お客様が買っているのは、商品ではない【中小企業のための低予算マーケティング3】
売上が伸びない会社が最初に疑うべきこと
~その問題、本当に集客不足ですか?~
「最近、問い合わせが減っているんです。」
「売上が伸び悩んでいて……。」
「もっとSNSを頑張った方がいいのでしょうか。」
経営相談の現場で、私はこうしたご相談を頻繁に受けます。
その際、多くの経営者が最初に口にする言葉があります。
「集客が課題です。」
確かに、売上が伸びないとき、問い合わせが減ったとき、新規顧客が増えないとき、集客を疑うのは自然なことです。
しかし私は、そんなときこそ一度立ち止まって、こう問いかけるようにしています。
「社長、それは本当にマーケティングの問題ですか?」
今回は、経営者が陥りやすい「問題の見誤り」について考えてみたいと思います。
経営者は目に見える現象を原因だと思いやすい
人は誰でも、目に見えるものに意識を向けます。
売上が下がる。
問い合わせが減る。
来店客数が減る。
見積依頼が減る。
こうした現象は非常に分かりやすいため、
「原因は集客不足だ」
と考えてしまいます。
しかし、実際にはそれらは原因ではなく結果であることが少なくありません。
例えば、
風邪をひいたときに熱が出ます。
しかし熱は原因ではありません。
原因は体内で起きている別の問題です。
経営も同じです。
売上低下という現象の背後には、別の原因が隠れていることがあります。
売上が落ちた原因は本当に集客なのか
例えば、
売上が前年比で10%下がった会社があるとします。
多くの経営者は、
広告を出そう。
SNSを強化しよう。
ホームページを改善しよう。
と考えます。
しかし詳しく分析すると、
既存顧客の購入頻度が下がっていた。
主要顧客が高齢化していた。
利益率の低い案件ばかり受注していた。
ということがあります。
この場合、
問題は集客ではありません。
顧客構成や商品構成の問題です。
もし原因を見誤ったまま広告費を投入しても、本質的な解決にはなりません。
「忙しいのに儲からない会社」の正体
私はこれまで、多くの中小企業を支援してきました。
その中で非常によく見かけるのが、
忙しいのに利益が出ない会社
です。
社員は忙しい。
現場もフル稼働。
売上も決して悪くない。
しかし利益が残らない。
この状態になると、
「もっと売上を増やさなければ」
と考えがちです。
ところが実際には、
利益率の低い仕事が多い。
見積もり基準が甘い。
値上げができていない。
作業効率が悪い。
といった問題が隠れています。
つまり、
必要なのは集客ではなく利益構造の改善
なのです。
マーケティングの問題に見える組織の問題
もう一つよくある例があります。
問い合わせはある。
受注もできている。
しかし売上が伸びない。
こういうケースです。
詳しく話を聞くと、
見積提出が遅い。
顧客対応にばらつきがある。
情報共有ができていない。
担当者ごとに品質が違う。
ということがあります。
この場合、
マーケティングは機能しています。
お客様は来ています。
しかし組織が受け止め切れていないのです。
つまり、
問題は集客ではなく組織運営
にあります。
「もっと集客したい」が危険な場合もある
経営者の方にこの話をすると驚かれることがあります。
実は、
集客を増やしてはいけない会社
も存在するのです。
例えば、
既存顧客への対応で手一杯。
社員不足が深刻。
品質維持が難しい。
納期が限界。
という状態です。
このときに新規顧客を増やすとどうなるでしょうか。
現場はさらに疲弊します。
品質が低下します。
クレームが増えます。
既存顧客が離れます。
結果として、
会社全体の競争力が落ちてしまいます。
つまり、
集客不足に見える問題が、実は供給能力の問題であることもあるのです。
なぜ経営者はマーケティングに原因を求めるのか
では、なぜ私たちはマーケティングを疑いやすいのでしょうか。
理由は単純です。
マーケティングは分かりやすいからです。
広告。
SNS。
ホームページ。
チラシ。
営業活動。
目に見えます。
改善策も思いつきやすい。
一方で、
組織の問題。
商品設計の問題。
利益構造の問題。
顧客構成の問題。
これらは見えにくく、時間もかかります。
だから人は、
見えるところを直そうとする
のです。
しかし経営において本当に重要なのは、
見えない部分を見ること
です。
問題を解決する前に、問題を特定する
経営相談の現場では、
解決策よりも先に行うことがあります。
それは、
本当の問題は何か
を探すことです。
売上が下がっている。
ではなぜか。
問い合わせが減っている。
ではなぜか。
利益が残らない。
ではなぜか。
その問いを繰り返していくと、
最初に見えていた問題とは違う場所にたどり着くことがあります。
そして多くの場合、
本当の問題が見えた瞬間に、
打つべき手も見えてきます。
マーケティングは経営の一部でしかない
私はマーケティングそのものを否定しているわけではありません。
むしろ重要だと思っています。
しかし、
マーケティングは経営全体の一部
です。
売上だけを見れば、
マーケティングが原因に見える。
しかし会社全体を見ると、
別の場所に原因があることも多い。
だからこそ、
経営者には広い視点が必要です。
木を見るだけではなく、
森を見る視点です。
最後に
売上が伸びない。
問い合わせが減った。
集客に悩んでいる。
そんなときこそ、一度立ち止まって考えてみてください。
その問題は本当にマーケティングの問題でしょうか。
もしかすると、
商品設計かもしれません。
利益構造かもしれません。
組織運営かもしれません。
顧客構成かもしれません。
そして本当の問題が見えたとき、
初めて本当の解決策が見えてきます。
次回の後編では、
なぜ経営者は問題を見誤るのか
について掘り下げていきます。
目の前の現象に振り回されず、本質的な課題を見抜くために必要な視点とは何か。
「木ではなく森を見る」
というテーマから考えてみたいと思います。


