【解決事例】元交際相手からの貸金返還請求353万円を和解金100万円まで減額した事例
別れた相手と再び連絡を取り、以前のような関係に戻る。当事者にとっては「復縁」であっても、その時点でどちらかが結婚していれば、法律はまったく別の枠組みで評価します。ここに、当事者の実感と法律上の扱いのずれが生まれます。過去に交際していたことは、責任を重くする理由にも、責任を免れる理由にもなりません。その一方で、過去の交際があること自体が、後から事実を確かめる場面では独特の難しさを生みます。この記事では、元交際相手との復縁が不貞として問題になる場面で、何が判断され、何が判断されないのかを整理します。
「復縁」は法律上の区分ではありません
不貞慰謝料の枠組みでは、関係の呼び名が結論を左右することはありません。問われるのは、婚姻期間中に配偶者以外の人と性的な関係を持ったかどうか、そしてそれによって夫婦の生活の平穏が害されたかどうかです(民法709条、710条)。
「復縁」「よりを戻した」「昔の関係に戻っただけ」といった言い方は、当事者の受け止めを表す言葉であって、法律上の類型ではありません。判断の対象になるのは、あくまで再び関係を持った後の事実です。
「元交際相手だから」はどちらの方向にも働きません
請求する側からは「よりによって昔の相手と」という受け止めが語られ、請求を受けた側からは「自分のほうが先に付き合っていた」という説明が出てくることがあります。どちらも自然な感情ですが、そのままの形では判断材料になりません。
前者は、悪質さを示す一般的な事情に置き換えられて初めて評価の対象になります。後者は、そもそも評価の対象にはなりません。婚姻の前に交際していたことは、当時においては誰の権利も侵害していないからです。
数えられるのは、再び関係を持った後の期間です
過去の交際期間そのものが賠償の対象になることはありません。期間の長さが金額の話に出てくる場面でも、数えられるのは婚姻期間中の部分だけです。「10年来の関係」という言い方をしても、そのうち法律上意味を持つのは、結婚後に再開した後の部分に限られます。
過去の交際があることで、変わることと変わらないこと
| 後から問われること | 一般の不貞と同じ部分 | 元交際相手であることによる違い |
|---|---|---|
| 性的な関係があったか | 要件も、証明の考え方も変わらない | 過去の記録と混ざるため、時期の切り分けが必要になる |
| いつ始まったのか | 関係を持った時点ごとに判断される | 連絡の再開と関係の再開が別の時点になりやすい |
| 既婚だと知っていたか | 知っていたか、知り得たかが問われる | 共通の知人やSNSを通じて事情が伝わっていることが多い |
| 金額をどう考えるか | 夫婦への影響の大きさを中心に判断される | 婚姻前の交際期間は対象に含まれない |
枠組みそのものは、どのような出会い方でも変わりません。違いが出るのは、後から事実を確かめる場面です。以下では、その違いが実際に表れる場面を順に見ていきます。
実際に効いてくるのは「いつ、どの関係が始まったのか」
「復縁」には段階があります
連絡が再開した時点、二人で会うようになった時点、性的な関係を持った時点。この3つが同じ日であることは、ほとんどありません。慰謝料の場面で直接意味を持つのは3つ目ですが、話し合いの場では1つ目の日付が「いつから」の答えとして語られやすく、そこから食い違いが始まります。
「去年の秋から」と述べたつもりが連絡の再開時期であり、相手方は関係の開始時期として受け取っている、という行き違いは珍しくありません。どの段階のことを述べているのかを、自分の中で分けておく必要があります。
記録が2つの期間にまたがります
元交際相手との間には、当時のやり取りや写真が残っていることがあります。それらは今回の関係を示すものではありませんが、区別がつかないまま並んでいると、話が混乱します。
日付の表示がない写真、機種変更や移行を経て日時の情報が失われたデータ、古いものと新しいものが同じ場所に保存されている状態。いずれも、いつのものかを別の材料で補う必要が出てきます。逆の混乱も起こります。請求する側が古いやり取りを見つけて「結婚してからもずっと続いていた」と受け取り、実際には交際当時のものだった、という場面です。
「一度切れていた」ということ自体が争点になります
復縁という説明は、その前提として一度終わっていたことを含みます。ところが請求する側から見れば、結婚の前から途切れずに続いていたのではないか、という疑いが自然に生じます。
この2つは、法律上の扱いが異なります。婚姻の後に改めて始まった関係であれば、責任が生じるのは再開した後の部分です。婚姻の前から切れずに続いていたのであれば、婚姻が成立した時点から先が問題になり、期間の見方も変わります。「復縁した」と述べることは、この点について1つの主張をしていることになります。
| 場面 | 手がかりが残りやすいこと | つまずきやすいこと |
|---|---|---|
| 連絡の再開 | 最初のメッセージの日付が残っていることが多い | 再開の日付が、そのまま関係の開始日として扱われる |
| 再会して会うようになった | 移動や決済の記録が手がかりになる | 会ったことと関係を持ったことが同じものとして語られる |
| 関係の再開 | 当事者以外に分かる材料が少ない | 双方の記憶に頼ると時期がずれ、後から動かしにくくなる |
| 途切れていた期間 | 連絡が途絶えていた期間は空白として残る | 空白があることが、関係がなかったことを示すとは限らない |
婚姻前の交際は、それ自体では請求の対象になりません
独身どうしの交際について、貞操義務を定めた規定はありません。過去に交際していた事実がどれほど深いものであっても、そこを取り上げて賠償を求めることはできません。婚約や内縁のように、婚姻に準じた関係として保護される場合は別の考え方になりますが、これは通常の交際とは区別して扱われます。
注意が必要なのは、結婚の直前まで関係が続いていた場合です。婚姻届が出された日を境に、法律上の扱いは変わります。その前後にまたがって関係があったときは、どこまでが婚姻前の出来事なのかを説明できるようにしておく必要があります。
「結婚していると知らなかった」と言えるかどうか
元交際相手の場合、この点の見え方は、初めて知り合った相手との場合とは異なります。共通の友人がいる、同じ学校や職場の関係が残っている、SNSでつながったままだった——結婚したことが伝わる経路が複数あることが多く、知らなかったと述べても、そのいずれかを通じて事情が届いていたのではないかと問われやすくなります。
もっとも、長く連絡が途絶えていた相手であれば、結婚を知らないまま再会することもあります。何年かぶりに顔を合わせ、その場では家庭の話が出なかったという経緯は、実際にあります。知らなかったという言い分がおよそ成り立たない、ということではありません。
いずれにしても、判断されるのは関係を持った時点ごとです。途中で知った場合には、知った後の部分が問題になります。故意や過失が否定される場合の考え方、そしてその言い分をどう裏づけるかについては、別の記事で詳しく取り上げています。
金額の場面で持ち出されやすい事情
「自分のほうが先だった」は理由になりません
過去に交際していた順序は、現在の夫婦の生活とは無関係です。感情としては理解できても、責任の有無や金額の判断に持ち込める事情ではありません。
どちらから声をかけたか
連絡を再開したのがどちらか、関係に誘ったのがどちらか。これらは経緯を説明する事情の1つとして述べられることがありますが、それだけで結論が決まるものではありません。原則として2人が共同で行った行為として扱われるため、一方がまったく責任を負わないという結論にはなりにくいところです。
過去を強調すると、別の受け取られ方をすることがあります
「昔からの関係だから特別だった」「もともと自分たちのほうが長かった」という説明は、請求する側から見れば、結婚後もその関係が続いていた、あるいは途切れていなかった、という読み方にもつながります。責任を軽くするつもりで述べたことが、期間や経緯の評価では逆に働くことがあります。
金額がどのような要素で組み立てられるのか、増える方向・減る方向に働く事情にはどのようなものがあるのかは、別の記事で整理しています。
共通の人間関係があることで起きること
元交際相手との関係は、共通の友人や同級生、地元の知り合いといった輪の中で起きていることが少なくありません。事情が伝わる速度が速く、請求する側から見れば経緯を確かめやすい面があります。
一方で、事情を第三者に伝えることには別の問題が生じます。相手の交友関係や勤務先に働きかけることは、こちらの側の責任を生む場合があります。また、相手が配偶者にとっても知人であるときは、当事者以外の人が話し合いに入り込みやすく、かえって条件を整理しにくくなることがあります。話し合いの窓口をどこに置くかは、早い段階で決めておくほうが進めやすくなります。
請求を受けた側が最初に迷うこと
「復縁しただけ」という説明では終わりません
当事者にとっては元の関係に戻っただけでも、判断されるのは婚姻期間中に何があったかです。関係の呼び名を説明することに時間を使うより、いつからの、どの範囲の事実について述べているのかを整理するほうが、話し合いは前に進みます。
過去を認めることと、結婚後の関係を認めることは別です
「昔付き合っていたのは事実です」と述べたことが、結婚後の関係まで認めた趣旨として受け取られることがあります。時期を区切らずに認めてしまうと、後から範囲を限定するのが難しくなります。何を認め、何については述べていないのかを、自分の中で分けておく必要があります。
古いやり取りを整理することの意味
当時の記録が残っていることに気づいて、まとめて消したくなることがあります。ただし、消したという事実そのものが別の意味を持つ場合があります。手を付ける前に、何が残っていて、それがどの時期のものかを確認しておくほうが安全です。
請求する側から見た同じ問い
請求する立場からは、次の点が確認の入口になります。
- 再開の時期と、関係が生じた時期を分けて把握する。
- 手元にある記録が、交際当時のものか、再開後のものかを見分ける。
- 「結婚前から続いていたのではないか」と考えている場合、それは復縁とは別の主張になることを意識する。
- 共通の知人から得た情報をどう扱うか、伝え方も含めて先に決めておく。
消滅時効は、不貞の事実と相手を知った時から進みます(民法724条)。過去の交際があると、いつから知っていたことになるのかが問題になりやすいため、この点も早めに確認しておくことをおすすめします。
よくあるご質問
連絡を取り合っているだけの段階でも請求できますか
連絡を取り合っている、食事をしている、という段階では、不貞行為があったとは扱われないのが通常です。ただし、関係の内容や程度によっては、夫婦の生活の平穏が害されたとして別の枠組みで問題になる場合があります。肉体関係がない場合の考え方は、別の記事で取り上げています。
結婚前から続いていたのか復縁なのかが分かりません
どちらであっても、婚姻期間中の部分について責任が問われる点は共通です。違いが出るのは期間の見方と、経緯をどう評価するかの部分です。分からないまま断定して述べると、後から訂正しにくくなります。分かっている事実と、推測している部分を分けて整理しておくのが安全です。
相手が「独身のころの延長のつもりだった」と言っています
当事者の感覚がどうであったかは、責任の有無を決めるものではありません。問題になるのは、結婚している人との関係であることを知っていたか、あるいは知り得たかです。この点をめぐる考え方は、故意・過失を扱った記事で詳しく説明しています。
まとめ
- 「復縁」は当事者の実感を表す言葉で、法律上の類型ではない。
- 判断されるのは、婚姻期間中に性的な関係があったかどうかである。
- 婚姻前の交際期間そのものは、賠償の対象にも、免れる理由にもならない。
- 実際に難しくなるのは、連絡の再開・再会・関係の再開という3つの時点の切り分けである。
- 過去の記録と現在の記録が混ざるため、いつのものかを見分ける作業が必要になる。
- 「一度切れていた」のか「続いていた」のかは、扱いが異なる別の主張である。
- 過去の関係を強調することが、かえって不利に働く場合がある。
ご相談について
元交際相手との関係が問題になっている場面では、事実そのものよりも、どの時期のどの事実を述べているのかが整理されないまま話が進んでしまうことが少なくありません。請求する側であっても、請求を受けた側であっても、早い段階で手元の材料を確認し、述べる範囲を決めておくことで、その後の負担は大きく変わります。
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