【人事トラブル】辞めてもらいたい社員がいるときの対応
「東芝柳町工場事件」。
社会保険労務士なら、一度は勉強する判例だと思います。
私自身も、これまで講習や研修の中で何度も説明してきました。
有期契約社員の雇止めを考えるときに出てくる、有名な判例です。
ところが先日、ふと思いました。
「ところで、柳町工場って、どこにあったんだろう?」
調べてみると、川崎。
しかも横浜からなら近い。
それなら、朝の散歩ツーリングで行けます。
ということで、早朝、ハーレーで出かけてみました。
東芝柳町工場があった場所へ
着いたのは、川崎市幸区柳町。
もちろん今は、「東芝柳町工場」という工場はありません。
かつての東芝柳町事業所の跡地には、現在、キヤノン川崎事業所があります。
キヤノンと東芝の2003年の発表を見ると、東芝柳町事業所の土地(川崎市幸区柳町70番)をキヤノンが取得したことが確認できます。現在のキヤノン川崎事業所の所在地も柳町70-1です。
【写真:旧東芝柳町工場・現キヤノン川崎事業所とハーレー】
建物の前にハーレーを停めて写真を一枚。
判例集では何度も見てきた「東芝柳町工場」という名前ですが、実際にその場所まで来たのは初めてです。
「ここだったのか」
少し不思議な感じがします。
東芝柳町工場事件とは
ここで、判例の話を少しだけ。
東芝柳町工場事件では、期間を2か月とする臨時工の労働契約が何度も更新された後、会社から更新を拒否されたことが問題になりました。
「契約期間が満了したのだから、それで終了」
と単純に考えてよいのか。
そこが争われました。
最高裁判所は昭和49年7月22日、契約更新の実態などから、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態にある場合には、雇止めについても解雇に関する法理を類推して判断すべきだ、という考え方を示しました。
その後の判例とともに形成された「雇止め法理」の代表的な判例です。
現在では、こうした判例によって形成された雇止め法理が、労働契約法第19条に規定されています。
つまり、
「契約書に期間が書いてあるから、満了したら必ず終了できる」
とは限りません。
これまで何回更新してきたのか。
更新時にどんな説明をしてきたのか。
実際にはどのような運用だったのか。
こうした事情も確認する必要があります。
今でも、
「何度も契約更新してきた社員ですが、次回は更新しないことにしたい」
という相談を受けることがあります。
50年以上前、この川崎の工場で起きた出来事が、今の会社の雇用管理にもつながっているわけです。
せっかくなので、もう一つの東芝へ
柳町まで来たので、そのまま川崎駅西口へ。
もう一つ、昔の東芝があった場所です。
旧東芝堀川町工場。
現在は、ラゾーナ川崎プラザなどがあるエリアになっています。
【写真:現在の川崎駅西口・旧東芝堀川町工場周辺】
こちらは、私は工場があった頃を覚えています。
今の川崎駅西口しか知らない人には想像しにくいかもしれませんが、以前は駅のすぐそばに東芝の大きな工場がありました。
現在のラゾーナ川崎プラザなどは、その旧工場跡地に開発されたものです。
工場があった頃を知っているだけに、今ここを走ると少し妙な感じがします。
駅前に大きな工場があった頃と、商業施設や高層住宅が並ぶ現在。
街は、本当に変わりました。
判例は残る。現場は変わる。
「東芝柳町工場事件」という名前は、これからも労働法の本に残っていくでしょう。
でも、その工場はもうありません。
判例を読むだけなら、
「有期契約の反復更新と雇止め」
という法律の話です。
ところが実際にその場所へ行ってみると、
ここに工場があって、
ここで人が働いていて、
その中で起きた出来事が裁判になった。
そんな当たり前のことを、改めて感じました。
判例は残る。現場は変わる。
法律の勉強で何度も見てきた場所を、バイクで実際に訪ねてみる。
この「判例聖地巡礼」、意外と面白いかもしれません。
そして、この日の散歩ツーリングはまだ終わりません。
川崎駅から、今度は海側へ。
次は、川崎区夜光にある「日本食塩製造」を目指します。
「夜光」という地名にも、ちょっと面白い由来がありました。
そしてもちろん、最後は法律だけでは終わりません(笑)。
参考資料
・最高裁判所第一小法廷 昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)
・労働契約法第19条
・厚生労働省「『雇止め法理』の法定化(労働契約法第19条)」
・キヤノン株式会社・株式会社東芝「東芝柳町事業所土地の売買について」
・三井不動産株式会社「LAZONA(ラゾーナ)川崎 着工」


