経営者ヒアリングの本当の意味【コンサルの視点17】

経営コンサルタントという仕事をしていると、多くの会社で決算書や試算表を見る機会があります。
売上、利益、原価率、人件費率、資金繰り。
どれも経営には欠かせない数字です。
しかし、私は数字を見て、すぐに経営判断をすることはありません。
なぜなら、数字は「答え」ではなく、「問い」を生み出すものだと考えているからです。
例えば、売上が前年より落ちていたとします。
それだけを見れば、「売上を増やしましょう」という話になります。
しかし、その背景を聞いてみると、利益率の低い仕事をあえて減らした結果だったということがあります。
反対に、売上が伸びている会社でも、利益がほとんど残っていないことがあります。
数字だけを見れば好調に見えても、現場では社員が疲弊し、社長も休みなく働いているかもしれません。
数字は事実を教えてくれます。
けれど、その理由までは教えてくれません。
だから私は、数字を見たときには必ず経営者に質問をします。
「この月は何がありましたか。」
「なぜ、この判断をされたのですか。」
「この数字になって、一番うれしかったことは何ですか。」
数字をきっかけに会話を重ねていくと、その会社ならではの事情や、経営者の考え方が見えてきます。
同じ利益率でも、積極的な投資の結果なのか、単なるコスト増なのかでは意味がまったく違います。
同じ赤字でも、未来への挑戦なのか、経営の危険信号なのかでは、取るべき行動も変わります。
数字には感情がありません。
だからこそ、その数字の背景にある人の思いや判断を理解することが大切なのです。
私は、数字に強い経営者ほど、「数字だけで判断しない」ことを知っているように思います。
数字を軽視するという意味ではありません。
むしろ、数字を正しく生かすためには、その数字が生まれた背景を理解することが欠かせないのです。
経営コンサルタントとしての私の仕事は、数字を分析することだけではありません。
数字をきっかけに対話を重ね、その会社の本当の姿を一緒に見つけていくことです。
決算書には、会社の一年が記録されています。
けれど、そこに書かれていないこともたくさんあります。
経営者が迷いながら下した決断。
社員が支えてくれた日々。
新しい挑戦への期待や不安。
そうした一つひとつが積み重なって、最後に数字となって表れます。
だから私は、数字を見るときには、その先にいる人を見ることを忘れないようにしています。
数字は経営を語る大切な言葉です。
しかし、それは結論ではありません。
本当の対話は、数字を見た、その先から始まるのです。


