社員の温度差はなぜ生まれるのか【コンサルの視点7】

「社歌」と聞くと、少し古いものを想像する方もいるかもしれません。
かつては多くの企業で歌われていたものの、最近では耳にする機会も少なくなりました。
そのため、私が「社歌集制作サービス」についてお話しすると、
「今の時代に社歌ですか?」
と驚かれることがあります。
そのたびに私は、
「実は、今の時代だからこそ意味があるのです」
とお答えしています。
社歌が有効な理由は、音楽だからです。
少し不思議に聞こえるかもしれませんが、人は文章よりも歌の方を覚えています。
学生時代に覚えた校歌。
子どもの頃に聞いたCMソング。
何十年も前の曲なのに、歌詞が自然と出てくることがあります。
一方で、企業理念を正確に暗唱できる人はどれくらいいるでしょうか。
もちろん理念は大切です。
しかし、理念は「理解するもの」であり、歌は「記憶するもの」です。
ここに大きな違いがあります。
企業が理念を作る理由は、社員の行動や判断の基準を共有するためです。
ところが、理念が社員の頭の中に入っていなければ、判断基準として機能しません。
そこで音楽の力が生きてきます。
言葉に旋律が加わることで、記憶に残りやすくなる。
そして繰り返し耳にすることで、自然と浸透していく。
これは理屈ではなく、人間の特性です。
さらに、音楽には感情を動かす力があります。
理念の文章を読んで感動する人は多くありません。
しかし、自分たちの歴史や想いが歌になり、メロディーに乗って流れてきたとき、
「この会社で働いていてよかった」
「自分たちはこういう会社だったんだ」
そんな感情が生まれることがあります。
私はこれまで、多くの経営者の話を伺ってきました。
その中で感じるのは、どの会社にも必ず物語があるということです。
創業の苦労。
乗り越えてきた危機。
お客様との出会い。
社員との絆。
しかし、その物語は意外と共有されていません。
経営者の頭の中にはあるのに、社員には伝わっていない。
それは非常にもったいないことです。
社歌を作る過程では、まずその物語を掘り起こします。
何を大切にしてきたのか。
どこへ向かいたいのか。
なぜこの仕事をしているのか。
そして、それを言葉にし、音楽という形にしていきます。
私は社歌制作を「音楽制作」だとは考えていません。
本質は、企業の価値を再発見し、共有するプロセスです。
歌は、そのための手段の一つに過ぎません。
前回のコラムで、私は「経営を言語化する技術」について書きました。
社歌は、その言語化をさらに一歩進めたものです。
言葉を、記憶に残る形にする。
理念を、口ずさめる形にする。
それが社歌の持つ力だと思っています。
次回は、音楽が組織に与える影響について、もう少し掘り下げてみたいと思います。


