【人事トラブル】引き継ぎをせずに社員が退職をする場合には
事故や逮捕で出勤できない社員を、有給・欠勤・休職のどれで扱う
勝手に有給処理するとトラブルになる理由
今日もありがとうございます。
人事トラブルを整理する「人の専門家」
ハーレー好きの社労士、キャプテン ヒデです。
社員が休日に交通事故を起こした。
逮捕や警察対応で出勤できない。
本人や家族から「しばらく出社できません」と連絡があった。
このような場合、会社は勤怠をどう処理すればよいのでしょうか。
有給休暇なのか。
欠勤なのか。
休職なのか。
それとも、自宅待機なのか。
この整理を間違えると、後で給与トラブルや退職トラブルにつながることがあります。
ここでは、主に休日や私生活上の事故・トラブルにより、本人が出勤できない場面を想定します。
業務中の事故や通勤途中の事故の場合は、労災・通勤災害の問題が出るため、別の整理が必要です。
まず分けて考えたいのは、有給、欠勤、休職、自宅待機は、それぞれ意味が違うという点です。
会社が、
「今回は有給にしておこう」
「欠勤扱いでよいだろう」
「しばらく休職にしておこう」
と都合よく選べるものではありません。
本人が働けない理由、本人の意思、就業規則の定め、会社が出勤を止めているのかどうかを確認して整理する必要があります。
有給休暇は、本人の申請を確認する
まず注意したいのが、有給休暇です。
社員が出勤できない場合、会社としては、
「有給が残っているから、有給で処理しておけばよいのでは」
と考えることがあります。
実務では、このような発想になりがちです。
給与も減らない。
欠勤にもならない。
本人にとっても悪くない。
一見すると、穏当な処理に見えるかもしれません。
しかし、年次有給休暇は、原則として労働者本人の請求に基づいて取得するものです。
そのため、本人の意思確認なく、会社が一方的に有給休暇を充当することは避けるべきです。
本人が有給休暇を希望する場合は、本人の申請に基づいて処理します。
一方、本人が希望していないのに、会社が勝手に有給扱いにすると、後で、
「勝手に有給を使われた」
「本当は欠勤でよかった」
「復帰後のために有給を残しておきたかった」
と問題になる可能性があります。
会社の時季指定義務や計画年休制度とは別に、個別の欠勤日を会社が一方的に「有給扱い」にすることは避けたいところです。
有給休暇で処理する場合は、本人の申請や同意を確認し、記録に残しておくことが大切です。
本人都合で出勤できない場合は、欠勤扱いもある
休日の私生活上の事故や刑事手続により、本人が現実に出勤できない場合は、本人側の事情で労務提供ができない状態と整理されることがあります。
この場合、有給休暇の申請がなければ、欠勤扱いとすることも考えられます。
たとえば、
・逮捕、勾留により出勤できない
・入院により勤務できない
・警察対応等で出勤できない
・本人から欠勤の連絡がある
・家族や代理人から出勤できない旨の連絡がある
といった場合です。
ただし、欠勤扱いにする場合も、就業規則や賃金規程に基づいて処理する必要があります。
確認したいのは、次の点です。
・欠勤控除の計算方法
・欠勤が続いた場合の扱い
・無断欠勤か、連絡のある欠勤か
・休職へ移行する条件
・普通解雇や自然退職との関係
・本人や家族、代理人との連絡状況
ここで注意したいのは、連絡が取れない場合です。
逮捕・勾留、入院、事故直後など、本人がすぐに連絡できない事情がある場合もあります。
連絡がないことだけを理由に、直ちに悪質な無断欠勤と決めつけるのは避けたいところです。
会社としては、本人、家族、緊急連絡先、代理人などに連絡を試み、その経過を記録に残しておくことが大切です。
長期化する場合は、休職規定を確認する
出勤できない期間が長期化する場合、休職制度の適用を検討することがあります。
ただし、休職にできるかどうかは、就業規則の定めによります。
休職は、法律上すべての会社に当然に用意されている制度ではありません。
会社の就業規則や労働契約に基づいて運用される制度です。
よくあるのは、私傷病休職の規定だけがある会社です。
しかし、交通事故や逮捕に伴う出勤不能が、私傷病休職にそのまま当てはまるとは限りません。
たとえば、交通事故で負傷して勤務できない場合は、私傷病休職として整理しやすいことがあります。
一方で、逮捕・勾留によって出勤できない場合は、病気やけがではありません。
そのため、就業規則に次のような休職事由があるか確認します。
・私傷病により勤務できない場合
・刑事事件に関し勾留、起訴等により勤務できない場合
・会社が休職を必要と認めた場合
・その他前各号に準ずる事情がある場合
ただし、「会社が休職を必要と認めた場合」という規定があっても、理由や期間を示さずに一方的に休職扱いにするのは避けるべきです。
休職にする場合は、
・どの規定に基づく休職なのか
・休職開始日はいつか
・休職期間はいつまでか
・休職中の賃金はどうなるのか
・社会保険料の本人負担分をどうするのか
・復職の条件は何か
・休職満了時の扱いはどうなるのか
を本人に通知し、記録に残しておく必要があります。
休職満了・自然退職も慎重に扱う
休職期間が満了しても復職できない場合、自然退職とする規定がある会社もあります。
ただし、自然退職も機械的に処理すればよいわけではありません。
確認したいのは、次の点です。
・休職開始の根拠
・休職開始日
・休職期間
・休職満了日
・本人への通知
・復職可能性の確認
・休職満了後の扱い
・自然退職規定の有無
特に、本人への通知は重要です。
会社としては、
「あなたは〇月〇日から休職となります」
「休職期間は〇月〇日までです」
「休職満了日までに復職できない場合は、就業規則に基づき自然退職となります」
というように、本人に分かる形で伝えておく必要があります。
「有給がなくなったから退職」
「出勤できないから自動的に退職」
「連絡がないから退職扱い」
このような処理は危険です。
自然退職の規定があっても、休職開始、休職満了、復職可能性の確認を丁寧に行い、会社としての対応経過を記録に残しておくことが大切です。
自宅待機とは意味が違う
前回の記事では、自宅待機中の給与について整理しました。
ここで改めて確認したいのは、欠勤や休職と、自宅待機は意味が違うということです。
欠勤や休職は、主に本人側の事情で勤務できない場合に問題になります。
一方、自宅待機は、会社が出勤を控えさせる場合に問題になります。
たとえば、本人が逮捕・勾留されていて現実に出勤できない期間は、本人側の事情として欠勤や休職の問題になります。
しかし、釈放後に本人が出勤できる状態になったにもかかわらず、会社が、
「まだ出勤しないでください」
「会社から連絡するまで自宅で待機してください」
「処分が決まるまで来ないでください」
と命じる場合は、会社都合の待機として整理する必要が出てきます。
この場合、休業手当や賃金の問題が出る可能性があります。
同じ「会社に来ていない」状態でも、
・本人が来られないのか
・会社が来させていないのか
によって、勤怠処理も給与の扱いも変わります。
会社が確認しておきたい実務上の流れ
事故や逮捕で社員が出勤できない場合、会社としては、いきなり有給・欠勤・休職を決めるのではなく、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
まず、本人が出勤できない理由を確認します。
休日の事故なのか。
業務中や通勤途中の事故なのか。
逮捕・勾留なのか。
入院なのか。
単に本人と連絡が取れないのか。
次に、本人の意思を確認します。
有給休暇を希望しているのか。
欠勤として扱うことを理解しているのか。
休職に関する説明を受けているのか。
次に、就業規則を確認します。
欠勤控除の規定はあるか。
休職事由に該当するか。
休職期間はどう定められているか。
自然退職の規定はあるか。
自宅待機の規定はあるか。
最後に、会社の対応を記録します。
いつ、誰に、どのように連絡したのか。
本人からどのような申出があったのか。
会社はどの規定に基づいて処理したのか。
給与をどう扱ったのか。
この記録がないと、後から説明が難しくなります。
まとめ
事故や逮捕で社員が出勤できない場合、勤怠処理は慎重に整理する必要があります。
大切なのは、次の点です。
・本人が有給休暇を希望しているか
・本人側の事情で出勤できないのか
・会社が出勤を控えさせているのか
・業務中や通勤途中の事故ではないか
・欠勤控除の規定があるか
・休職規定を適用できるか
・自然退職の規定があるか
・本人への通知や記録を残しているか
有給、欠勤、休職、自宅待機は、それぞれ意味が違います。
会社が都合よく選ぶのではなく、本人の状況、本人の意思、就業規則、会社の指示内容を確認して整理する必要があります。
特に、有給休暇は本人の申請を確認することが大切です。
会社が良かれと思って有給処理をしても、後で「勝手に使われた」と言われることがあります。
また、欠勤が長期化する場合は、休職規定の有無と内容を確認します。
休職満了や自然退職に進む場合は、本人への通知、復職可能性の確認、記録化が欠かせません。
重大事故や逮捕対応では、処分の問題だけでなく、勤怠・給与・休職の処理も重要になります。
就業規則の規定が、現実のトラブルに対応できる内容になっているか。
有給、欠勤、休職、自宅待機の扱いが整理されているか。
問題が起きてから慌てないためにも、平時に一度確認しておくことをおすすめします。


