海外進出を考える経営者が現地市場を自分の目で見るべき理由|海外視察で事業構想力を磨く

松本尚典

松本尚典

テーマ:海外 視察


1、海外進出を考える経営者は、現地市場を自分の目で見よう


「海外市場を調査する」というと、市場調査会社のレポートを読む、統計資料を確認する、現地企業から情報を得る、といった方法を思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、こうした調査は非常に重要です。

しかし、海外ビジネスに長く携わり、自らも海外で事業を進めてきた経験から、私は、もう一つ非常に重要なことがあると考えています。

それは、

経営者自身が現地へ行き、自分の目で市場を見ること

です。

私自身、仕事で海外や日本国内の地方都市へ出張すると、仕事を終えた後にも時間を確保し、できる限り自分の足で街を歩くようにしています。

特に海外では、あえて一人で行動する時間をつくります。

誰かと一緒に移動していると、会話や予定に意識が向きます。

一方、一人で街を歩いていると、さまざまなものが目に入ります。

どのような人が街を歩いているのか。

どのような店に人が集まっているのか。

商品の価格はいくらなのか。

どのような広告が掲げられているのか。

若い世代は何にお金を使っているのか。

富裕層はどこに住み、どこで食事や買い物をしているのか。

ビジネス街にはどのような企業が集積しているのか。

ショッピングモールでは、どのブランドが支持されているのか。

スーパーマーケットには、どの国の商品が、どの価格帯で並んでいるのか。

現金、クレジットカード、QR決済など、どのような決済手段が使われているのか。

現地の人にとっては、ごく普通の日常です。

しかし、日本から進出しようとする経営者の目で見れば、その一つひとつが市場情報になります。

私は、海外市場を見るとき、単に、

「この街は活気がある」

「この国は成長している」

という印象だけでは見ません。

誰が顧客になるのか。

何にお金を使っているのか。

どの価格帯なら受け入れられるのか。

競合は誰なのか。

まだ満たされていない需要は何なのか。

自社の経営資源を、この市場でどのように活かせるのか。

こうした問いを持ちながら市場を見ます。

私にとって海外で一人で街を歩く時間は、単なる旅行ではありません。

日常業務から少し距離を置きながら、新しい市場の一次情報に触れ、次の事業構想を考える時間です。

海外進出を検討している経営者には、会議室の資料だけを読んで、その国を理解したつもりにならないでいただきたいと思います。

統計を見る。

調査レポートを読む。

専門家の意見を聞く。

そして最後には、自分自身で市場を見る。

この四つを組み合わせることが重要です。

2、独り旅の効用


私は独立する以前から、経営コンサルティングや企業経営に携わる一方、自分自身でも事業を立ち上げ、経営してきました。

独立後は、URVグローバルグループを立ち上げ、国内だけではなく、海外でも事業を展開してきました。

経営者という仕事では、一つのことだけを考えていればよい時間は、ほとんどありません。

売上。

利益。

資金繰り。

人材採用。

組織。

マーケティング。

新規事業。

投資。

海外展開。

複数の問題について、同時に意思決定を求められます。

しかも、その意思決定の結果に対する最終責任を負うのも、経営者です。

だからこそ私は、経営者には、日常業務から物理的に距離を置いて考える時間が必要だと思っています。

私にとって、その方法の一つが独り旅です。

仕事を離れ、予定を入れずに過ごすこともあります。

一方で、初めて訪問する国では、現地に精通した通訳やコーディネーターに依頼して、市場を見たり、人々の生活や商習慣について話を聞いたりします。

後者は、旅行というより、市場調査と事業構想の準備です。

私にとって独り旅には、大きく三つの意味があります。

一つ目は、日常業務から距離を置き、自分自身の思考を整理すること。

二つ目は、新しい市場の一次情報を、自分自身で収集すること。

三つ目は、その情報と自社の経営資源を組み合わせ、次の事業仮説を考えることです。

特に三つ目が重要です。

経営者は、情報を集めるだけでは仕事になりません。

その情報から、

「では、自社は何をするのか」

という経営判断へ進まなければならないからです。

インターネットやAIによって、世界中の情報を日本にいながら取得できる時代になりました。

しかし、情報が増えたからこそ、経営者自身が市場を見て、情報の意味を判断する力は、むしろ重要になっていると私は考えています。

3、海外こそ独り旅へ


海外事業に携わる経営者には、海外でこそ、一人で市場を見る時間を持つことを勧めます。






家族や友人と訪問したことがある国でも、自分一人で街を歩き、自分で店を選び、自分で移動してみると、その国の見え方は変わります。

なぜなら、海外市場を理解するうえで重要なのは、有名な観光地を見ることではなく、そこで生活する人の日常を見ることだからです。

事業家にとって、海外は新しい市場です。

そこには、日本とは異なる、

所得水準。

人口構成。

家族構成。

文化。

宗教。

生活習慣。

商習慣。

価値観。

競争環境。

があります。

その違いの中に、事業機会があります。

日本ではすでに成熟している商品やサービスでも、海外では市場形成の途中にあることがあります。

逆に、日本で成功した商品やサービスを、そのまま海外へ持っていっても、顧客から支持されないことがあります。

したがって、海外進出で重要なのは、

「日本で売れているものを海外へ持っていく」

という発想だけではありません。

「この国では、誰が、何に困っているのか」

「何にお金を払っているのか」

「現在は、どのような商品やサービスで、その課題を解決しているのか」

「そこに、まだ満たされていない需要はないか」

「自社の強みを使って、よりよい解決方法を提供できないか」

という問いを持つことです。

これが、海外マーケティングの出発点です。

現地を歩いていると、このような問いに対する仮説が生まれます。

気になる店舗を見つけたら、翌日もう一度訪問する。

価格を確認する。

競合店を見る。

別の商業施設と比較する。

現地の人に話を聞く。

この自由度は、大人数で時間を固定した視察では確保しにくいものです。

一人だからこそ、

「気になったから、もう一度見に行く」

という行動ができます。

もちろん、安全管理は最優先です。

日本と同じ感覚で夜間に行動したり、治安状況を確認せずに地域へ入ったりするべきではありません。

現地の安全情報を確認し、ホテル、現地パートナー、ガイドなどから情報を得たうえで行動します。

海外市場を見ることと、不要なリスクを取ることは、まったく別です。

海外事業に必要なのは、冒険心ではなく、リスクを管理しながら一次情報を取りに行く行動力です。

4、旅のお供は、現地ガイド


初めて訪問する国や都市では、私は、現地事情に精通した通訳、ガイド、コーディネーターなどの力を借りることがあります。

ここで重要なのは、単なる観光案内を依頼しないことです。

事前に、自分が何を知りたいのかを伝えます。

例えば、

「一般消費者が利用するスーパーマーケットを見たい」

「富裕層が暮らすエリアを見たい」

「ビジネス街を確認したい」

「若い世代が利用する商業施設を見たい」

「現地企業がどのようなオフィスに入居しているか見たい」

「現地で伸びているサービスを確認したい」

といった具合です。

海外市場調査では、「どこへ行くか」以上に、「何を見るか」が重要です。

さらに、ガイドやコーディネーターと行動していると、移動中や食事中に、現地の人の生活について話を聞くことができます。

給与。

住宅。

教育。

就職。

消費。

結婚。

社会制度。

将来に対する意識。

こうした話は、統計資料だけでは把握しにくい市場の背景を理解する材料になります。

ただし、ここで経営者が注意しなければならないことがあります。

現地で出会った一人の人の意見を、その国全体の意見だと思わないことです。

ガイドが、

「この商品は人気があります」

と言ったからといって、それだけで市場性が証明されたわけではありません。

タクシー運転手が、

「最近はみんなこれを使っています」

と言ったからといって、それが市場全体を代表するデータになるわけでもありません。

こうした現地で得た情報は、あくまで事業仮説をつくるための一次情報です。

そこから、

統計データ。

業界資料。

市場調査。

競合調査。

複数の消費者へのヒアリング。

販売実績。

法規制。

などを確認し、仮説を検証していく必要があります。

つまり、現地視察と市場調査は、どちらか一方を選ぶものではありません。

経営者自身の現地観察によって仮説をつくり、客観的なデータによって検証する。

この両方が必要です。

また、私自身の経験では、海外で何度か仕事を依頼する中で信頼できる人材に出会い、その後、企業として継続的に現地調査や事業立ち上げを支援してもらう関係へ発展することもあります。

海外ビジネスでは、

「現地で信頼できる人を持つこと」

自体が、重要な経営資源になります。

5、新しい市場の中で、事業構想力は全開に


現地の基本的な地理、交通、安全性を把握した後は、安全を確認できる範囲で、一人で街を歩く時間をつくります。

すると、私の場合、さまざまな事業仮説が頭の中に浮かんできます。

日常の経営では、

顧客対応。

社員からの相談。

会議。

資金繰り。

メール。

現在進行中の案件。

こうした緊急性の高い仕事に、どうしても多くの時間を使います。

しかし海外へ行くと、その日常から物理的に離れることができます。

そこへ、

新しい街。

新しい商品。

新しい広告。

新しい店舗。

新しいサービス。

新しい消費者。

という刺激が入ってきます。

すると、それまで蓄積していた情報と、新しく目にした情報がつながり始めます。

「このサービスは、自社の既存事業と組み合わせられないか」

「日本では成熟しているが、この国ではまだ伸びるのではないか」

「逆に、この国で普及している仕組みを、日本へ持ち帰れないか」

「この顧客層に対して、自社の商品を違う形で提供できないか」

「この価格なら、どのような原価構造をつくらなければならないか」

こうした仮説が生まれます。

私は、この段階では、すぐに結論を出しません。

思いついた内容を記録します。

そして帰国後に、

市場規模。

競合。

法規制。

収益性。

必要投資額。

人材。

物流。

資金回収。

事業リスク。

などを調査して、実際に事業として成立するかを検討します。

現地視察は、事業計画を完成させる場所ではありません。

事業計画をつくる前の、質の高い仮説を生み出す場所です。


私は、この違いが非常に重要だと思っています。

海外へ行き、

「この国は伸びそうだ」

「この商品は売れそうだ」

と感じただけで投資を決めてはいけません。

現地で得た感覚を、帰国後に数字と客観的な情報で検証し、初めて事業計画へ進みます。

これは、私自身が海外で事業を進める際にも重視している手順です。

6、外からの情報の刺激を受けて、自らの内面から構想は生まれる


新しい事業計画をつくる前には、必ず、事業構想があります。

そして、その構想は、机の前で突然生まれるものではありません。

自分自身がこれまでに積み上げた、

経営経験。

顧客情報。

専門知識。

人脈。

技術。

資金。

ブランド。

といった経営資源と、新しい市場から得た情報が結びついたときに生まれます。

だからこそ、経営者自身が海外市場を見ることに価値があります。

現地の消費者を見る。

商品を見る。

価格を見る。

店舗を見る。

働く人を見る。

住宅を見る。

交通を見る。

広告を見る。

そして、人の話を聞く。

一方で、海外進出を意思決定する段階では、一次情報だけに頼ってはいけません。

統計。

市場規模。

人口。

所得。

競合。

法制度。

税制。

輸出入規制。

雇用制度。

外資規制。

不動産事情。

こうした客観的な情報も確認する必要があります。

私は、海外市場調査では、

一次情報で仮説をつくり、二次情報で検証し、再び現地で確かめる。

この往復が重要だと考えています。

海外視察は、観光旅行ではありません。

しかし、視察先を詰め込んだだけの団体旅行でもありません。

経営者自身が、

「何を知りたいのか」

「何を確かめたいのか」

という問いを持って現地へ入り、自分の目で市場を確認することです。

その意味で、海外進出を検討している経営者が、最初から現地法人を設立する必要はありません。

まず、現地を見る。

市場を理解する。

仮説をつくる。

調査する。

小さく検証する。

その結果を見て、本格進出を判断する。

私は、この順序をお薦めします。

URVグローバルグループの海外視察支援プロジェクトでは、海外進出や海外販路開拓の初期段階において、現地市場の視察、ビジネス専門通訳、展示会での商談、訪問先企業のアポイント設定など、経営者が海外市場の一次情報を取得するための支援を行っています。

「海外進出を考えているが、まず経営者自身で市場を見たい」

「観光ではなく、事業の視点から現地を案内してほしい」

「スーパー、商業施設、競合店舗、ビジネス街などを実際に確認したい」

「現地企業との面談や商談まで組み込んだ視察を行いたい」

「自社の商品やサービスが、その市場で通用する可能性を確かめたい」

この段階にある経営者の方は、まず海外視察から始める方法があります。

URVグローバルグループ 海外視察支援プロジェクト
海外進出前の市場視察、ビジネスリサーチ、専門通訳、展示会商談、現地企業へのアポイント設定などを支援します。
https://urv-group.com/services/travel/overseas-inspection/


そして、現地を確認した結果、

「この市場へ本格的に進出したい」

という判断に至れば、次は具体的な海外事業計画へ進みます。

どの進出方式を選ぶのか。

現地法人を設立するのか。

代理店や販売パートナーを開拓するのか。

現地企業と提携するのか。

M&Aを活用するのか。

どの地域を商圏とするのか。

誰をターゲットとするのか。

何を現地化するのか。

必要投資額はいくらなのか。

撤退基準をどこに設定するのか。

ここから先は、海外旅行ではなく、海外経営です。

URVグローバルグループの海外進出支援事業では、市場調査から海外事業戦略、進出方式、販路・パートナー開拓、現地法人、マーケティング、海外事業の立ち上げまでを、一つの経営プロジェクトとして支援しています。

海外へ行くことが、海外進出ではありません。

その市場で継続的に顧客を獲得し、売上をつくり、利益を残す仕組みを構築して、初めて海外事業になります。

その第一歩として、まず経営者自身が世界の市場を自分の目で見る。

私は、そこから海外進出を始めることをお薦めします。

URVグローバルグループ 海外進出支援事業
海外進出の構想、市場調査、進出方式の検討、販路・パートナー開拓、現地法人設立、マーケティング、進出後の事業展開まで。海外事業を構想段階から総合的に支援します。
https://urv-group.com/services/global-management-consulting/

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松本尚典
専門家

松本尚典(経営コンサルタント)

URVグローバルグループ 

年商3,000万円から4億円程度のオーナー社長を対象に、次の成長ステージへの経営を伴走支援。現役オーナーCEOとして、経営者の意思決定を継続的に支え、年商5億円の壁の突破を目指します。

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