非正規にも賞与を支給するよう「働き方改革実現会議」のガイドライン案
運送会社で60歳定年を迎えたドライバー3人が、1年ごとの属託として再雇用されましたが、定年前と同じ仕事をしているにも関わらず、属託の賃金規定が適用され、定年前の年収より2~3割下がりました。これを不服として、3人は会社に対して給与の差額を支払うよう裁判に訴え、東京地裁で「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法に違反する」と認定し、会社にその支払いを命じました。賃金格差に対して同法律の違反を認めた判決は今まで無く、定年後の給与水準について、大きな波紋が広がりそうです。
同一労働同一賃金とは?
「同一労働同一賃金」は、アベノミクスの重要課題として、良く耳にするようになりました。非正規雇用の賃金を引き上げ、格差の是正を図るための政策です。しかし、何を基準に「同一労働同一賃金」かは、それぞれ立場によって違い、それぞれが都合よく解釈してしまっていることが今回の背景にありそうです。
欧米のような「職務給」ではなく「職能給」的な給与である日本では、そもそも具体的な職務があいまいで欧米と比べて「同一労働同一賃金」は定義しにくい事情もあります。「職務給」の欧米でも勤続年数、キャリアコースの違い、学歴、所持資格などの違いで賃金に差がつくことは「同一労働同一賃金」に反しないとされています。また、日本では、欧米にはない年齢や年功が反映されて賃金が構成されています。若いときには、賃金が低く、年齢を重ねていくことで上がっていきます。そうすると、若いときには、本来の働きより低い賃金、年齢が高くなっていくと本来の働きより高い賃金を支払う形になります。定年年齢の60歳時点では、一番高い賃金になっているとも言えます。だから、60歳定年後は、本来の働きに応じた賃金まで下げる、という考えを企業側はする訳です。それに年金の支給開始年齢を60歳から65歳へ段階的に引き上げ、65歳までの継続雇用の義務化を図ったのは国の方で、その人件費を60歳以降同じ金額で負担しなければならないとすれば、企業側にしてみれば、大きな負担です。しかし、それでも裁判では、60歳以降も同一賃金を支払わなければならないとしました。
今後どうなるのか?
会社は、今回の判決を不服として、高裁に控訴しました。ですから、今後の展開でどのように判断されるか、まだ判らないというところです。「同一労働同一賃金」について、どのような場合に例外が許されるか、2018年に国も指針を出す予定です。この指針や、今回の裁判の最終的(高裁、最高裁)な判決による判例、その他の判例などが出そろってくることで、日本においての「同一労働同一賃金」の定義が見えてくると思います。
ただし、これを待っていて、今回の判例が例えば最高裁でも同じ判決になるようですと、60歳以降、同一の労働をして賃金を下げられた従業員から会社は、損害賠償をされかねません。そうならないためには、60歳以降賃金をどうしても下げなければならないとすれば、例えば60歳以降は、一切残業はしなくてよいとか、楽なルートの配達しかさせないなど、何らかの労働条件の変更をして、それに見合った賃金に引き下げたという合理的な理由を作る必要があるでしょう。