万引きに同行しただけ|見張り・待機は共犯になるのか

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

友人や家族が店で商品を持ち出す場面に居合わせた、外で待っていた、あるいは店内で別の棚を見ていた。あとになって「一緒にいた人も警察から連絡が来ている」と聞き、自分にも何か問われるのだろうかと不安になる。そうしたご相談は少なくありません。

 万引きは窃盗罪にあたりますが、対象になるのは商品を手に取った人だけとは限りません。刑法は、複数の人が関わった場合について、共同正犯・教唆・幇助という形を用意しています。一方で、その場に居合わせたというだけで当然に罪に問われるわけでもありません。

 この記事では、同行・見張り・待機という関わり方が刑事手続の中でどこに置かれるのか、そして何を手がかりに判断されているのかを整理します。

「一緒にいた」は四つのどれかに分かれる

 複数人が関わった万引きで、実行していない人の立場は、大きく四つのいずれかに整理されます。

立場どのような関わり方か刑の扱い
共同正犯(刑法60条)実行した人と意思を通じ、役割を分担した実行した人と同じ枠で判断される
教唆(刑法61条1項)やる気のなかった人をそそのかして決意させた正犯の刑を科される
幇助・従犯(刑法62条1項)実行行為以外の方法で犯行をやりやすくした正犯の刑を減軽する(刑法63条)
いずれにも当たらない意思を通じておらず、犯行を容易にしてもいない刑事責任を問われない


 窃盗罪の法定刑は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。共同正犯とされれば、商品に触れていなくても、この枠の中で処分が検討されることになります。

役割の名前で決まるわけではない

 インターネット上の解説では、見張り役は幇助にあたると書かれていることがあります。ただ、この整理は判例の筋とは少しずれています。

 昭和23年の最高裁判決は、窃盗について「窃盗の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盗の共同正犯と断ずべきものである」と述べています。この事件では、被告人側が「自分は直接持ち出しておらず見張っただけだから幇助にとどまる」と主張しましたが、意思の連絡が認められる以上は共同正犯として扱えるとして退けられました。

 見張りという役割の名前が結論を決めるのではなく、実行した人との間に意思の連絡があったと見えるかどうかが分かれ目になります。反対に、意思の連絡が認められなければ、たまたま入口付近に立っていたという事実だけで共同正犯とされるわけでもありません。

何を手がかりに判断されるのか

 意思の連絡は、当事者の頭の中にあるものですから、外側の事情から読み取られます。万引きの事案では、次のような点が材料になりやすいところです。

・店に向かう前にどのような会話をしていたか
・店や時間帯、入る場所を誰が決めたか
・店内でどこに立ち、どちらを向いていたか
・目配せや声かけ、店員が近づいたときの動きがあったか
・持ち出した商品や利益をどう分けたか
・店を出たあと、どこへ移動し何を話したか

 これらは、店内の防犯カメラの映像や、実行した人の説明、当日のメッセージのやり取りと突き合わせる形で確認されていきます。自分がどう思っていたかという内心の説明よりも、その日の行動が外からどう見えるかが先に検討されるという点は、押さえておいたほうがよいところです。

「居合わせただけ」と評価される側の事情

 一方で、買い物の目的が別にあったこと、自分の会計を済ませていること、相手の行動に気づいてから距離を取ったこと、その日の待ち合わせが別の用件だったことなどは、意思の連絡を否定する方向に働く事情です。こうした事情は、時間が経つほど裏づけが取りにくくなります。防犯カメラの映像も、一定期間で上書きされることが一般的です。

外で待っていた・車の中にいた場合

 現場にいなかったから関係ない、とは限りません。判例は、犯行を共謀した人は自ら実行行為を分担しなくても正犯としての責任を負うという考え方(共謀共同正犯)を認めています。外で待つこと自体が、事前の話し合いの中で役割として組み込まれていれば、共同正犯と評価されうるということです。

 もっとも、待っていたという事実だけで結論が出るわけではありません。何のために待っていたのか、待つように頼まれた経緯があるのか、そこで何を聞いていたのかが問われます。買い物が終わるのを待っていただけの人と、見つかったときにすぐ動けるように待っていた人とでは、同じ「外にいた」でも意味が違ってきます。

 なお、そもそも相手が万引きをするとは思っていなかったという場合は、意思の連絡以前に、犯罪を行う意思があったかどうかという別の問題になります。この点は、当日までに何を聞いていたかによって判断が分かれます。

止めなかったことは共犯になるのか

 目の前で商品をかばんに入れるのを見ていたが、何も言わなかった。この場合、止めなかったという不作為だけを理由に共同正犯や幇助が認められるという整理は一般的ではありません。

 ただし、黙って見ていたことが、それ以前のやり取りとあわせて「了解していた」と評価されることはあります。また、「早くしろ」「大丈夫だ」といった言葉をかけていた場合には、実行する人の決意を強めた行為として、精神的な後押しにあたるかどうかが検討されます。声をかけた記憶があるなら、その前後の状況まで含めて説明できるようにしておくことが大切です。

あとから知った場合

 店を出てから初めて事情を知ったという場合、その万引き自体の共犯にはあたらないのが原則です。窃盗は、商品を自分の支配下に移した時点で既に成立していると評価されるため、その後に関わっても犯行を共にしたことにはならないからです。

分け前を受け取る・持ち帰りを手伝う

 ただし、そこで別の罪が問題になります。盗品と知りながらただで譲り受けた場合は3年以下の拘禁刑(刑法256条1項)、運んだり預かったり、代金を払って譲り受けたりした場合は10年以下の拘禁刑および50万円以下の罰金(同条2項)が定められています。2項は窃盗罪より重い法定刑です。事情を知った時点で受け取りや保管をやめ、返却や連絡の相談をすることが、後の判断に影響します。

断ったつもりが伝わっていない

 誘われたが断った、途中で嫌になって先に店を出た、というご相談もあります。ここで難しいのは、いったん話に加わった後は、連絡を絶っただけでは関係が解消されたと認められにくい点です。

 一般的な整理としては、実行に着手する前であれば離脱の意思を相手に伝え、それまでに与えた影響を取り除くことが求められ、着手した後はさらに犯行を止める働きかけまで求められるとされています。断ったやり取りが残っているかどうかが、後から効いてきます。

共犯者の話で組み立てられる部分

 共犯が疑われる事件では、実行した人がどう説明したかが大きな意味を持ちます。昭和33年の最高裁大法廷判決は、共犯者の供述について、被告人本人の自白とは同じに扱われず、それ自体で独立した証明力を持つという考え方を示しました。

 つまり、実行した人が「この人も知っていた」と話した場合、その供述が判断の材料になりうるということです。もっとも、供述の信用性は争える対象です。話の変遷、当日の動線と合わない部分、その人が自分の責任を軽くする動機があるかどうかは、いずれも検討されるべき点になります。

 同じことは逆の方向にも当てはまります。事情を知らずに同行しただけであれば、そのことを実行した人が説明してくれるかどうかで見え方が変わります。ただ、共犯が疑われている段階で当事者どうしが連絡を取り合うことは、口裏合わせと受け取られる可能性があります。伝えたいことがある場合は、その伝え方を含めて相談したほうが安全です。

手元に残しておくもの

 説明を求められる場面に備えて、次のようなものを残しておくと役に立ちます。

・当日のやり取りが残ったメッセージ(読み返さずに消してしまわない)
・交通系ICカードの履歴や地図アプリの記録など、移動が分かるもの
・自分の買い物のレシートや決済履歴
・その日一緒にいた同行者以外の人の存在
・思い出せる範囲で書き出した時系列のメモ

 いずれも時間の経過で失われやすいものです。記憶が曖昧な部分は、無理に埋めずに曖昧なまま書き留めておくほうが後で役に立ちます。

処分の見通しはどこで変わるか

 共同正犯とされるか幇助にとどまるかは、処分の重さに直結します。幇助であれば刑が減軽されますし、関与の程度は起訴するかどうかの判断にも影響します。

 また、被害弁償や示談が検討される点は、実行した人と同じです。複数人が関わった事案では、誰がどの範囲で負担するのかという整理も必要になります。実行した人が先に示談を済ませていて、同行した側だけが後回しになっているという状況も起こりえます。

 手続の進み方も一律ではありません。実行した人がその場で捕まっている一方で、同行した人には後日になって連絡が来る、という順番になることがあります。身柄を拘束されずに在宅で調べが進む場合もあります。未成年の場合は、成人の手続とは異なり、原則として家庭裁判所に送られたうえで処分が検討されます。

誤解されやすい点

 相談の場でよく出てくる思い込みを挙げます。

・商品に触っていないから関係ない
・お金や品物を受け取っていないから関係ない
・店の外にいたから現場にいたことにならない
・未成年だから手続には乗らない
・実行した本人が「自分ひとりでやった」と言っているから大丈夫

 いずれも、結論を決める事情ではありません。判断されているのは、実行した人との間に意思の連絡があったと見えるかどうかであり、その材料は当日の行動や前後のやり取りの中にあります。

まとめ

・同行した人の立場は、共同正犯・教唆・幇助・いずれにも当たらない、のいずれかに整理される
・見張りや待機という役割の名前で結論が決まるのではなく、意思の連絡があったと見えるかどうかが分かれ目になる
・判断の材料は、店に行く前の会話、店内での動き、分け方、退店後の行動といった外側の事情である
・あとから知って分け前を受け取ったり運んだりした場合は、盗品に関する罪という別の問題が生じる
・断ったやり取りや自分の買い物の記録は、時間が経つほど失われやすい

 自分は同行しただけだと考えていても、警察や検察は共犯者の説明を含めた全体像から判断します。心当たりのある方は、警察から連絡が来る前の段階であっても、自分の関わり方をどう説明するかを早い段階で整理しておくことをお勧めします。当事務所では、刑事事件のご相談を受け付けています。ご本人からのご相談はもちろん、ご家族からのご相談にも対応しています。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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