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「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語(3)「祖父のお墓で」/水野真由美さん(20歳)

2017年7月23日 公開 / 2017年7月25日更新

テーマ:お墓物語

コラムカテゴリ:冠婚葬祭

コラムキーワード: お墓参りお墓

お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」 

一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。

全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社)日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品)


お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」

「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。


その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。


涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。


マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。

これまでに、以下二つのをご紹介いたしました。

「お墓物語」作品紹介(1)「祖母との出会い」/三浦るるさん
「お墓物語」作品紹介(2)「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん

今回は、神奈川県在住の水野真由美さん(20歳)の作品、
「祖父のお墓で」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。


「祖父のお墓で」/水野真由美さん(20歳・神奈川県) 

祖父の墓に手を合わせた後、私は父に問いかけた。


「ねぇ、おじいちゃんが亡くなったとき、お父さんは悲しかった?」


答えはもちろん分かっていたが、なぜか問わずにはいられなかった。


「ああ、とても悲しかったよ」と父は少し寂しげに答えた。


父の父、つまり私の祖父は生まれつき身体が弱く、50代で亡くなった。


祖父は自分の妻と息子二人、娘一人と暮らしていたのだが、
長男と長女は生まれつき精神的な障害を持っていた。

そのため祖父が亡くなってからは、祖母と次男である父は、
いくつもの大きな苦労を乗り越えて生きてきたと言う。


父、母、祖母と共に墓石をきれいにし、周囲を掃除した。


その後、再び手を合わせた。


私は会ったことのない祖父に心の内で語りかけた。


『おじいちゃん。おじいちゃんは天国に行く前、
どんなに家族のことが心配だったろうね。
特に伯父さんと伯母さんのことが。どんなに気にかけていただろうね』


祖父の無念さを思うととても切ない気持ちになった。


「真由ちゃんが来てくれたよ。嬉しいでしょう」と祖母が呟いた。


墓地を後にし、帰りの途中の茶屋で休憩することになった。


父は私が団子を注文したのを見て、「お父さんも小さかったころ、
お墓参りの後にここで団子を食べたよ。それが嬉しくて、
いつもお墓参りは楽しみだったなあ」と懐かしそうに口を開いた。

「そうそう、あんたは昔から食いしん坊だった」
祖母がうんうんとうなずき、それを聞いて母が「まあ」と笑った。

「確かにおいしい、このお団子」
口を動かしつつ、私は言った。


私も食いしん坊。


父も、そしてもしかしたら、祖父もそうだったのかも。


茶屋から出て、夕暮れの中を歩く。


父、母、祖母の背中を見つつ、私はまた祖父に語りかけた。


おじいちゃん、生きてくれてありがとう。


私のお父さんを育ててくれてありがとう。


おかげで、今私は大切なみんなと一緒に生きていられるよ。


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なお、部数に限りがありますので業者の方のお申し込みはご遠慮ください。


             
            ~つづく~



次回は、漣ほたるさん(28歳・大阪府)の作品をご紹介させていただきます。

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この記事を書いたプロ

能島孝志

お墓のプロ

能島孝志(株式会社第一石材)

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