社内に「社長ファン」はいますか?
社員の交通事故は労災になるのか
業務中・通勤中・休日の私用中で扱いは変わる
今日もありがとうございます。
人事トラブルを整理する「人の専門家」
ハーレー好きの社労士、キャプテン ヒデです。
社員が交通事故に遭った。
または、社員が交通事故を起こした。
このとき、会社として気になるのが労災の問題です。
「これは労災になりますか」
「通勤災害ですか」
「休日の事故でも会社が手続きする必要がありますか」
「相手方がいる場合は、労災と自動車保険のどちらを使うのですか」
このような相談を受けることがあります。
社員の交通事故が労災になるかどうかは、事故が起きた場所や時間だけではなく、その移動が業務や通勤と関係していたかで判断します。
大きく分けると、
・業務中の事故
・通勤中の事故
・休日の私用中の事故
の3つです。
ここを分けずに、
「会社の車だったから労災」
「休日だから労災ではない」
「本人が事故を起こした側だから労災ではない」
と決めつけると、判断を誤ることがあります。
業務中の交通事故は、業務災害の可能性がある
営業中、配送中、取引先への移動中、会社の業務命令による移動中に交通事故が起きた場合、業務災害に該当する可能性があります。
たとえば、
・営業担当者が顧客訪問へ向かう途中に事故に遭った
・配送担当者が配送中に事故を起こした
・上司の指示で取引先へ移動していた
・出張先で業務上必要な移動をしていた
・会社の指示で研修会場へ向かっていた
このような場合は、業務との関係を確認します。
業務命令に基づく移動中の事故であれば、業務災害として整理される可能性が高くなります。
ただし、業務から大きく外れた私的行為中の事故などは、個別確認が必要です。
たとえば、業務中に会社に無断で私用先へ向かっていた場合、業務に関係のない寄り道をしていた場合などは、事故の状況を詳しく確認する必要があります。
また、社用車を使用していた場合には、労災だけでなく、次のような問題も出てくることがあります。
・車両管理
・安全運転管理
・運転者への教育
・会社の使用者責任
・自動車保険
・相手方への対応
社員本人がけがをしている場合は労災の問題。
相手方にけがをさせた場合は損害賠償や保険対応の問題。
会社としては、両方を分けて整理する必要があります。
通勤中の交通事故は、通勤災害の可能性がある
自宅から会社へ向かう途中、または会社から自宅へ帰る途中の事故であれば、通勤災害に該当する可能性があります。
労災保険法では、業務上の事由または通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等について、労災保険給付の対象としています。
通勤災害でいう通勤には、住居と就業場所との往復のほか、就業場所から他の就業場所への移動などが含まれる場合があります。
そのため、次のようなケースでは確認が必要です。
・自宅から会社へ出勤する途中
・会社から自宅へ帰る途中
・自宅から取引先へ直行する途中
・取引先から自宅へ直帰する途中
・複数の就業場所を移動している途中
・副業先から本業先へ移動している途中
ただし、通勤災害になるかどうかは、経路や移動目的によって判断が変わります。
通勤途中に合理的な経路を外れた場合や、通勤と関係のない私的な用事で移動を中断した場合は、通勤災害と認められるか確認が必要です。
一方で、日用品の購入、病院での診察、選挙権の行使など、日常生活上必要な行為については、一定の条件のもとで、合理的な経路に戻った後は通勤として扱われる場合があります。
つまり、通勤災害かどうかは、
「家と会社の間だったか」
だけではなく、
「合理的な経路か」
「移動の目的は何か」
「寄り道や中断があったか」
「その寄り道は日常生活上必要なものか」
を確認する必要があります。
休日の私用中の事故は、原則として労災ではない
一方、休日に自家用車で買い物に行っていた、家族旅行に行っていた、友人と出かけていたというような完全な私用中の事故は、通常、労災の問題ではありません。
この場合は、本人の自動車保険、健康保険、刑事手続、民事賠償などの問題として整理されます。
会社としては、事故そのものが労災ではない場合でも、
・本人が出勤できるのか
・欠勤、有給休暇、休職をどう扱うのか
・会社への報告が必要な事案か
・免許停止や取消で担当業務に影響があるか
・会社名が報道される可能性があるか
といった労務管理上の確認は必要になります。
ただし、休日であっても、会社の業務命令による移動中であれば話は変わります。
たとえば、
・休日に会社命令で取引先へ向かっていた
・会社の指示で研修会場へ移動していた
・出張先へ移動していた
・自宅から取引先へ直行する途中だった
・会社行事への参加途中だった
このような場合は、完全な私用中と決めつけず、業務災害または通勤災害の可能性を確認する必要があります。
特に会社行事については、任意参加なのか、業務命令なのか、実質的な参加強制があったのかで判断が変わります。
「休日だから労災ではない」とすぐに判断するのではなく、その移動が会社の業務とどのように関係していたのかを確認することが大切です。
社員が加害者側でも、労災の問題が出ることがある
交通事故では、社員が被害者になる場合だけでなく、加害者側になる場合もあります。
ここで誤解しやすいのは、
「本人が事故を起こした側だから労災ではない」
と考えてしまうことです。
労災の判断では、社員が事故の被害者か加害者かだけでなく、その事故が業務中または通勤中に起きたものかを確認します。
業務中や通勤中の事故で社員本人が負傷した場合は、本人に過失があるケースでも、労災保険の問題になることがあります。
ただし、社員が加害者側になった場合は、労災とは別に、次の問題が出ます。
・相手方への損害賠償
・自賠責保険、任意保険の対応
・社用車の場合の会社の責任
・安全運転管理体制
・本人への指導や懲戒処分の検討
・報道や取引先対応
つまり、労災の問題と、相手方への賠償責任の問題は分けて整理する必要があります。
第三者行為災害にも注意する
交通事故では、相手方がいることが多くあります。
業務中や通勤中に、第三者の行為によって事故に遭った場合は、労災保険上「第三者行為災害」として扱われることがあります。
第三者行為災害とは、簡単にいえば、労災保険給付の原因となるけがなどが、第三者の行為によって発生した災害です。
たとえば、
・通勤途中に相手車両に追突された
・営業中に交差点で相手車両と衝突した
・配送中に相手方の過失で事故に遭った
といったケースです。
この場合、労災保険給付と、相手方に対する損害賠償請求との調整が問題になります。
労災保険給付を受ける場合には、所轄の労働基準監督署に「第三者行為災害届」を提出する必要があります。
また、交通事故では、自賠責保険、任意保険、労災保険、損害賠償が絡みます。
相手方との示談を先に進めると、労災保険給付との調整に影響することがあります。
交通事故で労災の可能性がある場合は、示談前に労基署、保険会社、専門家に確認しておくと安心です。
会社が確認すべきこと
社員の交通事故で労災の可能性がある場合、会社は次の点を確認します。
・事故が起きた日時
・事故が起きた場所
・出発地と到着予定地
・移動の目的
・業務命令の有無
・上司の指示の有無
・通常の通勤経路か
・直行直帰か
・寄り道や中断があったか
・社用車か自家用車か
・相手方がいるか
・相手方の氏名、連絡先、保険会社
・警察への届出状況
・交通事故証明書の有無
・本人の負傷状況
・受診した医療機関
・労災指定医療機関かどうか
・健康保険を使って受診していないか
・休業の有無
・勤務予定、シフト
この確認をもとに、労災手続きの要否を判断します。
労災の可能性があるにもかかわらず、健康保険を使って受診している場合は、後で労災への切替が必要になることがあります。
また、休業がある場合には、休業補償給付や勤怠処理の問題も出てきます。
労災かどうかの判断だけでなく、給与、休業、社会保険、損害賠償との関係も整理する必要があります。
まとめ
社員の交通事故が労災になるかどうかは、事故の状況によって変わります。
会社として確認したいのは、次の点です。
・業務中の事故か
・通勤中の事故か
・休日の私用中の事故か
・移動の目的は何か
・会社の指示があったか
・通常の通勤経路か
・寄り道や中断があったか
・第三者行為災害に該当するか
・社員が被害者側か加害者側か
・相手方や保険会社との調整が必要か
休日の事故でも、会社の業務命令による移動中であれば、業務災害や通勤災害の可能性があります。
反対に、業務時間中や通勤途中に見える事故でも、私的な寄り道や中断がある場合には、確認が必要です。
交通事故は、労災、健康保険、自動車保険、損害賠償、勤怠、休業補償が絡むことがあります。
判断に迷う場合は、まず事故状況を整理することが大切です。
「いつ、どこで、何のために移動していたのか」
「会社の指示があったのか」
「通常の経路だったのか」
「相手方がいるのか」
「本人はけがをして休業しているのか」
このあたりを確認したうえで、労基署、保険会社、専門家に早めに確認することをおすすめします。


