「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語（21）「お墓が仲人」/岡部晋一さん（71歳）

2018年1月13日公開 / 2018年1月15日更新

テーマ：お墓物語

コラムカテゴリ：冠婚葬祭

コラムキーワード：お墓参り、お墓

お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」　

一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。

全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社）日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品）

「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。

その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。

涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。

マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。

これまでに、以下の20作品をご紹介いたしました。

（1）「祖母との出会い」/三浦るるさん
 （2）「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん
 （3）「祖父のお墓で」/水野真由美さん
 （4）「おはからい」/漣ほたるさん
 (5)「星よりも近く」/倉木敬人さん
 (6)「泣き虫」/藤田徹朗さん
 (7)「田舎のお墓を訪れて」/長坂隆雄さん
 (8) 「祖母の墓を抱きしめて」/梅山太郎さん
 (9) 「祖母VS母・お墓バトル」/森下純一さん
 (10) 「一片の桜」/咲ママさん
 （11）「心の掛け橋」/棚橋すみえさん
 （12）「おじいちゃんがくれたもの」/匿名希望さん
 （13）「お墓物語」/寺田聡さん
 （14）「温かい土」/渡辺笑子さん
 （15）「父の死と我が使命」/匿名希望さん
 （16）「孫に引かれて歩む道」/今野芳彦さん
 （17）「墓石は語る」/伊東静雄さん
 （18）「癒しの園」/加納一馬さん
 （19）「家族の縁をつなぐお墓」/ももいちごさん
 （20）「プロポーズはお墓で」/仁平井清次さん

今回は、神奈川県在住の岡部晋一さんの作品、
「お墓が仲人」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。

「お墓が仲人」/岡部晋一さん（71歳・神奈川県）

私の母の墓は神奈川県海老名市にある。

4年前の秋のお彼岸に家族や親類と一緒にお墓参りをした。

その時、一つおいたお墓の前で、
父親らしき人と娘さんがお墓参りに来ていた。

その父娘はお参りが終わるころ、
娘さんが母親らしき人の墓前で泣き出した。

父親は途方に暮れたようだった。

私は現役時代、高校の教員だったので、
若い人が悲しんでいる時、声をかけ励ましたくなってくる。

娘さんに声を掛けたところ、父親が話をしてくれた。

娘さんの母親は子宮ガンで亡くなったとのことだった。

私の母も同じ病気で亡くなったので、
娘さんを励ましながら、私たち家族も苦しんだ話をした。

しかも、お墓も私の母と同じ黒いみかげ石だった。

聞いてみたら、同じ石材店の仕事だということも分かり親しみを感じた。

実は、私たち家族と一緒に甥が墓参りに同行していた。

甥は私の母の外孫だが祖母に可愛がられていたので、
いつも墓参りに参加していた。

その甥がその娘さんに一目惚れしてしまい、
甥の提案で、帰りに両家で海老名駅近くの店で昼食会となった。

翌年のお彼岸も、時間を連絡し、両家は墓前で再開し、
甥と娘さんの交際も本格的になった。

昨年、私は糖尿病で入院し、
もう墓地の急な階段を登ることも出来ず、
墓参を甥にお願いした。

甥と娘さんは仲良く両家の墓の清掃もしてくれたようだ。

二人は近い将来結婚するらしい。

結果的にはお墓が仲人となりそうだ。

そして、私の母と娘さんのお母さんが、
天国から甥と娘さんの未来を見守ってくれると私は信じている。

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なお、部数に限りがありますので業者の方のお申し込みはご遠慮ください。

　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　～つづく～

次回は、サカナさん（50歳・福岡県）の作品、
「桜咲く春の奇跡」をご紹介させていただきます。

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