育休復帰後に元の職場へ戻さないと違法になるのか【2026年版】

桐生英美

桐生英美

テーマ:人事トラブル

育児休業から復帰する社員を、元の職場に戻さないといけないのか


「育休から戻ってくる社員がいます。以前の仕事は、すでに後任者が担当していて、今はその体制でうまく回っています。必ず元の職場に戻さないといけないのでしょうか」

このような相談を受けることがあります。

中小企業では、育児休業に入る社員がいると、その仕事を誰かが引き継がなければなりません。
後任者が仕事に慣れ、職場としては新しい体制で落ち着いている。
そこへ育休復帰者が戻ってくる。

会社としては、決して意地悪をしたいわけではありません。
ただ、元の仕事をそのまま空けておくことが難しい場合もあります。

最初に結論をお伝えすると、育児休業から復帰する社員については、原則として、原職または原職相当職に復帰させるよう配慮する必要があります。

ただし、どのような場合でも、休業前とまったく同じ仕事、同じ部署、同じ席に戻さなければならない、という意味ではありません。

会社の業務体制、本人の希望、勤務時間、業務内容、通勤事情などを踏まえて、実務上可能な配置を検討することになります。

育休復帰後の配置で問題になりやすい点


注意が必要なのは、育児休業を取ったことや、短時間勤務を希望したことを理由に、不利益な扱いをしたと受け取られるケースです。

たとえば、

「育休で長く休んだから、元の担当から外す」
「時短勤務だから、責任ある仕事は任せない」
「子どもが小さいから、本人に聞かずに軽い仕事に変える」

このような対応は、トラブルになりやすいです。

会社側にそのつもりがなくても、本人から見ると、育休取得や育児を理由に不利な扱いを受けたと感じることがあります。

一方で、会社にも事情があります。

後任者がすでに担当している。
短時間勤務では以前と同じ業務量を担当するのが難しい。
業務内容や組織体制が休業前と変わっている。

このような場合、原職とまったく同じ形で戻すことが難しいこともあります。

大切なのは、会社が一方的に決めないことです。

2025年改正後は、本人の意向確認がより重要に


2025年10月から、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主の義務となっています。

会社は、本人や配偶者の妊娠・出産等の申出時や、子が3歳になる前の時期に、勤務時間帯、勤務地、制度の利用期間、業務量や労働条件の見直しなどについて、個別に意向を確認する必要があります。

育休復帰の場面でも、この考え方は非常に重要です。

復帰日。
勤務時間。
短時間勤務の希望。
残業の可否。
保育園の送迎時間。
担当できる業務量。
本人が不安に感じていること。

こうした点を面談で確認し、会社として対応できること、難しいことを整理していく必要があります。

もちろん、本人の希望をすべて受け入れなければならないわけではありません。
会社の業務上、どうしても難しいこともあります。

ただし、その場合でも、なぜ難しいのか、どのような代替案があるのかを説明することが大切です。

会社が確認すべきこと


育休復帰後の配置を検討するときは、少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

就業規則や育児・介護休業規程に、復帰後の配置についてどのように定めているか。
雇用契約書や労働条件通知書に、勤務地や職務内容がどのように書かれているか。
休業前に担当していた業務は何か。
現在、その業務を誰が担当しているか。
本人はどのような働き方を希望しているか。
会社として、どの範囲まで対応できるか。

ここを確認しないまま、
「もう席がないから別の仕事で」
「時短だから、この業務は無理」
と決めてしまうと、後から説明が難しくなります。

特に、賃金、役職、評価、勤務地に不利益が出る場合は慎重な判断が必要です。

管理職の一言にも注意


育休復帰後のトラブルは、正式な辞令だけで起きるわけではありません。

管理職の何気ない一言が、本人の不信感につながることがあります。

「育休を取ったからポジションがなくなった」
「時短勤務の人には任せにくい」
「子どもが小さいと急に休むから困る」

このような言い方は避けるべきです。

会社の事情を伝えることは必要です。
ただし、育休を取ったことや子どもがいることを理由に本人を責めるような伝え方は、ハラスメントや不利益取扱いの問題につながる可能性があります。

まとめ


育児休業から復帰する社員については、原職または原職相当職への復帰を基本に考える必要があります。

ただし、会社の業務体制や本人の勤務時間によっては、まったく同じ仕事に戻すことが難しい場合もあります。

その場合でも、会社が一方的に配置を決めるのではなく、本人の意向を確認し、会社の事情を説明し、可能な対応を検討することが大切です。

育休復帰後の配置は、単なる人員配置の問題ではありません。
本人の働き続けやすさ、周囲の社員の納得感、会社の説明責任が問われる場面です。

育児・介護休業規程や復帰面談の運用が古いままになっている会社は、2025年改正の内容も踏まえて、一度、現在の規程と実際の運用が合っているか確認しておくと安心です。

※本記事は、筆者の労務経験に基づき再構成した一般的な実務整理であり、個別企業の状況により最適な対応は異なります。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

桐生英美
専門家

桐生英美(社会保険労務士)

日本経営サポート株式会社

民間企業での人事経験25年、社労士登録30年。労基署対応、労務トラブル、ハラスメント・カスハラ、問題社員対応を、経営と法令の両面から現場目線で整理し、中小企業の判断と実務対応を支援します。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

中小企業の経営を支える人事総務コンサルタント

桐生英美プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼