発達障害・知的障害がある場合|量刑と社会復帰の設計
本記事は、2026年9月11日時点で公表されている法令と、こども家庭庁の「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(2026年9月2日改訂)および「こども性暴力防止法に関するQ&A」(2026年4月)をもとに作成しています。施行前の制度のため、運用の細部は今後変わることがあります。
学校の先生や保育士、塾の講師など、子どもと接する仕事をしている方から、「以前の風俗トラブルが、日本版DBSで勤め先に伝わるのではないか」「いま店ともめている件が、仕事に影響するのではないか」というご相談をいただくことがあります。
日本版DBSは、2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法」に基づき、子どもと接する一部の仕事について、性犯罪の前科の有無を国を通じて確認する仕組みです。風俗トラブルとの接点が生まれるのは、トラブルが刑事事件になり、その罪が法律の定める「特定性犯罪」に当たり、有罪が確定した場合に限られます。店との金銭のやり取りで終わるトラブルの多くは、この仕組みには現れません。一方で、隠し撮りや無断の身体接触、相手が18歳未満だった場合などは特定性犯罪に当たり得るもので、有罪が確定すれば、罰金や執行猶予でも10年間は確認の対象になります。本記事では、制度の骨格を確認したうえで、風俗トラブルのどこに線が引かれているのかを整理します。
日本版DBSで何が変わるのか
これまで、勤め先が従業員の前科を公的に確かめる手段は、基本的にありませんでした。市区町村の犯罪人名簿は一般からの照会に応じない扱いで、最高裁判所昭和56年4月14日判決も、前科にはみだりに公開されない利益があるとしています。採用の場面で前科が知られる経路は、本人の申告や履歴書の賞罰欄にほぼ限られていました。
施行後は、対象となる仕事に限り、事業者がこども家庭庁に申請し、法務大臣が特定性犯罪で有罪が確定した事件の記録と本人の情報を照らし合わせる「犯罪事実確認」が行われます。主な変化は次のとおりです。
| 観点 | これまで | 施行後 |
|---|---|---|
| 勤め先が前科を知る経路 | 本人の申告や履歴書の賞罰欄 | 対象の仕事では、国を通じた照合が加わる |
| 確認される期間 | 刑の消滅(拘禁刑は10年、罰金は5年)の後は、一般に賞罰欄に書く必要がないとされる | 特定性犯罪は、実刑で20年、執行猶予と罰金で10年が確認の対象 |
| すでに働いている人 | 在職中に前科を確認される仕組みはない | 義務対象の職場では施行から3年以内に確認を受け、その後も5年ごとに再確認 |
| 一般の会社員 | 前科を照会する仕組みはない | 変わらない(対象は子どもと接する一部の仕事) |
確認の対象となる期間は刑法34条の2の「刑の消滅」より長く、刑が消滅した前科でも期間内であれば対象になります(こども性暴力防止法2条8項)。
性犯罪歴の確認が始まる職種
確認が行われるのは、勤め先が法律上の義務を負う施設である場合か、国(こども家庭庁)の認定を受けた事業者である場合です。
| 区分 | 主な職場 | 主な職種 |
|---|---|---|
| 義務の対象 | 幼稚園・小中学校・高校など、認定こども園、認可保育所、児童養護施設、児童館など | 教員、保育士、児童指導員など |
| 認定を受けた場合に対象 | 学習塾、スポーツクラブ、音楽やダンスなどの教室、放課後児童クラブ、認可外保育施設など | 講師、コーチ、指導員など |
同じ職場でも、子どもに対して優越的な立場に立ち(支配性)、日常的に接し(継続性)、ほかの大人の目が届かない状況が生じ得る(閉鎖性)仕事でなければ、確認の対象にはなりません。大学やオンラインだけの教室なども制度の外にあります。職場や職種ごとの詳しい線引きは、【日本版DBS】子どもに関わる仕事の性犯罪歴確認が始まる|対象になる人・ならない人で説明しています。
確認されるのは「特定性犯罪」の前科だけ
照合の対象は、法律が「特定性犯罪」として列挙した罪について、拘禁刑または罰金の裁判が確定した記録です(同法2条7項・34条)。不同意わいせつ罪、不同意性交等罪、監護者わいせつ罪などの刑法の罪のほか、児童買春・児童ポルノに関する罪、性的姿態等撮影罪(いわゆる撮影罪)、都道府県の迷惑防止条例(痴漢・盗撮など)や青少年健全育成条例(淫行など)の罪が含まれます。被害者が大人の事件も含まれます。
反対に、公然わいせつ罪、売春防止法違反、住居侵入罪、恐喝罪などは列挙されていません。不起訴で終わった事件や、逮捕・取調べを受けただけの前歴も対象外です。不起訴の場合の扱いは、不起訴ならDBSに記録されないのか|こども性暴力防止法で詳しく扱っています。
また、事業者に交付される犯罪事実確認書に記載されるのは、該当するかどうかと、該当する場合の区分(実刑・執行猶予・罰金)および裁判の確定日です(同法35条4項)。罪名や事件の中身は記載されません。該当する場合は、確認書が事業者に渡る前に本人へ通知が届き、2週間以内であれば訂正を求めることなどができます(同法35条5項・37条)。
風俗トラブルがDBSに届くまでの三つの関門
風俗トラブルが日本版DBSに関係してくるのは、次の三つの関門をすべて通った場合です。
- トラブルが刑事事件になっていることです。店や相手との金銭の交渉、示談書や念書のやり取りは、それだけでは刑事手続ではありません。
- その罪が特定性犯罪に当たることです。刑事事件になっても、列挙されていない罪であれば確認の対象になりません。
- 有罪の裁判が確定することです。不起訴で終われば対象外ですが、略式手続による罰金は有罪の裁判であり、対象になります。
風俗トラブルの主な類型を、この関門に当てはめると次のようになります。
| トラブルの類型 | 問われ得る罪 | 特定性犯罪か |
|---|---|---|
| 成人の相手と合意のうえでの本番行為 | 売春防止法に客を罰する規定はない | 当たらない |
| 個室でのキャストへの無断の接触 | 不同意わいせつ罪(刑法176条) | 当たる |
| 同意のない本番行為 | 不同意性交等罪(刑法177条) | 当たる |
| キャストの隠し撮り(撮れていない未遂を含む) | 性的姿態等撮影罪 | 当たる |
| 会話の録音 | 録音自体を罰する規定はない(立入りの態様により住居侵入罪などの問題) | 当たらない |
| 相手が18歳未満だった | 児童買春の罪、青少年健全育成条例違反など | 当たる |
| 店からの「罰金」「違約金」の請求、美人局による金銭要求 | 民事上の請求の当否や、相手側の恐喝罪などの問題 | 客の前科とは関係しない |
成人どうしの合意にもとづく行為や、店との金銭をめぐるもめごとは、それだけでは日本版DBSと結びつきません。注意が必要なのは次の場面です。
罰金で終わっても10年は確認の対象になる
撮影罪や児童買春の罪、迷惑防止条例違反には罰金刑があり、正式な裁判を開かずに書面の審理で罰金を科す略式手続がとられることがあります。法廷に立たずに終わっても、略式命令は確定すれば有罪の裁判です。特定性犯罪であれば、罰金を納め終えた日などから10年間は確認の対象になります。略式命令を受けてから14日以内であれば、正式な裁判を求めることもできます(刑事訴訟法465条1項)。
罰金刑のない罪は、起訴されれば拘禁刑の判決になる
不同意わいせつ罪(6か月以上10年以下の拘禁刑)と不同意性交等罪(5年以上の有期拘禁刑)には、罰金刑がありません。起訴されて有罪となれば拘禁刑が言い渡され、執行猶予が付けば裁判の確定から10年、実刑であれば刑の執行を終えた日などから20年が確認の対象です。いずれも告訴がなくても起訴できる罪で、店に支払ったことで刑事手続が終わるわけではありません。
相手が18歳未満だった場合
相手が18歳未満であれば、同意があったかどうかにかかわらず、対価の有無などに応じて児童買春の罪や青少年健全育成条例違反が問題になり得ます。いずれも特定性犯罪に含まれ、罰金で終わった場合でも10年間は確認の対象です。18歳未満と知らなかった事情は罪の成否に関わりますが、年齢確認の状況などから判断されるうえ、条例によっては確認を怠った過失があれば処罰の対象とするものもあります。「知らなかったから問題ない」と自分で結論づけるのは避けたいところです。
店の「罰金」や「DBSに載せる」という言葉
店が求める「罰金」や「違約金」は、民事上の請求を店がそう呼んでいるもので、刑事手続の罰金とは別のものです。支払っても支払わなくても、それによって日本版DBSに記録が作られることはありません。確認を申請できるのは対象となる学校や事業者だけで、照合の相手は有罪が確定した事件の記録です(同法33条・34条)。店や相手が「DBSに登録する」と言っても、店が情報を登録したり照会したりする仕組みはありません。仕事への不安につけ込んで金銭を求める言動は、それ自体が恐喝や脅迫の問題になり得ます。
ただし、勤め先への直接の連絡をほのめかされている場合は、DBSとは別の問題として対応が必要です。また、店に支払ってもキャスト本人との示談が成立するとは限らず、刑事事件になるかどうかは店との金銭の決着と切り離して考える必要があります。
いま風俗トラブルを抱えている場合に気をつけたいこと
日本版DBSとの関係で分かれ目になるのは、逮捕されたかどうかではなく最終的な処分です。刑事事件になっている、またはなりそうな場合は、処分が決まる前に見通しを確認しておくことが大切です。一方、仕事への影響を気にするあまり次のような行動をとると、かえって状況を悪くするおそれがあります。
- 撮影したデータや相手とのやり取りを削除すること。
- 被害を訴えている相手に直接連絡し、謝罪や口止めを求めること。
- 取調べで、事実と異なる説明をすること。
- 店に言われるまま、その場で支払いや署名に応じること。
データの削除は証拠隠滅と受け取られるおそれがあり、相手への直接の連絡は新たなトラブルの原因になり得ます。被害を訴えている方がいる事件では、弁護士を通じた謝罪や被害回復の申入れが、処分を判断する際の事情の一つになります。ただし、示談が成立すれば不起訴になるというものではなく、仕事を守ることだけを目的にせず、起きたことに向き合う姿勢が前提になります。
ご自身の状況は、次の点から整理すると判断しやすくなります。
- 問題になっている行為が当たり得る類型と罪名。
- 刑事事件になっているのか、店や相手との金銭の問題にとどまっているのかという現状。
- 処分が確定した場合に確認の対象となる期間(罰金・執行猶予なら10年、実刑なら20年)。
- 勤め先が義務対象か認定事業者か、自分の仕事が確認の対象に当たるかどうか。
過去の風俗トラブルで前科がある場合
特定性犯罪の前科がある場合は、裁判の確定日や罰金を納めた日などの起算点を確かめ、期間が続いているかを把握しておくことが出発点です。施行前に確定した判決でも期間内であれば対象になり、改正前の懲役も拘禁刑とみなされます(同法附則3条)。
ガイドラインでは、採用選考の段階で特定性犯罪の前科がないことを誓約書などで確認することが適当とされています。該当する前科について事実と異なる回答をすると、後に経歴の詐称として扱われるおそれがあります。すでにその職に就いている方の扱いは、【日本版DBS】現在その職に就いている人はどうなるのか|施行後の扱いで整理しています。
よくあるご質問
風俗店を利用したこと自体が、日本版DBSで勤め先に伝わることはありますか
日本版DBSの仕組みを通じて伝わることはありません。照合の対象は特定性犯罪で有罪が確定した事件の記録であり、店の利用歴や顧客名簿は含まれません。利用した店が摘発された場合も、客は通常、事情を聞かれる参考人の立場にとどまります。摘発の際の顧客情報の扱いは、【風俗トラブル】利用した店が摘発された|顧客名簿・予約履歴はどこまで捜査に使われるのかをご覧ください。
まとめ
- 日本版DBSは2026年12月25日に施行され、子どもと接する一部の仕事について、特定性犯罪の前科の有無が国を通じて確認されます。
- 風俗トラブルが関係するのは、刑事事件になり、罪名が特定性犯罪に当たり、有罪が確定した場合に限られます。
- 成人との合意にもとづく行為や、店の「罰金」「違約金」をめぐるもめごとは、それだけでは確認の対象になりません。
- 隠し撮り、無断の接触、相手が18歳未満だった場合などは特定性犯罪に当たり得るため、有罪が確定すれば、罰金や執行猶予でも10年間は確認の対象になります。
- 事業者に伝わるのは該当の有無と区分・確定日であり、罪名や事件の中身は記載されません。
子どもに関わる仕事をしている方にとって、風俗トラブルへの対応は、刑事手続の見通しと仕事への影響をあわせて考える必要があります。いま抱えている問題が表のどこに当たるのかを整理するだけでも、次にとるべき行動は見えやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


