持続血糖モニタリングシステムの進化
はじめに
糖尿病内科と言えば、1つの病名だけを扱う内科かと思われるかもしれません。しかし、同じ糖尿病と言っても、糖尿病の病態は個々の患者さんにより大きく異なっています。内服薬の種類やインスリンの種類がそれぞれの患者さんで異なっているのも、それぞれの患者さんで病態が違っているからです。私たちは、その多様性を認識し、個々の患者さんの病態に合った治療法を提案していきます。
糖尿病は大きく分けると、1型糖尿病、2型糖尿病、それ以外の糖尿病に分けられます。
約1000万人と言われている糖尿病患者数の大半は2型糖尿病ですが、そのうち10~14万人と言われている1型糖尿病について紹介していきます。
1型糖尿病は生活習慣病ではない
1型糖尿病は、インスリンという血糖をコントロールしているホルモンの分泌が低下している状態です。多くの場合、インスリンがほぼ完全に分泌されなくなります。分泌されなくなる原因は「自己免疫」であると言われています。通常の免疫は、ウイルスなどの外部から体内に侵入してくる異物をターゲットにしていますが、「自己免疫」とは私達の免疫システムが、自分自身の細胞を攻撃してしまうことを指します。インスリンを作っている膵臓にあるβ(ベータ)細胞を自己免疫が攻撃してしまい破壊させることで、インスリンが分泌されなくなり、血糖値が上昇してしまう状態が、1型糖尿病です。大切なことは、1型糖尿病の発症に、生活習慣は関係ありません。なぜ自己免疫がβ(ベータ)細胞を攻撃してしまうのかはっきりとしたことは明らかにはなっていません。現時点では、原因はよくわからないが、膵蔵からインスリンが分泌されなくなってしまう状態が1型糖尿病である、とも言えるかもしれません。したがって1型糖尿病に罹患した場合に、ご自身を責めることは絶対にしないでください。繰り返しますが、1型糖尿病は自己免疫疾患です。
1型糖尿病の治療方法
血糖値が上昇する原因は、インスリンの分泌が障害されていることですので、対処法としては、インスリンを上手に補ってあげることになります。インスリンを補う方法としては、インスリンの自己注射です。生理的なインスリン分泌は、食事とは関係のない基礎インスリン分泌と、食事の際に必要な追加インスリン分泌にわけられます。大事なことは、インスリンに合わせて、食事をはじめとしたライフスタイルを変えていくのではなく、ライフスタイルに合わせて、インスリン自己注射を工夫していくことです。例えば、食事の際に打つインスリン量は、食事に含まれる炭水化物(カーボハイドレード)の量に応じて(カウント)、増減させるというカーボカウントという方法が主流になっています。同じ炭水化物量を食べても、人それぞれ必要なインスリン量は違います。以前は、1型糖尿病は血糖コントロールが難しいから、出来るだけ食事を節制しなければならないと考えられていました。しかし、1型糖尿病は食生活が原因で発症したわけではありません。カーボカウントを導入することで、出来るだけ豊かな食生活を送っていただきたいと思います。
(後編に続く)