経営者ヒアリングの本当の意味【コンサルの視点17】

私は社歌集制作サービスの中で、
「掲げる理念から、口ずさめる理念へ」
という言葉を使っています。
すると時々、
「理念を口ずさむとは、どういうことですか?」
という質問をいただきます。
確かに、普通に考えれば少し不思議な表現かもしれません。
もちろん、社員全員が毎日社歌を歌っている状態を意味しているわけではありません。
私が言いたいのは、
理念が特別なものではなく、日常の言葉になっている状態です。
例えば、
「うちらしいよね」
「それは会社の考え方と合っているね」
「今回はこの価値観を優先しよう」
そんな会話が自然に出てくる状態です。
理念が額縁の中に飾られているだけではなく、日々の判断や行動の中で使われている。
それが「口ずさめる理念」です。
反対に、多くの会社では理念が遠い存在になっています。
ホームページには載っている。
朝礼でも唱和している。
しかし、普段の会話には出てこない。
会議でも使われない。
判断基準としても機能していない。
こうなると、理念は存在していても、実質的には存在していないのと同じです。
なぜなら、人は使わない言葉を忘れてしまうからです。
これは理念に限った話ではありません。
日常的に使う言葉ほど、自分の価値観や行動に影響を与えます。
だからこそ、本当に大切なのは「覚えているか」ではなく、
「使っているか」
なのです。
私は経営支援の現場で、
「理念を浸透させたい」
という相談をよく受けます。
しかし、そのときに考えるべきことは、
どうやって覚えてもらうかではありません。
どうすれば使われるようになるかです。
人は、自分に関係のある言葉しか使いません。
だから、理念も社員の日常と結びついていなければなりません。
採用の場面で。
お客様対応の場面で。
クレーム対応の場面で。
新しい挑戦をするときに。
その都度、
「私たちは何を大切にする会社なのか」
を確認できる状態が理想です。
その積み重ねによって、理念は少しずつ組織の文化になっていきます。
実は、企業文化というものも、突き詰めれば言葉の集合体です。
どんな言葉が日常的に使われているのか。
どんな言葉が評価されるのか。
どんな言葉が語り継がれるのか。
それが組織の空気をつくります。
だから私は、
理念を作ることよりも、
理念を使うことの方が大切だと思っています。
そして、使われる理念は、自然と口に出るようになります。
まるでお気に入りの歌のフレーズを口ずさむように。
理念が口ずさめる状態とは、
理念が暗記されている状態ではありません。
理念が、その会社で働く人たちの言葉になっている状態なのです。
次回は、「AIはなぜ『参謀』にすべきなのか」というテーマで、少し視点を変えてお話ししたいと思います。


