第61回日本糖尿病学会年次学術集会に参加
世界トップクラスの長寿国となった日本が直面している問題の1つが、認知症の増加です。
我々のクリニックにも患者さん自身、配偶者、ご両親、祖父母が認知症であるというケースがたくさんあります。認知症になった際には、本人の生活能力が低下するために、介護者の役割が重要になってきます。認知症のために介護者を悩ます症状が「BPSD(行動・心理症状)」と言われるものです。
実は認知症の症状には、「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」があります。「中核症状」は記憶力の低下、判断力の低下、見当識障害(いつ、どこがわからなくなる)、など、本人の生活能力の低下を引き起こします。
一方で、「BPSD(行動・心理症状)」とは、暴言、暴力、徘徊、せん妄、昼夜逆転、物取られ妄想など、周囲の人との関わりを困難にする症状を指します。これらが、周囲の人(介護者)を悩ませてしまいます。
糖尿病をしっかりとケアすることは、将来の認知症を予防するためにも、今の認知機能を改善させるためにもとても大切です。
詳しくは、当院でも土曜日の午前診と月曜日の午後診に外来をしていただいている神戸大学保健学研究科の木戸教授が神戸新聞に寄稿された記事を参照ください。
https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/ninchisho/201810/0011738179.shtml
また、身体を動かすということが、認知症の予防に大変重要であることが明らかになってきています。認知(コグニション)とケアを合体させて誕生した言葉が「コグニケア」です。木戸先生達、神戸大学の研究者が認知症対策のために、推進している認知症予防のためのプログラムです。
http://www.innov.kobe-u.ac.jp/pad/index.html
認知症の特効薬がない現状では、糖尿病をはじめとする生活習慣病の管理をすることや、運動習慣をつくることなどで、将来のご自身や、ご自身のご家族を守る必要があります。
最近、足の爪の痛みを訴えて歩かなくなった患者さんがいらっしゃいました。奥様が爪を切ろうとしても、痛みのためか触らせてもくれません。「BPSD(行動・心理症状)」の1つである介護抵抗です。足をみせていただくと、巻き爪が原因であることがわかりました。そこで、フットケア外来にて、爪のケアしたところ、痛みなく歩けるようになりました。2回目のフットケアが終了したのちの外来受診には奥様から、「最近は夜に錯乱することもなくなってきたので、精神科からもらっている頓服も使わなくてすむようになった。」との喜びの声を聞くことが出来ました。「BPSD(行動・心理症状)」の1つであるせん妄が改善したようです。もしかしたら、足の痛みが消失したことで、歩けるようになったことが要因の1つではないかと思われます。
このように、一見関係のないように思えるフットケアと認知症も繋がりがあります。自分自身とご家族のために、足の先から頭まで、大事にケアして、元気に長生きできるようにしていきましょう。