売り込むほど売れない。選ばれる会社は信頼を積み上げている【中小企業のための低予算マーケティング戦略4】
経営者が問題を見誤る理由
~木ではなく森を見るために~
前編では、
売上低下や問い合わせ減少といった現象を見て、
「集客が問題だ」
と考えてしまう経営者が少なくないこと。
しかし実際には、
利益構造
顧客構成
商品設計
組織運営
などに原因が隠れている場合があることをお話しました。
今回はもう一歩踏み込んで、
なぜ経営者は問題を見誤るのか
について考えてみたいと思います。
私たちは「結果」を見ている
経営者は日々、多くの数字と向き合っています。
売上。
利益。
受注件数。
問い合わせ件数。
客数。
離職率。
これらはすべて重要な指標です。
しかし、ここで忘れてはならないことがあります。
それは、
数字は原因ではなく結果である
ということです。
例えば、
売上が下がった。
これは結果です。
問い合わせが減った。
これも結果です。
社員が辞めた。
これも結果です。
しかし人は、
目の前に見えている結果を原因だと思いやすい
という特徴があります。
だからこそ、
売上が下がったから集客だ。
社員が辞めたから採用だ。
利益が出ないから売上を増やそう。
という発想になりがちなのです。
経営者ほど「現象」に引っ張られる
少し意外に聞こえるかもしれません。
実は、
経験豊富な経営者ほど現象に引っ張られる
ことがあります。
なぜなら、
現場をよく知っているからです。
日々の変化に敏感だからです。
だからこそ、
問い合わせが減った。
主要顧客が減った。
売上が落ちた。
という変化を強く感じます。
そして、
何とかしなければ
という思いから、すぐに対策を打とうとします。
しかし、
問題を特定する前に対策を打つ
ことは、
診断前に薬を飲むようなものです。
たまたま当たることもあります。
しかし、多くの場合は遠回りになります。
木を見る経営と森を見る経営
私は経営を考えるとき、
「木を見る経営」
と
「森を見る経営」
という表現を使うことがあります。
木を見る経営とは、
個別の問題だけを見る状態です。
売上が下がった。
広告を出そう。
社員が辞めた。
採用しよう。
問い合わせが減った。
SNSを強化しよう。
一見すると正しそうです。
しかし、
森を見る経営は違います。
なぜ売上が下がったのか。
なぜ社員が辞めたのか。
なぜ問い合わせが減ったのか。
その背景にある構造を見ようとします。
そして多くの場合、
原因は一つではありません。
複数の要素が絡み合っています。
本当の原因は「構造」にある
経営コンサルタントとして現場に入ると、
問題の背後にある構造を見るようにしています。
例えば、
売上が伸びない。
その背景には、
既存顧客への依存。
利益率の低下。
商品力の陳腐化。
営業活動の属人化。
人材不足。
情報共有不足。
などが複雑に絡み合っていることがあります。
つまり、
問題は点ではなく線
なのです。
しかし人は、
目の前に見える一つの点だけを解決しようとしてしまいます。
だから同じ問題が何度も繰り返されるのです。
「なぜ」を繰り返す
問題の本質を見つけるために有効なのが、
「なぜ」
を繰り返すことです。
売上が下がった。
なぜか。
受注件数が減った。
なぜか。
見積提出数が減った。
なぜか。
既存顧客からの相談が減った。
なぜか。
担当者が退職した。
なぜか。
引き継ぎ体制がなかった。
なぜか。
教育の仕組みがなかった。
なぜか。
このように掘り下げていくと、
最初に見えていた問題とは全く違う場所にたどり着くことがあります。
そしてそこに、本当の原因が隠れています。
解決策を急ぐほど遠回りになる
経営者は決断する立場です。
だからこそ、
早く答えを出したい
という気持ちがあります。
しかし、
問題発見より問題解決を急ぐ
と危険です。
例えば、
売上が下がった。
広告を出した。
一時的に問い合わせは増えた。
しかし利益は改善しない。
数か月後にまた同じ問題が起きる。
こうしたことは珍しくありません。
なぜなら、
根本原因に手を付けていないからです。
経営において、
最も高価なコストは間違った対策
なのかもしれません。
コンサルタントの役割とは何か
私は経営コンサルタントとして、
「答えを教える人」
ではないと思っています。
むしろ、
本当の問題を一緒に探す人
だと考えています。
なぜなら、
正しい答えは問題が分かって初めて見えてくるからです。
問題を見誤れば、
どれだけ優秀な解決策も意味を持ちません。
逆に、
問題が正しく見えれば、
解決策は意外とシンプルなこともあります。
社長、それは本当にマーケティングの問題ですか?
この前後編を通じてお伝えしたかったことがあります。
それは、
マーケティングを否定することではありません。
広告も必要です。
SNSも重要です。
ホームページも欠かせません。
しかし、
それらは経営全体の一部
に過ぎません。
売上が伸びない。
問い合わせが減った。
利益が出ない。
そんなときこそ、
「社長、それは本当にマーケティングの問題ですか?」
と自分自身に問いかけてみてください。
もしかすると、
本当の課題は別の場所にあるかもしれません。
最後に
経営とは問題解決の仕事だと言われます。
確かにその通りです。
しかし私は、
経営とは問題発見の仕事
でもあると思っています。
問題を見つける。
本質を見抜く。
構造を理解する。
そして限られた経営資源を、最も効果的な場所へ投入する。
それが経営者の役割です。
木を見るだけではなく、
森を見る。
目の前の現象だけではなく、
その背後にある構造を見る。
その視点を持つことができれば、
経営判断は大きく変わります。
そして多くの場合、
会社を変えるきっかけは、
新しい手法ではなく、
問題の見方を変えること
から始まるのです。


