【掲載】専門家時事ネタコラムJIJICOに掲載されました
”TSUNAGU for Diabetes”
先日、「患者さんの心理に寄り添った糖尿病教育」を考える会に参加してきました。神戸大学糖尿病内分泌内科の岡田裕子先生が企画され、昨年から始まった会で、本年も100名以上の糖尿病医療従事者が集いました。
第1部では奈良県立医科大学の石井均先生から、『動くこころ変わる行動ー医療者患者コミュニケーションと医療学ー』という講演をしていただきました。
糖尿病発症→放置→合併症という良くない流れは、糖尿病発症→血糖コントロール→元気で長生き、に変えることが出来ます。でもこれはサイエンス(科学)の話であって、人には「こころ」がありますので、サイエンスがそのまま当てはまるわけではありません。そのため、患者側にも医療者側にも「うまくいかない」という葛藤が生まれます。サイエンスと「こころ」をうまくつなぐためにも良いコミュニケーション方法を学んでいく必要があります。
石井先生は著書の中でも、「聴く力」「続ける力」「待つ力」が大事だと指摘されておられます。その中でも「待つ力」は、ただ待てばよいわけではないと言うお話が印象的でした。「持ちこたえる力」と言った方が適切であろうとおっしゃっておられました。人生100年時代とも言われています。1人の患者さんに長く寄り添っていくことが大切だと再認識させていただきました。
第2部では、各施設の糖尿病診療への取り組みと題して、3施設からの報告がありました。持続血糖モニタリングシステムやカンバセーションマップを用いた取り組みの報告などがありました。私たち偕生病院/糖尿病内科かいせいクリニックからは、管理栄養士/日本糖尿病療養指導士の石田さんが高齢者にカーボカウントを指導した経験について報告しました。1型糖尿病の血糖コントロールには、炭水化物量に応じて、インスリンの量を合わせていくことが大切です。これをカーボカウントと言います。カーボカウントを取り入れることで、インスリンに食事を合わせるのではなく、食べたい食事にインスリンを合わせることが出来るようになります。多くの患者さんが食べたいものを食べて、良い血糖コントロールが維持できるようにサポートしていきたいと思います。
第3部では、神戸大学の有志の皆様で結成された劇団TSUNAGUの皆様による寸劇を観覧しました。糖尿病を受け入れられない患者さん(架空の症例)とどのようにコミュニケーションをとっていくのかを他職種の方とディスカッションすることで、これからの療養指導の際のヒントが見つけられたのではないかと思います。
4時間の長丁場でしたが、あっという間に時間が経った有意義な会でした。糖尿病診療に取り組む多くの仲間と有意義な時間を共有できて大変心強かったです。糖尿病で心を煩わせている人を減らすことが出来るようにこれからも精進していきます。