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影山正伸

労務管理(給与計算含む)と人事・賃金体系整備に精通した社労士

影山正伸(かげやままさのぶ) / 社会保険労務士

影山社会保険労務士事務所

コラム

同一労働同一賃金、格差は不合理と判決が相次いでいます。

2016年10月20日

テーマ:同一労働同一賃金

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 同一労働同一賃金 対策

 先日、運送会社の60歳以降の嘱託社員3名が、属託を理由に賃金を下げられたのは違法だとして、裁判を起こし、これが認められました。この件については、こちらのコラムをご参照下さい。↓
http://mbp-japan.com/chiba/shadow/column/3885/

 これとは別に、物流大手ハマキョウレックスでも、期間の定めのある契約社員が正社員には支給される各種手当が支給されないのは、労働契約法第20条に違反するとして、裁判を起こし高裁で下記内容の判決(2016.7.26)が出ました。
労働契約法第20条では、①職務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情、考慮して労働条件の相違が合理的か不合理かを判断するとされています。今回の裁判は①は同じであるが②は社員が転勤を伴うことがあるのに契約社員にはそれがないので②は差があります。ただし、差があったとしても正社員の人材活用の仕組みと直接関係ない手当については不合理と言わざるを得ず支払わなければならない、とされました。
支払わなければならない手当は下記の通り。
1.無事故手当10,000円 2.作業手当10,000円 3.給食手当3,500円 4.通勤手当
支払わなくても良い手当は、下記の通り。
1.住宅手当5,000円~20,000円→正社員は転居を伴うことがあるから合理性ありとされた
2.皆勤手当10,000円→契約社員も全営業日に出勤すると昇給することがあり得るほか、時給の見直しもされることから代替え措置がされていると判断できるため

 ただし、会社は、これを不服として、最高裁に上告しました。この裁判で特徴的なのは、あくまで個別の手当については、一つ一つが合理的かを見ていることです。ですので、上記で住宅手当は支払わなくても良いとされましたが、規模の小さい会社で転勤などそもそもなければ、やはり支払わなければいけなくなります。それぞれの企業ごとに判断することになります。

 「同一労働同一賃金」について、どのような場合に例外が許されるか、国も指針(ガイドライン)を出す予定です。労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法も改正する予定です。また、今回の裁判の最終的(最高裁)な判決による判例、その他の判例などが出そろってくることで、日本においての「同一労働同一賃金」の定義が見えてくると思います。
 ただし、これらを待っていて、今回の判例が例えば最高裁でも同じ判決になるようですと、60歳以降、同一の労働をして賃金を下げられた従業員から会社は、損害賠償をされかねませんし、契約社員やパートタイマーから、社員には通勤手当、入浴作業手当が出ている、、、過去2年分を損害賠償してくるかもしれません。そうならないためには、60歳以降賃金をどうしても下げなければならないとすれば、例えば60歳以降は、一切残業はしなくてよいとか、楽な作業しかさせないなど、何らかの労働条件の変更をして、それに見合った賃金に引き下げたという合理的な理由を作る必要があるでしょう。また、契約社員やパートさんにも同じことが言えます。また手当にも注意が必要です。

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