「いい会社」のはずなのに辞めていく理由【コンサルの視点8】

経営者と話をしていると、「何から手を付ければいいでしょうか」という相談を受けることがあります。
会社には、いつも課題が山積みです。
売上を伸ばしたい。
採用も進めたい。
ホームページも直したい。
DXも進めたい。
社員教育も必要だ。
どれも間違いではありません。
むしろ、どれも必要なことです。
しかし、経営では「何をやるか」以上に、「どの順番でやるか」が結果を大きく左右します。
例えば、社員が定着しない会社があるとします。
そこで採用活動を強化すれば、一時的には応募が増えるかもしれません。
しかし、辞める原因が職場環境や教育体制にあるなら、新しい社員はまた同じように辞めてしまいます。
採用が失敗したのではありません。
順番が違っていただけです。
また、ホームページを作り替えたいという相談も少なくありません。
もちろん、ホームページは会社の顔です。
しかし、「誰に」「何を」「なぜ選ばれるのか」が整理されていないままデザインだけを変えても、成果は大きく変わりません。
先に考えるべきなのは、会社の価値を言葉にすることです。
ホームページは、その後の話なのです。
経営改善とは、積み木を積み上げることによく似ています。
土台が傾いたまま二段目を積めば、いずれ崩れます。
一段目を飛ばして三段目を積むことはできません。
どんなに優れた施策でも、順番を間違えれば期待した成果にはつながらないのです。
私は経営相談の場で、すぐに新しい施策を提案することはあまりありません。
それよりも、「今、一番最初に整えるべきものは何か」を一緒に考えます。
経営者にとっては、少し遠回りに感じることもあるでしょう。
「まずは広告を出しましょう。」
「まずはAIを導入しましょう。」
「まずは補助金を活用しましょう。」
そのような提案のほうが分かりやすく、すぐに動いた気にもなります。
しかし、本当に必要なのは、「まずは何か」ではなく、「まずは何を整えるべきか」を見極めることです。
経営は、知識の量で決まるものではありません。
経営書を何十冊読んでも、セミナーに何度参加しても、順番を間違えれば成果には結び付きません。
反対に、派手な知識がなくても、やるべきことを正しい順番で積み重ねていけば、会社は着実に前へ進んでいきます。
私は、経営コンサルタントとは、新しい知識を教える人ではなく、「今、この会社が次に踏み出すべき一歩」を一緒に見つける仕事だと思っています。
だからこそ、目の前の課題を一つずつ整理しながら、焦らず順番を整えていく。
その積み重ねが、振り返ったときに「会社が変わった」と実感できる、一番確かな道なのだと考えています。


