コラム
「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語(1)「祖母との出会い」/三浦るるさん(19歳・山梨県)
2017年7月3日 公開 / 2017年7月23日更新
都市部への人口集中により、核家族の増大を生み、
人々の家族や郷里に対する意識も大きく変わりました。
そして、戦後70年が経ち、団塊の世代が「死」を考える年齢になり、
先祖や自分たちのお墓に関する問題が浮き彫りになっています。
世の中すべてが合理主義で考えられる昨今においては、
葬儀や仏壇、お墓など葬送に関しても決して例外ではありません。
葬儀はわずらわしいので、荼毘(だび)に付すだけの「直葬」。
マンション住まいなので、仏壇を置く場所がない。
お墓参りは大変なので「墓じまい」。
もちろん、人それぞれ考え方はさまざまです。
ただ、亡きものを祀るという行為は、
地球上のあらゆる生物の中でも人間だけです。
しかし、現代社会においては、数多くの殺人事件や自殺に見られるよう、
人々の命に対する価値や考え方が大きく変わってきたように思います。
家族が亡くなれば葬儀を行い、日々仏壇に手を合わせ、遺骨はお墓に埋葬し、
お盆・お彼岸・命日などの節目には家族そろってお墓参りに行く。
これまでの日本では、ごく普通に行われていた当たり前のことです。
近年における葬送の合理化・簡略化の是非はともかくとして、
人の命に対する尊厳というものが薄れていっているように思えます。
お墓づくりという供養産業に携わる人間の一人として、
今一度、日本人とお墓の関係について考えてみたいと思います。
お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」
一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。
全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社)日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品)
「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。
その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。
涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。
マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。
まず最初は、最優秀作品に選ばれた、山梨県在住の19歳の女性、
三浦るるさんの作品「祖父との出会い」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。
「祖母との出会い」(最優秀作品)/三浦るるさん(19歳・山梨)
私は一度だけ祖父に会ったことがある。
もう二度とはない、忘れられない出会い。
それは、生や死などは関係ないと初めて感じたときだったかもしれない。
私が小学生だったある日、母が週末に大切な用事があると言った。
それは「お墓を掘り起こす」というものだった。
両親は共に幼い頃に父親を亡くしていて、
今回は母方の父親のお墓だということだ。
私にとっては祖父になるわけだが、
「おじいちゃん」というイメージより、
「写真の中の人」という感じでピンとこなかった。
それよりも、お墓を掘り起こしていいのか疑問に思った。
母の話によると、祖父は土葬だったためお墓を新しくするらしい。
土葬は亡くなった人を蒲団に寝かせそのまま埋めてしまうことで、
昔の人はほとんど土葬だということを聞いた。
ということは、私は祖父の遺骨と対面することになる。
想像してみて少し怖くなったのを覚えている。
そして当日、朝早くから親戚や近所の方々が集まった。
小型の重機や手作業によって祖父の姿が現れた。
歴史を感じる風貌になっていたが、そこにはたしかに祖父がいた。
母や祖母をはじめ、涙を流して再開を喜び懐かしむ人が沢山いた。
私はその様子を見て恐怖などは微塵も感じなかった。
それよりも、祖父は愛されているし、
それと同じくらい家族や周りの人を愛したんだと思った。
その後祖父は改めて火葬され新しいお墓に納められた。
そこは高台で正面に湖を望むとてもいい場所だ。
私はなんとなく祖父が喜んでいるように思えて、私自身も嬉しくなった。
少し遠い人だと思っていたが、一気に身近な人になったような気がした。
そして、初めて心から「見守って下さい」と手を合わせた。
昔ながらのお墓のおかげで少し普通とは違うが祖父に会うことができた。
そして、お墓は愛されながらも旅立った人が、
第二の人生を過ごす場所ではないのかと思った。
今も私は定期的にお墓参りに行き、手を合わせている。
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~つづく~
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