「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語(17)「墓石は語る」伊東静雄さん(81歳)

能島孝志

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テーマ:お墓物語

お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」 

一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。

全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社)日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品)


お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」

「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。


その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。


涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。


マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。

これまでに、以下の16のをご紹介いたしました。

(1)「祖母との出会い」/三浦るるさん
(2)「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん
(3)「祖父のお墓で」/水野真由美さん
(4)「おはからい」/漣ほたるさん
(5)「星よりも近く」/倉木敬人さん
(6)「泣き虫」/藤田徹朗さん
(7)「田舎のお墓を訪れて」/長坂隆雄さん
(8) 「祖母の墓を抱きしめて」/梅山太郎さん
(9) 「祖母VS母・お墓バトル」/森下純一さん
(10) 「一片の桜」/咲ママさん
(11)「心の掛け橋 」/棚橋すみえさん
(12)「おじいちゃんがくれたもの」/匿名希望さん
(13)「お墓物語」/寺田聡さん
(14)「温かい土」/渡辺笑子さん
(15)「父の死と我が使命」/匿名希望さん
(16)「孫に引かれて歩む道」今野芳彦さん

今回は、静岡県在住の伊東静雄さんの作品、
「墓石は語る」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。


「墓石は語る」/伊東静雄さん(81歳・静岡県)

仲間11人で「鬼灯(ほおずき)会」と称する親睦会をつくったのは、
60年余も昔のことだが、この間に実に7人が鬼籍に入った。


残った4人はいずれも80代、いつ誰が天寿を全うするか分からない。


昨年の忘年会の席で「来春には先に旅立った連中の
墓参行脚(ぼさんあんぎゃ)をしようぜ」と評議一決した。

言いだしっぺは自分だし、今や運転も私しかできないので、
事前に入念な下見をし、万遺漏(ばんいろう)なきを図ることにした。

ご遺族に菩提寺と墓石の位置を改めて確認させてもらい、
努めて安全を期して実行できる準備をした。


当日は定刻に4人がピタリと集合し、まずまずの出だし。




無駄のないルートを選定してから静かに車を発進させる。


事を全部済ませるのに4時間半かかった。


お参りして直ちに次へというわけにはいかず、
しばらく故人を偲ぶエピソードを語り合ったりすると、
ついつい滞在時間が長くなるのである。


新発見があった。


すっかり失念していたが、一番早く黄泉へ旅立った
友の享年は、何と若干38歳。

(彼を見送ってから40年も経たのか)と、
感慨一入(ひとしお)なものがあった。

俳号を「余白」と称していたダンディなK君の墓碑には、
次の一句が彫られていた。


『吟行や しばし もんしろてふと行く』


秀句とはいえないが味わいのある佳句だ。


七つの寺を訪ねると最近の傾向なのか、墓石の形状もさまざまで、
故人か遺族のこだわりの一文字を大きく刻み込んだものも少なくない。


「和」「愛」「絆」などなど。




その中に「謝」があった。


没年45歳の男性。


感謝の「謝」か、謝罪の「謝」か。


この字の背景にはどんなドラマがあるのだろう。


もし当人の希望であったとしたら家族への切なる伝言であろうか。


遺族の意志だったとしたら、失って初めて、
『ああ、大切な人だった』という惜別の情であろうか。

故人の人生と深くかかわりのある、
一字であることに間違いはないだろうと思った。


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なお、部数に限りがありますので業者の方のお申し込みはご遠慮ください。


             
            ~つづく~



次回は、加納一馬さん(77歳・静岡県)の作品、
「癒しの園」をご紹介させていただきます。


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