「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語（2）「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん（48歳）

お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」　

一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。

全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社）日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品）




「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。


その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。


涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。


マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。

前回は、最優秀作品に選ばれた、山梨県在住の19歳の女性、
三浦るるさんの作品「祖父との出会い」をご紹介いたしました。


「お墓物語」作品紹介（1）「祖母との出会い」/三浦るるさん


今回は、神奈川県在住の伊東徳久さん（48歳）の作品、
「お墓参りの不思議」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。

「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん（48歳・神奈川県）　

「ここにしよう、決定だ！」


思わず僕は声に出して言ってしまった。


今まで住んでいた社宅の閉鎖が決まってから家を建てようと思い、
土地を探しに行き、何軒目かで思わず言ってしまったのだ。

なんと、ここからは去年亡くなった、
長男のナオブーのお寺が見えるではないか。

残念ながら僕たちの最初の子どもは先天性の心臓病で、
生まれてすぐに天に召されてしまった。


最初は悲しくてたまらなく月命日には必ずお墓参りに行っていた。


社宅からお墓のあるお寺は結構近かったので毎日行けたのだ。


そのお寺が今日不動産屋さんが連れてきてくれた土地からよく見えるのだ。


妻もびっくりして目をまん丸にしている。


ちょっとというよりだいぶ予算オーバーだったが、
無理してそこを買ってしまった。


それから何年か経ち二人の子どもに恵まれた。


女の子と男の子だ。


それでも月命日には必ず皆でお墓参りに行く。


ある時は飛行機のおもちゃ、ある時はお菓子と、
子どもたちがいろいろと持っていく物を選んだりして、
お墓参りがなんだか楽しいことのようになってきている。

思い出せば、僕が子どもの頃、両親とお墓参りに行くと、
帰りは必ずお寿司を食べに行っていた。

子ども心に「来週はお墓参りだよ」と聞くと、
ウキウキしていた記憶がある。


去年父親が亡くなった。


長男が亡くなった時に一番に駆けつけてくれた父親だ。


その父親の納骨の時に小さな骨壺が見えた。


その横に父の骨壺をそっと置きながら、僕は小さな骨壺に、
「ジイジが来たからたくさん遊んでもらいな」と声を掛け、
今度は父親の骨壺に「ナオブーをよろしくね」と声を掛けてそっとふたをした。


お墓ってなんだか不思議だ。


身内が亡くなってお葬式の後に納骨する時は、
ものすごく悲しくて寂しいのに、そのあとお墓参りに行くと、
生前の楽しかった思い出ばかりが蘇ってきて、
なんだかまだ一緒にいるような楽しい気持ちになってくる。

ジイジは競馬が好きだったから、
今度は馬の置物でも持ってきてあげようかな。

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　　　　　　　　　　　　～つづく～



次回は、水野真由美さん（20歳・神奈川県）の作品をご紹介させていただきます。

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