ビジョンは「作るもの」ではない【コンサルの視点18】

経営者と話をしていると、
「頭の中では分かっているんだけど、うまく説明できない」
という言葉をよく耳にします。
これは決して珍しいことではありません。
むしろ、多くの経営者が抱えている悩みの一つです。
会社のことを毎日考えている。
方向性も見えている。
何を大切にしたいかも分かっている。
それでも、それを言葉にしようとすると難しい。
なぜでしょうか。
理由の一つは、経営そのものが複雑だからです。
経営者の頭の中には、
お客様のこと。
社員のこと。
資金のこと。
将来のこと。
さまざまな情報が同時に存在しています。
しかも、それらは互いに影響し合っています。
そのため、頭の中では理解できていても、それを順序立てて説明するのは簡単ではありません。
しかし、経営において言語化は非常に重要です。
なぜなら、人は言葉によって理解し、判断し、行動するからです。
どれだけ良い考えがあっても、
言葉になっていなければ共有できません。
社員にも伝わりません。
取引先にも伝わりません。
そして何より、自分自身の判断基準としても使えません。
私は、言語化とは「難しいことを難しく説明すること」ではないと思っています。
むしろ逆です。
複雑なものを、シンプルに表現すること。
それが言語化です。
例えば、
「売上を伸ばしたい」
という言葉があります。
もちろん間違いではありません。
しかし、それだけでは行動につながりません。
なぜ伸ばしたいのか。
どんなお客様に価値を届けたいのか。
その結果、どんな会社になりたいのか。
そこまで言葉にできて初めて、方向性が見えてきます。
また、言語化にはもう一つ大きな効果があります。
それは、「自分自身の考えを整理できること」です。
言葉にしようとすると、
曖昧だった部分が見えてきます。
矛盾にも気づきます。
本当に大切なことと、そうでないことが分かれてきます。
つまり、言語化とは伝えるためだけの作業ではありません。
考えるための作業でもあるのです。
実際、経営者との対話の中で、
「話しているうちに、自分が何を考えていたのか分かりました」
と言われることがあります。
これは、言葉にすることで思考が整理された瞬間です。
経営には、正解がありません。
だからこそ、自分なりの判断基準が必要になります。
そして、その判断基準は言葉によって形になります。
経営を言語化するとは、
会社の未来を言葉にすること。
自分の考えを整理すること。
そして、組織の共通言語をつくることでもあります。
もし今、
「何となく考えているけれど、うまく伝えられない」
そんなことがあるなら、一度紙に書き出してみてください。
完璧な文章である必要はありません。
言葉にすることから、経営は少しずつ整理されていくのです。


