの食品、食材を摂取することが望ましいです。
カーボカウントとは
三大栄養素の炭水化物、蛋白質、脂質の中で、食後の血糖値を最も上昇させるものはどれでしょうか。下の図は、横軸が食事からの時間、縦軸が血糖値の上昇を示しています。
実は、食後の血糖値の上昇は炭水化物量で決まっているのです。そのため、食事ごとに必要なインスリン量は、その時の食事に含まれる炭水化物量を見積もって、その炭水化物量に応じて決めていけば、食後の血糖値を制御できるという考え方があります。炭水化物(カーボハイドレード)を数える(カウントする)ため、カーボカウントと略されています。
カーボカウントのメリットは、インスリン量を決める時に、メニューの中の炭水化物のみに注目すればよいので、食事の選択がしやすくなることです。インスリン量に食事を合わせるのではなく、食べたい食事にインスリン量を合わせることができます。
一方で、炭水化物ばかりに気をとられてしまうと、蛋白質や脂質を食べ過ぎてしまい、食事バランスが崩れ、体重増加を引き起こしてしまうというデメリットが考えられます。
あくまでも食事療法の基本は、適切な量をバランスよく、です。
次回は、カーボカウントの具体的な方法をお伝えしたいと思います。