年収のカラクリ ~年商5億円を超えた経営者たちの、自分の年収の決め方の技~
1.企業ドメインとは?
企業には、その活動領域の認識が必要です。
これが、企業のドメインです。
複数の事業を展開する多角的な企業には、事業ごとの事業ドメインが必要です。
この場合のドメインは、インターネット用語のドメインとは全く関係がありません。経営学上の用語です。
ここでは、それと区別するため、企業ドメインや事業ドメインという用語を用いることにします。
有名な企業の企業ドメインとして、例えば、NECは「C&C」を掲げています。これは、コンピューター・アンド・コミュニケーションの意味で、同社は、コンピューターと通信の融合領域を事業領域として認識するということを示しています。
また、シャープの「オプトエレクトロニクス」という企業ドメインは、マイクロエレクトロニクスと光技術の融合した領域に独自の生存領域が存在することを明らかにしています。
2.何故、企業ドメインを策定するのか?
このような企業ドメインや事業ドメインは、何のために策定されているのでしょうか?
活動範囲を規定し、その範囲の中で、環境に適合するため
企業ドメインは、経営者にとって、「志」を決めて示し、組織のメンバーの活動範囲を示す機能を果たします。
企業には、志の高い企業と、志の低い企業があります。志というものは、棒高跳びの「バー」のようなもので、それを乗り越えるためには、この志を日々意識し、それに向かって努力を続けることで、はじめて乗り越えられるものです。
志を持たないヒトや組織は、日常の雑務に追われ、それをこなすだけの仕事を繰り返すことになります。そうなると、目標を見失い、生産性は停滞し、結果的に、売上も利益も伸びなくなります。
経営者や企業が、志を持ち、その志を凝縮した言葉を企業ドメインとして策定し、その策定した言葉を目標に掲げて活動の計画をし、それを実行に移すことで、企業は成長を継続することができます。
日常の雑務におわれ、毎日、その繰り返しになっている企業は、新型コロナ禍のような有事が襲い掛かってきても、環境に適合した対応がとれず、経営者は環境のせいにするだけで、業績を大きく落とすようなことになります。
一方、企業ドメインを意識する企業は、その企業ドメインの中で、企業の目的と活動領域を見直し、環境に適合する形で、活動を再構築することができます。それにより、事業は企業ドメインの範囲で、環境に適合することができ、環境の激変下でも、業績を伸ばすことが可能となります。
新型コロナ禍時代に勝ち組と負け組の差が大きく開きましたが、その差は、企業ドメインの策定が出来ていたか、適切であったか、にあったといっても過言ではありません。
志を企業内に示し、組織の共通目標を設定するため
組織とは、目的を共有する協働体系を言います。
単に、ヒトが集まり、それぞれ勝手な仕事を行うものではなく、目的を共通にしたヒトが、協働する体系が、組織です。このような協働体系になってはじめて、組織は、シナジーを発揮して、単体のヒトのチカラの和から、積の成果を生むことができるようになります。
これは、大きな組織だけでなく、小さなヒトの集まりにもあてはまることです。
その時、組織には、組織理念と、その理念に基づく組織の行動範囲が自覚され、それによって、目標が共有されていることが不可欠となります。
目標が共有されていない状態のヒトの集まりがどんなものか、を想像するのに最適なのは、外食産業で最近多い、「タッチパネル化された、悪い状態の店舗」を思い浮かべていただくのが判りやすいと思います。
最近の外食大手企業は、店舗での人手不足を補い、固定比率を押さえて利益をあげるため、店舗のホールでタッチパネルを導入する店舗が増えています。
お客様の注文をタッチパネルでとること自体、悪いことではありません。しかし、このタッチパネルの導入にあたり、飲食店のホールの仕事の目的が「お客様の接客サービス」であることが共有されていない場合、ホールのスタッフの仕事が「料理を運ぶこと」だけになってしまいます。外食産業のホールが、ウーバーのデリバリーと、まったく変わらなくなってしまいます。このような店舗に行ったお客様は、店舗の空間を利用する以外、デリバリーやお持ち帰り総菜以上に、外食産業への付加価値を見出しません。
単独のギグワーカーが行う単純業務としての運搬に、社員があたる必要がありません。従って、このようなホールの社員は、ロボットと同じ付加価値しか見出されず、次第に雇用を失い、ロボットに置き換えられることになるでしょう。
このような状態で、そこに何人ものヒトのチカラが投入されても、そこには、付加価値がありません。従って、そこに、組織といえる協働体系が存在しえず、付加価値がないため、ヒトがお金を払う価値がなくなります。これが、コロナ禍後も低迷する外食産業大手の実態です。
経営者が、アルバイトを含む全従業員に、ドメインを明示し、企業や仕事の目的を繰り返し発信することを忘れ、利益率の数字だけを追うと、このような結果に陥ります。
組織には、ドメインを示し、共通目的を発信することが、いかに重要かがお分かりいただけると思います。
経営資源の投下範囲と優先順位を決定するため
どんな企業でも、ヒト・モノ・カネという経営資源が限られています。
オーナー資本の中小企業の場合は、ヒトのチカラと、カネの量が非常に制限されております。従って、中小企業の場合は、その限られた資源を、いかに効率的に使って、売上をあげ、利益を生み出すか、ということが重要になります。
そのため、限られたヒトとカネの力を、どこに投入するかの選択が、大企業以上に重要になります。この選択の基準になるのが、企業ドメインです。
企業ドメインが明確でない企業は、ヒトやカネの投資対象があいまいになります。
オーナー資本の中小企業の場合、法人税対策を名目に、収益に繋がらない交際費を多大に使ったり、実質的に家計費である消費に会社のカネを使ったりするような、カネの使い方に陥ります。
このようなことになるのは、企業ドメインがしっかりと意識をされていないためであると言えましょう。
3.日常の多忙な仕事の中で、企業ドメインを、立ち止まって考えてみよう
中小企業の経営者の日常は、大企業の経営者の日常とかなり異なります。現場のマネジメントや、場合によっては、現場担当者の業務までこなす中小企業経営者は、日々多忙な仕事におわれますので、経営戦略や、ましてや、企業理念・ドメインに想いを致す時間が、非常に少ないのも事実でしょう。
現実問題として、僕のクライアントの経営者の皆様も、外部環境の巨視的な視点から機会や脅威を考えたり、将来の自社のベクトルを考えたりする時間は、唯一、僕とのカンファレンスの時間だけ、という方が、ほとんどです。
しかし、現代の経営環境というものは、数百年間も、環境が安定していた江戸時代のような状態にはありません。今から1年間の環境の激変すら、正確な予想ができないのが、現代の経営環境です。従って、一度、立案をした経営計画に、機械的に従いながら、現場の仕事を、もくもくとこなせば、成功できるようなものではありません。
外部環境は日々激変し、市場の動向もそれにあわせて激変します。従って、経営計画を、環境に適合させて、柔軟に変更しつづけることが必要になります。
一方で、企業が目指す経営理念や、企業や事業のドメインは、環境の変化によって、簡単に変更するものではありません。環境に適応しなければならないことと、環境の変化があっても変えないことがある、というのが、成長する企業の条件です。
環境の変化を機敏にとらえて、経営計画を見直す中で、企業ドメインにまで立ちかえって考え、自社の目指す経営目標や経営資源の配分を、冷静に考慮することこそ、中小企業の経営者の多忙な日常の中にもとめられる姿勢だと、僕は思っております。
4.URVグローバルグループの企業ドメイン ~僕は、こう策定している~
僕自身もまた、中小企業を連携させる企業グループのオーナー最高経営責任者として、上記に述べたような企業ドメインまで立ち返って、経営計画を見直し続ける活動を、不断に行って、会社を大きくしてきました。
特に、URVグローバルグループは、10事業の領域に事業を展開しており、企業ドメインと事業ドメインを、連携させつつも、明確に分けて考えることを、僕は、重視してきました。
ここでは、URVグローバルグループの企業ドメインについてご紹介し、皆さんが、自分の会社のドメインを考える参考にしたいと思います。
企業ドメインは、事業の全領域を総括し、かつ、僕が事業を行う意味を企業の内外に明示し、僕自身の経営上の意思決定の基礎に据えるとともに、経営資源の分配(ヒトの配置・資金の投資配分)の基礎に据えることができる指導原理でなければなりません。
時代と外部環境が変化するともに、企業は柔軟に変化し、進化を遂げてゆかねばなりません。しかし、その中にあっても、企業の存続の根拠であり、オーナーである僕が、なんのために、自分の人生をかけて、企業を立ち上げたかという意味は、絶対にぶらしてはなりません。
採用においても、企業ドメインに共感しない人材は、決して採用しない、という確たる意志が必要です。
僕は、20代で自分が仕事をはじめた頃から、自分の企業を創業する指導原理を考え続けてきました。そして、40代の終わりに、自分のそれまでの半生の仕事の人生を顧みたとき、自分の企業グループの経営理念が浮かび上がりした。
それが、URVグローバルグループのタグラインに表記する、以下の言葉です。
夢をみろ! それを「形」にする
これが、URVグローバルグループの企業ドメインです。
クライントに対しても、従業員やパートナーに対しても、URVグローバルグループは、夢を抱くヒト(お客様・社員・スタッフ・パートナー)に対して、その夢を現実のカタチにするための企業である、と発信しています。これが、URVグローバルグループの生み出す価値の内容であり、社会的責任の内容でもあります。
そして、企業ドメインにオーナーである僕が立ち入った過程を、詩の形にして、ホームページや、グループ概要のトップに掲げました。
https://urv-group.com/
すべての事業は、この詩の中に現れる、4つのドメインによって、事業ドメインを確定させています。
企業と事業の創造=経営支援事業・マーケティング支援事業
万国への針路=海外進出支援事業・総合商社事業・海外渡航総合サービス事業
見果てぬ夢を見る者たちへの伝言=人材育成キャリアゲザイン事業・飲食六次化事業
文明創出への参加=情報化支援事業・不動産総合事業
このように全事業を、企業ドメインと連携させ、何故、幅ひろい事業を展開してゆくのか、という意味を、しっかりと腹に落とし、企業の内外に発信することが、事業ドメインの役割です。
以上、参考にしてみてください。
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/