バリューチェーン分析で利益の漏れを見つける【経営者のためのフレームワーク活用術6】

経営者であれば、
未来を知りたいと思うことは自然なことです。
景気はどうなるのか。
金利はどうなるのか。
人口はどうなるのか。
AIはどこまで進化するのか。
円高になるのか。
円安になるのか。
補助金制度は続くのか。
税制は変わるのか。
誰もが気になります。
だからこそ、
PEST分析を学ぶと、
「未来を予測するためのフレームワークなのだ」
と思いがちです。
しかし実際には違います。
未来は予測できない
まず前提として、
未来は予測できません。
もちろん予測しようとすることはできます。
しかし、
正確に当てることはできません。
例えば5年前、
現在の生成AIの急速な普及を予測できた人はどれだけいたでしょうか。
10年前、
現在の働き方改革やリモートワークの普及を予測できたでしょうか。
20年前、
スマートフォンがここまで社会を変えると想像できたでしょうか。
振り返れば、
未来を変えた出来事の多くは予測不能でした。
だからこそ、
経営者が目指すべきは
「未来を当てること」
ではありません。
「どんな未来が来ても対応できる状態をつくること」
です。
PEST分析とは何か
PEST分析は、
外部環境の変化を4つの視点で整理します。
Politics(政治)
Economy(経済)
Society(社会)
Technology(技術)
です。
例えば現在であれば、
政治
・最低賃金引上げ
・各種規制の変化
・補助金政策
・GXやDX政策
経済
・物価上昇
・金利上昇
・円相場の変動
・人件費上昇
社会
・人口減少
・少子高齢化
・価値観の多様化
・働き方の変化
技術
・生成AI
・自動化
・クラウド化
・IoT
などが考えられます。
重要なのは、
これらを当てることではありません。
「変化が起きている」
という事実を認識することです。
変化は脅威ではなく前提である
経営者の中には、
変化を脅威として捉える方もいます。
人口減少が心配だ。
AIが心配だ。
人手不足が心配だ。
確かにその気持ちはよく分かります。
しかし、
人口減少は止まりません。
少子高齢化も進みます。
AIも進化します。
つまり、
変化そのものはコントロールできないのです。
経営者がコントロールできるのは、
変化への対応だけです。
だからPEST分析は、
脅威探しのために行うものではありません。
環境変化を前提として、
どのように適応するかを考えるために行うものなのです。
未来を考える会社と考えない会社
私は経営支援の現場で、
将来の環境変化を考える会社と、
考えない会社の差を強く感じます。
考えない会社は、
目の前の仕事に追われます。
忙しい。
人が足りない。
売上が欲しい。
毎日がその繰り返しです。
もちろん重要です。
しかし、
5年後や10年後を考える時間がありません。
一方で、
成長する会社は違います。
今の仕事をしながら、
次の変化も見ています。
採用環境はどうなるか。
顧客はどう変わるか。
業界はどう変わるか。
技術はどう変わるか。
未来を当てているわけではありません。
未来を想像しているのです。
この違いは非常に大きいと思います。
人口減少は本当に脅威なのか
例えば人口減少。
多くの経営者は脅威と考えます。
確かに市場は縮小します。
人材確保も難しくなります。
しかし、
見方を変えることもできます。
人口減少によって、
省人化技術の需要は高まります。
高齢者向けサービスも拡大します。
地方移住ニーズも生まれます。
外国人雇用も増えます。
つまり、
脅威であると同時に機会でもあるのです。
PEST分析で重要なのは、
変化を善悪で判断しないことです。
変化そのものを見ることです。
AIも同じである
生成AIについても同じことが言えます。
AIに仕事を奪われる。
そう考える人もいます。
一方で、
AIによって生産性を高める人もいます。
実際、
同じ環境変化に直面していても、
結果は大きく異なります。
違いは何でしょうか。
変化の有無ではありません。
変化への向き合い方です。
PEST分析とは、
その向き合い方を考えるための材料集めとも言えます。
経営者に必要なのは予言者ではなく探検家の視点
未来を語る人はたくさんいます。
専門家もいます。
評論家もいます。
予測レポートもあります。
しかし、
どれだけ立派な予測でも、
外れることがあります。
だから私は、
経営者は予言者になる必要はないと思っています。
むしろ探検家に近い。
どんな未来が来るのかは分からない。
しかし、
変化の兆しを観察する。
準備する。
柔軟に方向を変える。
その方が現実的です。
PEST分析は、
未来を当てるための地図ではありません。
未来を探索するためのコンパスなのです。
PEST分析の本当の価値
PEST分析の価値は、
外部環境を整理することではありません。
視野を広げることです。
日々の仕事に追われていると、
どうしても社内ばかり見てしまいます。
売上。
利益。
採用。
現場。
もちろん重要です。
しかし、
会社の外では大きな変化が起きています。
社会が変わる。
技術が変わる。
制度が変わる。
価値観が変わる。
その変化に気付くための視点を与えてくれる。
それがPEST分析の本質だと私は考えています。
そして、
未来を考える経営者と、
未来を考えない経営者の差は、
時間とともに大きくなります。
未来は予測できません。
しかし、
未来への備えはできます。
PEST分析は、
その備えを始めるためのフレームワークなのです。
次回は、
KPIとKGIについて取り上げます。
数字を管理することは大切です。
しかし、
数字は時として会社を間違った方向へ導くことがあります。
「KPIが会社を壊すとき」
という少し刺激的なテーマで、
数字との向き合い方について考えてみたいと思います。


