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松本尚典

年商5億円の壁を突破したい社長のための経営コンサルタント

松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

URVグローバルグループ 

コラム

事業家の思考と行動を、行動経済学の観点から考えてみる

2022年10月7日

テーマ:意思決定 PDCA

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 経営戦略事業計画書働き方改革


1.行動経済学とは何か?


大学で経済学(経済原論)を学んだ方は、経済学が、現実の経営の現場に適用てきないことをぼやきます。

何故、経済学は、現実の経営現場に適用ができないのでしょうか?

その理由は、多岐にわたります。

例えば、マクロ経済学の価格理論は、価格が需要と供給の相関関係から策定されると教えます。しかし、これは、完全市場という、現実社会には存在しえない環境のもとでのみ、株価や原油価格などの公開市場を有する商品の価格決定に適用できる、現実にはありえない「モデル」の空論に過ぎません。

現実の市場は不完全ですし、まして、株価や原油などの公開市場で大規模に取引される商品ならともかく、一般に流通する企業が生産する商品においては、需要と供給という関係で、価格が形成されているわけではありません。需要と供給だけのファクターを分析して、自社商品の価格を変動させる「経済学マニア」の経営者がいれば、たちどころに、会社を潰してしまうことでしょう。

そして、もう一つの、経済学が、現実の経営現場に適用できない、大きな理由は、経済学が前提とする「ヒト」が、「経済的合理人である」という仮定で組み立てられているためです。

市場にいる現実の「ヒト」は、消費者であれ、生産者であれ、経済的合理人ではありません。極めて非合理な動きと思考をする現実のヒトなのです。

ちなみに、このような、経済学が前提におく「ヒト」に対して、現実のヒトが、いかに思考し、意思決定し、行動するかを対象に研究を行い、その現実のヒトの動きにあわせて、経済学を修正する学問領域があります。

それが、行動経済学です。

この行動経済学の割り出す現実のヒトと、経済学が前提とする経済的合理人の差を眺めて比べてみると、なかなか、面白い差異が見つけられます。

このコラムでは、そんな観点に立ちながら、事業家といわれるヒトが、経済的合理人や、行動経済学が割り出す現実のヒトと、どのように異なる思考・意思決定・行動を行うのかを、長年、経営コンサルタントとして、多くの成功する事業家を育成してきた僕の観点から、述べてみたいと思うわけです。

このコラムを読んでいただくと、フレームワークとしての事業家思考に、自分の思考や行動があっているのかどうか、読者の方に、検証いただくことも可能となります。

2.「確実性効果」を、まず知ろう


行動経済学の中で扱われる理論の一つに、確実性効果があります。

選択肢A:成功率80%で、40,000円を獲得できる事業
選択肢B:成功率100%で、30,000円を獲得できる事業


ここに2つの事業の選択肢があるとします。

さあ、あなたは、選択肢Aと選択肢Bのどちらを選ぶでしょうか?

経済学が前提とする経済的合理人が常に行う選択は、以下になると考えます。

選択肢A:40,000円×80%=32,000円
選択肢B:30,000円×100%=30,000円

従って、ヒトは、常に選択肢Aを選ぶはずだ


ところが、行動経済学は、この選択の実験を積みます。
その結果、多くの人は、現実には、選択肢Bを選ぶという結果を導きます。

何故かというと、多くの人は、20%の確率で0となるAよりも、常に30,000円が保証されるBを選ぶからです。

では、もう一つ、別の選択肢を考えてみましょう。

選択肢C:成功率20%で40,000円を獲得できる事業
選択肢D:成功率25%で30,000円を獲得できる事業


経済学が前提とする経済的合理人が常に行う選択は、以下になると考えます。

選択肢C:40,000円×20%=8,000円
選択肢D:30,000円×25%=7,500円

従って、ヒトは、常に選択肢Cを選ぶはずだ


一方、行動経済学では、この選択の実験も積みます。
その結果、面白いことに、このケースでは、多くの人は、選択肢Cを選ぶという結果を導いているのです。経済的合理人と行動経済学の結果が同じになります。

しかし、その選択理由は、経済学と行動経済学は、同じではありません。多くの人は、正確な確率計算をして選んだのではなく、20%と25%という低い確率であれば、より大きな成果を生むCを選ぼうと考えているのです。

ここから一つの命題を行動経済学は導きます。

人は確実性が高いケースでは、リスクを回避し、確実性が低いケースでは、リスクをテイクする

これが、行動経済学の確実性効果論です。ヒトは、選択をする意思決定をする場合、経済学が前提とする計算を行い、合理的な行動を行わないと、行動経済学は主張します。

これが、伝統的経済学が、現実に適用できない理由の一つなのです。

3.「事業家行動」とは?


以上の行動経済学における確実性効果を使い、事業家における意思決定・選択・行動が、経済的合理人や一般人と、どこが異なるのかを考えてみたいと思います。

経済学が想定する経済的合理人
選択肢A
選択肢C
を常に選ぶ。
何故なら、ヒトは、常に確率を計算を行い、数学的に合理的な行動をとると仮定されているから


行動経済学が検証した多くのヒトの選択
選択肢B
選択肢C
を多くのヒトが選んだ。
ヒトは、確率計算を行って合理的な行動をとることはない。人は確実性が高いケースでは、リスクを回避し、確実性が低いケースでは、リスクをテイクすると予想される。


一方、僕は、成功する事業家の行動は、以下のようになると考えています。

成功する事業家の意思決定・選択・行動
選択肢Aのみを選び、選択肢B・選択肢C・選択肢Dは、常に選ばない


4.選択肢Cも、選択肢Dも、実態は事業ではなく、ギャンブルだ


まず、成功する事業家は、数学的な経済的合理人、還言すればアタマのいいヒト、の発想で動きません。「アタマのいいヒト」と、成功する事業家は根本的に異なります。

アタマのいいヒトが陥る罠は、選択肢Cと選択肢Dを与えられると、計算をしてしまいます。

しかし、事業家は、常にテイクするリスクと、リターンを、本能的に比較検討して動いています。成功率20%や、成功率25%という「ハイリスク」の事業を選ぶのは、ギャンブラーであって、事業家ではありません。

成功する事業家は、思いついた事業を、即、形にして、たまたま成功したヒトではありません。ギャンブルにあたって、たまたま成功したとすれば、それは、単なるビギナーズラックであって、その次には、すべてを失ってしまいます。このようなタイプが、たまたま、成功したように見えることがありますが、それは、事業家として成功したわけではありません。

ギャンブルがあたっただけです。

成功する事業家は、成功率20%や、成功率25%のレベルのアイデアを、徹底的に煮詰め、磨き上げ、シミュレーションを繰り返し、計画に落とし込むことによって、その成功確率をあげていく計画(P)・試験的行動(D)・検証(C)を繰り返します。実際の行動(A)をとるのは、その成功確率が、80%に達したときにしか動きません。

よって、事業家は、選択肢Cも選択肢Dも採用を見送るのです。

5.選択肢Bは、永久に事業に踏み切れない、多数の大衆の選択


しかし、一方、いかにシミュレーションを繰り返しても、事業である以上、成功確率を100%に高めることができません。

事業には、外部要因の変動や、不確実性がつきものだからです。100%で、固くとりたいと考える人生観を望む人は、そもそも、事業家には永遠になれません。

成功する事業家とは、努力と検証を積み上げて、成功確率を80%にあげ、20%の失敗確率のリスクをテイクしても、最大の利益を追求する意思決定を行い、果敢に行動を行っていくことができるヒトなのです。

ギャンブラーでも、経済的合理人でも、100%の安心感がなければ行動できない大衆でも、事業家はありません。

事業の成功率をあげる試みを繰り返し、そのリスクが事業家としてテイクすることが可能なレベルに至った時にのみ、資金を投資し、リスクをテイクして、果敢に行動し、最大の利益を継続的にあげることを目指すヒト。

これが、成功する事業家なのです。

松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス

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