VUCA時代は、競合戦略が劇的に変わることに備えよう!

松本尚典

松本尚典

テーマ:VUCA 時代


1.VUCA時代は、競合戦略も劇的に変わる時代


世界の経営で、VUCAというキーワードを、今や抜きにしては語れない時代に突入しました。

VUCAとは


VUCAの読み方は、「ブーカ」です。

VUCA(ブーカ)とは、

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

の頭文字をとった用語です。


変動的で不確実な外部環境。
複雑系の原因が絡まった事象の惹起。
曖昧な消費者の動向。


このような時代は、経営戦略や組織戦略、マーケティング手法の、抜本からの見直しを、企業は余儀なくされます。

このような情勢の中で、競合のありかたも、根本的に変わってきています。
そのため、経営者は、競争戦略の重点を、根本から修正しなければなりません。

今回は、競合戦略にターゲットを絞って、2020年代から顕著になってきたVUCA時代への、競合戦略の修正のポイントを発信していきたいと思います。

2.従来の競合戦略とは? ポーターの競争戦略論


まず、従来、競合戦略は、どのようなアプローチで考えられてきたのでしょうか?

これをおさらいしておきましょう。

企業の成長戦略に対して、それとはまったく異なるアプローチ法として、競合戦略の重要性を訴えた書物は、マイケル・ポーターの著した古典的な名著「競争戦略論」です。

この書物は、我々、経営コンサルタントの必読書であると同時に、世界中の経営者のバイブルとして、今尚、読まれています。

さて、この競争戦略論のフレームワークで有名なのが、ファイブフォースです。

ファイブフォース

  1. 売り手(サプライヤー)の交渉力
  2. 買い手(顧客)の交渉力
  3. 新規参入者の脅威
  4. 代替品の脅威
  5. 既存企業同士の競争


ポーターは、従来、5.の業界の既存企業に対してだけ考えられていた競合を、非常に広い視点から把握しなおし、新奇参入者や代替品、更に川上・川下の業者や顧客までも、総合的に競合と捉えました。

そして、それに対する重要なポジションとしてコストリーダーシップの重要性を説きました。

3.VUCA時代に激変するのは、新規参入者と、代替品の脅威だ


さて、このポーターのファイブフォースというフレームワークは、今でも非常に重要な思考上の枠組みだといえます。

問題は、この中で、VUCA時代は、5.の、既存企業同士競争ではなく、


3.新規参入者の脅威
4.代替品の脅威


このふたつが、圧倒的に重視しなければならない時代に突入したのです。

ここから、具体的な事例をみていきながら、VUCA時代における、競合というものの特徴をの変化を考えてみましょう。

4.【事例1】ソニーの自動車事業参入


自動車業界は、まさに競合が、VUCAに突入した典型的な業界です。

その激変のファンダメンタルズは、SDGsの流れにあります。

しかし、自動者産業を取り巻くSDGsの論点は、決して、地球環境問題という純粋な社会的な要請だけで考えることはできないほど、複雑な要因が絡まっています。

自動車産業を取り巻く地球環境問題が劇的に前進をはじめたのは、アメリカ大統領選挙で、ドナルド・トランプ元大統領の退陣という政治的事象が大きかったと言えます。

地球環境問題に積極的なバイデン大統領就任を受け、アメリカとEUが、この問題に共通の議論ができるようになりました。

これを受ける形で、EUは、2021年7月に「ガソリンエンジンを載せた車の販売を2035年から禁止する」との方針を決めました。

この決定は、一見すると、純粋な社会的な視点に立ったもののように感じられますし、日本のメディアも、日本政府も、これに対して、反論をしてはいません。

しかし、この方針を取り巻く情勢は、単純な話ではありません。確実に、アメリカ・EU・中国が、日本の自動車業界を標的にして、行った、「日本潰し」の政治的な策謀なのです。

日本のハイブリッド技術は、世界で最高水準にあり、その環境性能も抜群です。日本車メーカーは、それ故に、長年、欧州の自動車メーカーの宿敵でした。

アメリカ勢では、例えば、ゼネラル・モーターズ(GM)は、2008年のリーマン・ショックをうけて、欧州では事業を縮小しており、グローバルメーカーの看板を下ろしつつあります。

この中で、欧州勢は、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)を中心に、リーマン・ショック後も、日本の自動車メーカーと互角に戦ってきましたが、「ディーゼル・スキャンダル」によって、その信頼を大きく失墜させました。

そこで、欧州は、ディーゼルから、電気自動車(EV)に大きく事業戦略の舵を切ることを考え始めます。

ハイブリッドでは、完全に日本との競争で不利とみて、一足飛びに、EVへのシフトを進めていたのです。政治的な決断で、ハイブリッドを含むガソリン車を、販売すること自体を、禁止する措置にでたのです。

一方、アメリカも、GAFAにIT大手が自動車に参入し、AIによる自立型走行車で、世界の覇権を狙っています。アメリカは、一足飛びに、電気自動車に移行しても、総合的には不利にはなりません。

このような先進国の思惑の中で、打ち出されたのが、ハイブリッド潰しである、欧州の発表でした。

実際、SDGsの観点から、日本車メーカーは、ハイブリッド車の研究開発に力を注ぎ、世界で最も優れた技術を開発してきました。日本のハイブリッドは、環境性能も極めて高い、優れものです。

EUは、これに対し、既に日本にハイブリッドで追いつくことができない状態であるため、ガソリン車の廃除という政治的な決定を行いました。これによって、高い技術力をもった日本車メーカーは、ガソリンを放棄して、このあと、電池で、アメリカや欧州と、完全に横並びで競争をせざるをえなくなってしまいました。

この状況は、日本の従来の自動車メーカーにとって、痛恨の事態となりました。この事態を受けて、自動者産業に名乗りをあげたのが、門外漢の、ソニーでした。

トヨタ、日産、ホンダなど、長年にわたって、エンジンの技術を誇ってきた自動車メーカーからみると、GAFAの参入よりも、ソニーの参入には、驚愕したのではないでしょうか。

ソニーは、自動者をエンターテイメント空間と位置付けました。
そして、エンターテイメント産業として、自動者業界に参入し、競合として名乗りをあげたのです。

技術の粋を誇った自動車産業に、エンターテイメント業界企業が参入するという時代は、今後、主流になる電気自動車に、高い技術というものがいらないことから実現できたことです。

電気自動車は、もう、高い技術の闘いではありません。消費者を喜ばせる、エンターテイメント空間でも競争できる業界となったのです。

ここでいうソニーは、脅威という言葉を超えた驚愕というレベルの言葉で、自動者業界からみられている新規参入者であるといえましょう。

5.【事例2】ワークマン女子の拡大


アパレル業界にもまた、激震の競合参入がありました。

ワークマンという会社は、おそらく、アパレル業界で、女性ものに参入することが最も適しない企業だと、従来、思われてきたのではないでしょうか?

  • 吉幾三さんのCM、
  • 店舗の立地や客層、
  • 店舗の内装。


従来のワークマンは、ここに女性が顧客として来店したならば、本来の客層を破壊してしまうことも予想された企業です。

この企業が、機能性に優れた商品力という武器を掲げ、多くのインフルエンンサーとの協力関係を創り上げ、ワークン女子を開業し、快進撃を演じています。

そして、従来の客層の「俺たちのワークマン問題」を乗り越えるため、ワークマンプロという、深堀戦略も進めながら、大きなイノベーション転換を成功させつつあります。

このワークマンの大変身もまた、女性もののアパレル業界にとって、驚愕だったのではないでしょうか?

優れたデザイン性を競い合うはずの女性もののアパレル業界が、機能性を売りにして、ここまで、女性のマーケットを強く侵略できるとは、アパレル業界の、誰も予想できなかったのではないでしょうか?

ZOZOの参入が主戦場であると思っていた女性ものアパレル業界の、最も恐れるべき新規参入者は、なんと、ワークマンだったわけです。

6.タブーなき、生き残り戦略を進める企業が生み出す、驚愕の競


以上のような競合の参入は、企業が、その展開してきた本業を通じて獲得した、強みや技術を徹底的に深堀し、それを活かせる業界や分野に、業界の垣根を超えて進出をはじめた、いわば、イノベーションの結果といえます。

VUCA時代には、企業は、単一の本業にだけ集中をし続けることがリスクとなり、エリアを限定したマーケティングもリスクとなります。

外部環境や将来の変化が予測できにくくなっているからこそ、どのような激変が襲い掛かって来たとしても、それに対応するためには、商品・サービスのポートフォーリオを展開し、多様なマーケットや消費者に幅広く売れる事業展開が必要となります。


安定した20世紀後半には、展開エリアを限定して活動する、ランチェスター戦略などのエリアマーケティングや、本業集中などの戦略が、コストパフォーマンスに優れた戦略として最適でした。

しかし、VUCA時代の象徴的な出来事であった新型コロナ禍における外食産業を考えても、このようなエリアマーケティングや本業集中戦略が、リスクの高い戦略であることは、既に明白です。

特定エリアにだけ展開した外食産業が、新型コロナ禍で売り上げが壊滅する中、デリバリーや中食にスピーディに展開をした企業が大きく売り上げを伸ばしました。

一方、政府やマスメディアの発信する新型コロナ禍に対する自粛を真に受けて、ただ、災難が通りすぎるのを待った企業が、アフターコロナでは、支援金だけで生き延びるゾンビ企業と化しました。

このような情勢をみればわかる通り、強い企業は、劇的な環境変化や未来予測の変化に対応して、「聖域なき進出」を行う時代になったのです。

そして、仮に、強みや技術がなくても、資金のある企業であれば、M&Aによって、強みや技術がある企業を、瞬時に買収し、大きな資金を投資して、強い競合として現れることも、今後はありえます。

これを、進出を受ける側から考えれば、まさに、想定不可能な相手が、突如、競合として、現れてくる時代になった、ということを意味するのです。

このような情勢を踏まえ、企業は、今後、競合参入に備える時代になったといえるでしょう。

続く

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