自画撮りを求めた|要求だけでも処罰される条例と法律

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

「自画撮りを求めた」という言い方は、ご相談の場面ではよく出てきます。ところが、法令の条文にこの言葉は出てきません。条文に書かれているのは、映像を「送信することを要求」した、児童ポルノ等の「提供を行うように求め」た、という動詞です。

 この違いは、言い回しだけの問題ではありません。画像が現に届いたかどうかではなく、求めたという行為そのものを取り出して処罰の対象にしている条文が、複数あるためです。しかも、相手の年齢によって動く条文が入れ替わります。

 この記事では、要求の段階を捉える条文がどのように組み立てられているのかを、相手の年齢帯ごとに整理します。示談の進め方や量刑の見通しには踏み込まず、条文の構造に絞って説明します。

「自画撮り」は法令の用語ではない


 「自画撮り」は、行政の啓発資料や報道で広く使われている言葉ですが、法令上の定義があるわけではありません。警察庁や文部科学省の資料では、だまされたり脅されたりした児童が自分の裸体等を撮影させられ、SNS等で送信させられる被害を指す言葉として使われています。

 条文の側は、別の書き方をしています。刑法は「その映像を送信することを要求した者」と書き、多くの都道府県の条例は「提供を行うように求めること」と書いています。いずれも、画像が現に手元に届いたかどうかを問わない書き方になっています

なぜ求めた段階を捉える条文が置かれているのか


 背景には、児童買春・児童ポルノ禁止法の条文構造があります。同法7条4項は、児童に一定の姿態をとらせ、これを写真や電磁的記録に係る記録媒体等に描写することにより児童ポルノを製造した者を処罰する規定です。自ら撮影させて送信させた場合も、この規定で捉えられると扱われてきました。

 もっとも、同項には未遂を処罰する規定が置かれていません。国立国会図書館の調査資料でも、画像等が送信されなければ処罰対象とはならない、と整理されています。求めただけで相手が応じなかった場合、この規定では届かないことになります。

 この空白を埋めるために置かれたのが、条例の要求禁止規定です。東京都が平成30年2月に全国で先んじて施行し、その後、多くの道府県に広がりました。令和5年7月には、刑法にも映像の送信要求を対象とする規定が新設されています。

相手が16歳未満の場合|刑法182条3項


 刑法182条3項は、16歳未満の者に対し、一定の姿態をとってその映像を送信することを要求した者を、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金としています。相手が13歳以上16歳未満のときは、要求した側がその者が生まれた日より5年以上前に生まれていることが要件になります。

 条文が挙げているのは、次のような姿態です。
・性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態
・膣又は肛門に身体の一部や物を挿入し、又は挿入される姿態
・性的な部位を触り、又は触られる姿態
・性的な部位を露出した姿態その他の姿態

 ここでいう性的な部位とは、性器、肛門、これらの周辺部、臀部、胸部を指します。挿入姿態以外の類型については、その行為をさせることがわいせつなものに限られます。

182条3項には要求の仕方の限定が置かれていない


 同じ182条でも、1項は書き方が違います。1項はわいせつの目的で16歳未満の者に面会を要求する行為を対象としていますが、威迫し、偽計を用い、又は誘惑した場合、拒まれたにもかかわらず反復して求めた場合、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした場合、という三つの手段に絞って規定されています。

 これに対して、3項にはこうした手段の限定が置かれていません。わいせつの目的も、3項では要件とされていません。脅したかどうか、対価を示したかどうかにかかわらず、要求したという事実が条文の要件を満たし得る書き方になっています。

法令対象となる相手要求の態様法定刑
刑法182条3項16歳未満(13歳以上は5歳差の要件あり)性的な姿態をとってその映像を送信するよう要求1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
青少年健全育成条例(東京都は18条の7・26条7号)18歳未満拒まれた後の要求、威迫・欺き・困惑・対償による要求30万円以下の罰金
刑法222条(脅迫)年齢を問わない害悪を告知して求める2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
刑法223条(強要・未遂も処罰)年齢を問わない暴行又は脅迫を用いて求める3年以下の拘禁刑


相手が18歳未満の場合|条例の要求禁止規定


 相手が16歳以上18歳未満であれば、刑法182条3項の年齢の要件は満たされません。ここを受け持っているのが、各都道府県の青少年健全育成条例です。

 東京都の条例では、18条の7が、何人も青少年に対して次の行為を行ってはならないと定めています。
・青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること
・青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること

 違反した場合の罰則は、26条7号により30万円以下の罰金です。ここでいう青少年は18歳未満の者を指します。したがって、16歳未満であれば刑法と条例の双方が視野に入り、16歳以上18歳未満であれば条例が前に出てくるという関係になります。

条例は都道府県ごとに書き方が違う


 気をつけたいのは、要求禁止規定の書き方が全国一律ではないという点です。国立国会図書館の調査資料は、規定の型を大きく二通りに整理しています。

条例の書き方禁止される行為の範囲罰則が科される行為の範囲
一律禁止型方法を問わず、青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為すべて拒まれた後の要求、威迫等による要求に限定
限定型(東京都はこちら)拒まれた後の要求、威迫等による要求に限定禁止される行為と同じ範囲


 東京都は限定型で、禁止される行為そのものが二つの類型に絞られています。一律禁止型を採る県では、方法を問わず要求行為が禁止されたうえで、罰則が科されるのは悪質な類型に限られる、という二段構えになっています。

 東京都が一律禁止としなかった理由については、働きかけの手口が複雑になっている一方で、通信の秘密など正当な活動を不必要に制限しないよう配慮した、という説明がされています。

 罰則の内容にも幅があります。30万円以下の罰金としている例が多い一方、罰金又は科料としている県、20万円以下の罰金としている県、常習の場合により重い刑を定めている道もあります。どの条例が問題になるかは、相手方の所在地とも関わってきますので、自分の居住地の条例だけを見て判断できるとは限りません。

相手が18歳以上の場合|脅迫と強要


 相手が18歳以上であれば、児童ポルノ禁止法も青少年健全育成条例も適用されません。ただし、要求の仕方によっては別の条文が問題になります。

 害悪を告知して求めた場合は脅迫罪、暴行又は脅迫を用いて義務のないことを行わせた場合は強要罪です。強要罪には未遂を処罰する規定が置かれていますので、画像が送られてこなかった場合でも、要求の仕方によっては強要未遂として扱われる余地があります

 また、要求の態様が相手の性的自由を直接侵害するといえる場合に、不同意わいせつ罪の成否が問題となった裁判例もあります。この点は事案ごとの評価になります。

画像が実際に送られてきた場合


 要求に応じて画像が送られてきた場合は、要求の段階を捉える条文とは別に、児童買春・児童ポルノ禁止法の規定が問題になります。

法令・条項問題になる行為法定刑
児童ポルノ禁止法7条4項児童に姿態をとらせ、これを描写して製造した場合3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
同7条1項自己の性的好奇心を満たす目的での所持・保管1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
同7条6項不特定若しくは多数の者への提供、公然陳列5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はこれらの併科


 7条4項の「姿態をとらせ」については、行為者の言動等により児童がその姿態をとるに至ったものであればよく、強制によることを要しないと説明されています。強く迫ったかどうかとは、別の基準で判断されるということです。

 保存していない、すぐ削除した、という説明が問題を解消するとは限りません。所持や保管の成否とは別に、送信を受けた時点での製造の成否が検討されるためです。削除の経過そのものが、捜査で確認の対象になることもあります。

撮影を扱う法律との関係


 令和5年7月に施行された性的姿態等撮影処罰法にも、16歳未満の者を対象としてその性的姿態等を撮影する行為を処罰する規定があります(2条1項4号)。13歳以上16歳未満の場合は、5歳差の要件が付きます。もっとも、シャッターを押したのは相手方本人ですので、この規定をどのように当てはめるかは事案ごとの検討になります。

 同法で押さえておきたいのは、2条2項が撮影の未遂を処罰の対象としている点です。児童ポルノ禁止法7条4項に未遂処罰規定がないこととは、対照的な作りになっています。行為の手前の段階をどこまで捉えるかは、法令ごとに設計が違うということです。

 なお、同法5条の影像送信に関する規定は、柱書で「不特定又は多数の者に対し」送信することを要件としています。一対一のやり取りで送らせた場面とは、想定している状況が異なります。ただし、これは要求や受信が問題にならないという意味ではありません。上に挙げた別の条文が、それぞれ別の要件で動きます。

「相手も求めてきた」という説明


 やり取りの中で相手からも画像を求められていた、という説明が出てくることがあります。ここで知っておきたいのは、条例の作りです。

 東京都の条例は、条例に違反した者が青少年であるときは、その違反行為について罰則を適用しないと定めています。青少年が求めた場合も条例違反ではあるものの、罰則は適用されないという整理です。お互いに求め合っていたのだから対等だった、という説明を前提にしても、条例はそういう構造にはなっていません

年齢を知らなかったという説明


 相手の年齢を知らなかった、という説明もよく出てきます。この点の扱いは、条例によって分かれています。

 条例の中には、青少年であることを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできない、と明記しているものがあります。一方、インターネット上のやり取りだけで年齢の認識を求めるのは難しいとして、この種の規定を置いていない県もあります。東京都の条例では、年齢の不知について定めた28条の列挙に、18条の7も26条7号も含まれていません。

 もっとも、これは知らなかったと述べれば足りるという意味ではありません。年齢についてどう認識していたかは、やり取りの記録そのものから判断されます。学年、部活動、制服、下校時間といった話題が残っていれば、それが判断材料になります。刑法182条3項についても、年齢の認識は故意の内容として検討されます。

やり取りの記録はどこから出てくるのか


 要求のやり取りは、こちらの端末が調べられなくても表に出てくることがあります。相手方の端末に残っている画面、保護者や学校からの相談、相手方が保存していた画面の写しなどが端緒になります。

 この段階で相手方に直接連絡を取り、説明したり取り下げを求めたりすることは、お勧めできません。働きかけとして評価されると、身柄の扱いの判断にも影響し得ます。記録を消す行為についても同様です。

連絡が来た段階で整理しておきたいこと


 警察から連絡が来た、相手方や保護者から連絡が来たという段階では、次の点を落ち着いて整理しておくと、その後の見通しを立てやすくなります。
・相手の年齢について、どの時点で何を聞いていたか
・やり取りがいつ始まり、どのサービスで行われていたか
・求めた内容が、条文の挙げる姿態に当たるものだったか
・画像が実際に送られてきたか、送られてきていないか
・受け取った画像を保存したか、その後どう扱ったか
・相手方の所在地がどこだったか

弁護士に確認できること


 この分野は、条文が複数の法令にまたがっており、相手の年齢と要求の態様によって組み合わせが変わります。次のような点は、早い段階で確認しておく意味があります。
・どの法令のどの条文が問題になっている事案なのか
・要求の段階だけの話なのか、送信後の話も含まれるのか
・相手方の所在地の条例が、どちらの型の規定を置いているか
・取調べで何を聞かれる見込みか
・在宅で進むのか、身柄の扱いが問題になる場面なのか

まとめ


・「自画撮り」は法令用語ではなく、条文は「要求する」「求める」という行為そのものを捉えている
・刑法182条3項は16歳未満が対象で、要求の仕方に限定が置かれていない
・16歳以上18歳未満の部分は、各都道府県の青少年健全育成条例が受け持っている
・条例には一律禁止型と限定型があり、東京都は限定型
・相手が18歳以上でも、要求の仕方によっては脅迫罪や強要罪が問題になる
・画像が送られてきた後は、児童買春・児童ポルノ禁止法の規定に移る
・年齢を知らなかったという説明は、やり取りの記録から判断される

 要求の段階を捉える条文は、法令ごとに別々の考え方で作られています。自分の事案がどの条文の射程に入っているのかは、やり取りの内容と相手の年齢を並べてみないと見えてきません。連絡が来た段階では、記録を消したり相手方に接触したりする前に、弁護士にご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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