恐喝・強要・脅迫はどう違うのか|言い方で罪名が変わる
本記事は、2026年9月時点で公表されている法令と、こども家庭庁の「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月改訂)および「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年4月)に基づいて作成しています。施行前の制度のため、運用の細部は今後変わる可能性があります。
2026年12月25日から、学校や保育所、国の認定を受けた学習塾などで子どもと接する仕事に就く人について、性犯罪の前科の有無を国に確認する仕組みが始まります。正式には「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(こども性暴力防止法)といい、イギリスの制度になぞらえて「日本版DBS」と呼ばれています。
子どもに関わる仕事をしている人が一律に確認されるわけではありません。対象になるかどうかは、勤め先、仕事の内容、過去の経歴、そして時期という四つの物差しで決まります。本記事では、この四つに沿って対象になる人・ならない人を整理します。
対象かどうかを決める四つの物差し
| 物差し | 分かれ目 |
|---|---|
| 勤め先 | 法律で義務づけられた施設か、国の認定を受けた事業者か |
| 仕事の内容 | 子どもとの関係で「支配性・継続性・閉鎖性」をすべて満たすか |
| 過去の経歴 | 特定性犯罪で有罪が確定し、定められた期間内にあるか |
| 時期 | 新しく仕事に就く人か、施行時にすでに働いている人か |
勤め先と仕事の内容は「確認を受ける人かどうか」を、過去の経歴は「確認の結果、該当となるかどうか」を分ける物差しです。確認を受けても、該当する前科がなければ「該当しない」という結果が事業者に伝わるだけです。
勤め先による違い|義務の対象と認定の対象
確認が法律上の義務とされるのは、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校・高等専門学校、専修学校(高等課程)、認定こども園、認可保育所、児童館、児童養護施設、児童相談所、放課後等デイサービスなどの指定障害児通所支援、小規模保育などです。公立か私立かは問われません。
一方、学習塾、スポーツクラブ、ダンスや音楽の教室、放課後児童クラブ、認可外保育施設などは、国(こども家庭庁)の認定を受けた場合に限って制度の対象になります。認定を受けるかどうかは事業者の任意です。同じ塾講師でも、勤め先が認定を受けていれば確認を受け、受けていなければ制度上の確認は行われません。
学習塾などが認定を受けられるのは、標準的な修業期間が6か月以上であること、対面で指導すること、事業者が用意する場所で指導すること、教える人が3人以上いることなどの要件を満たす場合です。次のような場合は、制度の対象にならないとされています。
- 大学や専門学校(専門課程)での仕事。
- 個人1人だけで行っているベビーシッターや家庭教師。
- 里親や、ファミリー・サポート・センターの会員として子どもを預かる活動。
- オンラインだけで指導する教室。
- 教える人が2人以下の教室。
仕事の内容による違い|支配性・継続性・閉鎖性
対象の職場で働いていても、全員が確認を受けるわけではありません。子どもに対して優越的な立場に立つ機会がある(支配性)、日常的・定期的に子どもと接する(継続性)、他の職員や保護者の目が届かない状況で接する機会がある(閉鎖性)という三つの要件をすべて満たす仕事が対象です。
教諭、保育士、学習塾の講師、スポーツの指導員などは職種全体が対象とされ、事業者の判断で外すことはできません。事務職員や運転手などは、業務の実態によって判断が分かれます。
| 職種 | 対象になり得る例 | 対象外となり得る例 |
|---|---|---|
| 事務職員 | 保護者面談の間、別室で子どもの相手をする | 電話対応や書類整理だけで、子どもとほとんど接しない |
| 送迎バスの運転手 | 他の職員が同乗せず、子どもと会話する | 他の職員の同乗が前提になっている |
| 医師・嘱託医 | 施設内で年に複数回、個別に診察や相談をする | 年1回の健康診断だけで、常に職員が同席する |
| ボランティア | 定期的に参加し、一対一で学習支援をする | 年1回の行事や、1日だけの参加 |
なお、閉鎖性は、指導者1人に対して子どもが複数いる場合も満たすとされています。SNSやアプリを通じたやりとりも「接する機会」に含まれます。短期のアルバイトやスポットワーク、ボランティアも、仕事の内容が要件を満たす限り、従事期間の長短による例外はありません。教育実習や保育実習の実習生は、原則として子どもと一対一にしない実習計画のもとで指導教員の監督を受けていれば、確認は求められないとされています。
過去の経歴による違い|確認されるのは「特定性犯罪の前科」
対象になる罪
確認の対象は、法律が「特定性犯罪」として列挙した罪で有罪が確定した前科です。刑法の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪・監護者わいせつ罪・16歳未満の者に対する面会要求等罪、児童買春・児童ポルノ関係の罪、児童福祉法の児童に淫行をさせる罪、性的姿態撮影等処罰法の性的姿態等撮影罪(いわゆる盗撮)など、都道府県の迷惑防止条例(痴漢・盗撮など)と青少年健全育成条例(淫行など)の罪が含まれます。改正前の強制わいせつ罪なども対象です。
被害者が大人であった事件も含まれます。電車内の痴漢で迷惑防止条例違反の罰金を受けた場合も、子どもに対する事件と同じく確認の対象になります。
確認の対象になる期間
処分の種類ごとの期間は次のとおりです。
| 処分 | 期間 | 数え始める日 |
|---|---|---|
| 拘禁刑(実刑) | 20年 | 刑の執行を終えた日など |
| 拘禁刑(執行猶予) | 10年 | 裁判が確定した日 |
| 罰金 | 10年 | 罰金を納め終えた日など |
これらの期間は、刑法34条の2の「刑の消滅」(拘禁刑以上は10年、罰金以下は5年)より長く定められています。そのため、法律上は刑が消滅していても確認の対象になることがあります。執行猶予の場合は、猶予期間が満了しても、裁判の確定から10年間は対象です。改正前の懲役も拘禁刑として扱われます。反対に、期間を過ぎた後は「該当しない」と記載され、過去に該当していたことは事業者に伝わらないとされています。
前科と前歴の違いや刑の消滅の考え方は、前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面で説明しています。
対象にならない経歴
- 不起訴処分(示談による起訴猶予を含む)で終わった事件。
- 逮捕や取調べを受けただけの前歴。
- 窃盗・傷害・交通事件など、性犯罪以外の前科。
- 公然わいせつ罪、軽犯罪法違反、ストーカー規制法違反など、特定性犯罪に列挙されていない罪の前科。
- 少年事件の保護処分。
- 上記の期間を過ぎた前科。
ただし、同じ出来事で特定性犯罪の有罪判決も受けていれば、その部分は対象になります。また、教員や保育士については、児童生徒などへの性暴力等を理由とする免許・登録の失効などを確認する別のデータベースの照会が、引き続き行われます。前科がなくても、職場が定める「不適切な行為」の程度によっては、子どもと接する業務から外されることがある点にも注意が必要です。
いつ確認されるのか|立場ごとの時期
| 立場 | 確認の期限 |
|---|---|
| 施行日以降に新しく仕事に就く人 | 仕事を始める日まで |
| 施行時に義務対象の職場で働いている人(2026年12月24日までに内定した人を含む) | 2029年12月24日まで(2027年4月以降、職場ごとに割り当てられた時期に順次) |
| 認定を受けた事業者で、認定の時点で働いている人 | 認定の日から1年以内 |
| 一度確認を受けた人 | 確認日から5年を経過する日の属する年度末まで(以後も同様) |
新しく就く人の確認は、内定などで仕事に就くことが決まった後に行われ、内定前に行うことはできません。申請から結果が出るまでの標準的な期間は、日本国籍の人で2週間から1か月程度とされています。急な欠員などやむを得ない事情がある場合に限り、仕事を始めてから3か月(一定の場合は6か月)以内の確認が認められますが、その間は子どもと一対一にしないなどの措置がとられます。
学習塾など認定対象の職場では、勤め先が認定を受ける時期(申請の受付は施行日から)によって、確認を受ける時期が変わります。
確認の流れと、本人に知らされる場面
確認は、事業者がこども家庭庁に申請し、本人がマイナンバーカードなどを使って戸籍の情報を直接こども家庭庁に提出する形で進みます。戸籍の内容が事業者に見られることはないとされています。こども家庭庁が法務省に照会し、該当しなければ、その旨の確認書が事業者に交付されます。
該当する前科が見つかった場合は、事業者に確認書が交付される前に、本人に事前の通知が届きます。本人は、2週間以内に次のいずれかの対応をとれます。
- 内容に誤りがあると考える場合の訂正請求。
- 内定辞退などで仕事に就かなくなった場合の中止要請。
- 誤りがないことを確認した旨の連絡。
中止要請をしただけでは申請は無効にならず、事業者に対して申請を取り下げてもらうよう伝える必要があるとされています。2週間の間に何の手続もしなければ、通知の内容が記載された確認書が事業者に交付されます。
該当すると分かった場合、事業者には、内定の取消し、試用期間中の本採用の拒否、現職者であれば配置転換などにより、子どもと接する業務に従事させない措置が求められます。ただし、これらは労働関係の法令を守って行う必要があり、直ちに解雇されるとは限りません。採用選考の段階で誓約書などにより前科の有無を確認していたかどうかによっても、扱いは変わります。
捜査中・裁判中の方が知っておきたいこと
確認の対象になるのは、有罪が確定した裁判です。現在捜査を受けている事件は、最終的にどのような処分になるかによって、この制度との関係が変わります。不起訴であれば対象にはなりませんが、略式手続による罰金も有罪の裁判であり、罰金を納め終えてから10年間は確認の対象になります。「罰金で済むなら」と考えて手続を進める前に、仕事への影響を含めて見通しを確認しておくことが大切です。
身に覚えのない疑いであれば、事実関係を正確に主張して記録に残すことが基本です。事実を認めている場合も、被害者への謝罪と被害回復の取組は、検察官が処分を決める際の事情の一つになります。処分の見通しは事案によって異なり、結果を約束できるものではありませんが、処分が決まる前の段階でできることは少なくありません。
よくあるご質問
保護者が先生の前科を調べられるようになるのですか
そのような仕組みではありません。確認を申請できるのは対象となる事業者だけで、確認の結果を目的外に使うことや第三者に伝えることは禁じられています。漏えいなどには罰則もあります。
自分の記録を自分で確認することはできますか
申請は事業者が行う仕組みで、本人が単独で申請することは想定されていません。該当する前科がある場合は、事業者に確認書が交付される前に本人に通知されます。
まとめ
- 日本版DBSは2026年12月25日に施行され、学校や保育所などでは義務として、学習塾などでは国の認定を受けた場合に確認が行われます。
- 確認を受けるのは、子どもとの関係で支配性・継続性・閉鎖性をすべて満たす仕事に就く人です。
- 確認されるのは特定性犯罪の前科に限られ、期間は実刑が20年、執行猶予と罰金が10年です。
- 不起訴や前歴、性犯罪以外の前科は対象になりません。
- 義務対象の職場の現職者は2029年12月24日まで、認定事業者の現職者は認定から1年以内に確認を受けます。
子どもに関わる仕事をしていて、過去の事件がこの制度でどう扱われるのか分からない方や、現在捜査を受けていて今後の仕事への影響が気になっている方は、事件の状況と勤め先の状況を合わせて整理することで、見通しを立てやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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