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SWOT分析は「強み探し」ではない【経営者のためのフレームワーク活用術2】

橋本貢

橋本貢

テーマ:経営者のためのフレームワーク活用術


経営計画書を作るとき。

補助金申請をするとき。

事業の方向性を考えるとき。

多くの場合、最初に登場するのがSWOT分析です。

SWOTとは、

Strength(強み)
Weakness(弱み)
Opportunity(機会)
Threat(脅威)

の頭文字を取ったものです。

自社の内部環境として「強み」と「弱み」を整理し、外部環境として「機会」と「脅威」を整理する。

経営を体系的に考えるうえで非常に優れたフレームワークです。

しかし私は、経営支援の現場でSWOT分析を見るたびに、ある共通した違和感を覚えることがあります。

それは、

「強み探し」

になってしまっているケースが非常に多いことです。

強み欄に書かれるもの

例えばSWOT分析を行うと、多くの企業で次のような内容が出てきます。

・創業50年の実績がある
・技術力が高い
・社員が真面目
・地域密着である
・顧客との関係が良好

一見すると、どれも立派な強みに見えます。

しかし、本当にそうでしょうか。

創業50年であることは、お客様にとって価値なのでしょうか。

技術力が高いことは、お客様が認識しているのでしょうか。

社員が真面目であることは、競合他社との差別化につながっているのでしょうか。

地域密着とは、具体的にどのような価値を生み出しているのでしょうか。

実はここに、SWOT分析最大の落とし穴があります。

自分たちが強みだと思っていることと、市場が強みとして評価していることは、必ずしも一致しないのです。

強みは社内で決まらない

私は経営者の方との面談で、

「御社の強みは何ですか?」

とお聞きすることがあります。

すると多くの場合、

「品質です」

「技術力です」

「対応力です」

という答えが返ってきます。

もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。

しかし続けて、

「そのことを、お客様はどのように評価していますか?」

と質問すると、答えに詰まることがあります。

強みとは、自分で決めるものではありません。

市場との関係の中で決まるものです。

極端な話をすれば、

どれほど優れた技術を持っていても、お客様が求めていなければ価値にはなりません。

どれほど品質が高くても、その違いがお客様に伝わっていなければ選ばれる理由にはなりません。

逆に、

社内では当たり前だと思っていたことが、お客様から見れば圧倒的な強みになっていることもあります。

本当の強みは顧客の声の中にある

ある会社では、

社長自身は技術力こそが最大の強みだと考えていました。

しかし顧客インタビューを行ったところ、

評価されていたのは技術力ではありませんでした。

「電話するとすぐ来てくれる」

「無理な相談にも親身になってくれる」

「担当者が変わらないので安心できる」

という点だったのです。

社長にとっては当たり前のことでした。

しかし顧客にとっては、それが競合との決定的な違いになっていました。

つまり、

強みとは会社の中にあるものではなく、

顧客との関係性の中に存在するものなのです。

弱みは必ずしも克服しなくてよい

一方で、弱みについても誤解があります。

SWOT分析を行うと、

・人手不足
・営業力不足
・資金不足
・知名度不足

などが並びます。

しかし、ここでも考えなければならないことがあります。

その弱みは、本当に克服しなければならないのでしょうか。

例えば、

人手不足を解消しようとして採用を進めた結果、教育コストが増え、利益率が悪化することがあります。

営業力不足を補おうとして営業マンを増やした結果、固定費が膨らむことがあります。

弱みとは、

「改善すべきもの」

とは限りません。

「付き合い方を考えるもの」

である場合も少なくありません。

むしろ経営とは、

限られた資源の中で、

どの弱みを受け入れ、

どの弱みを克服し、

どの弱みを避けるのかを決める営みとも言えます。

機会と脅威は表裏一体

外部環境についても同様です。

近年、多くの企業がAIに注目しています。

AIは機会でしょうか。

それとも脅威でしょうか。

答えは、

どちらでもあります。

AIを活用して業務効率化を進める企業にとっては機会です。

一方で、従来型の業務が代替される企業にとっては脅威です。

人口減少も同じです。

市場縮小という脅威でもあります。

しかし競争相手も減る可能性があります。

人手不足を解決する新たなサービス需要も生まれます。

つまり、

機会と脅威は客観的に存在するものではありません。

自社の立ち位置によって見え方が変わるのです。

SWOT分析の本当の目的

では、SWOT分析は何のために行うのでしょうか。

それは、

強みを探すためではありません。

弱みを数えるためでもありません。

機会や脅威を一覧化するためでもありません。

本当の目的は、

「自社はどこで勝負するのか」

を考えることです。

強みがある。

機会もある。

だから何をするのか。

弱みがある。

脅威もある。

だから何をやめるのか。

経営者が意思決定するために行うのがSWOT分析です。

表を埋めることが目的ではありません。

意思決定することが目的なのです。

分析のための分析になっていないか

私はこれまで、

数多くのSWOT分析を見てきました。

立派な表が完成しているものもありました。

色分けされ、

図表も整えられ、

非常に見栄えの良い資料になっているものもあります。

しかし、

その後の経営判断につながっていないケースも少なくありません。

分析が目的になってしまうのです。

経営で重要なのは、

分析の質ではありません。

意思決定の質です。

SWOT分析は、そのための補助線に過ぎません。

だからこそ、

強みを並べる前に、

本当にお客様は何を評価しているのか。

弱みを書き出す前に、

本当に克服すべき課題なのか。

機会を探す前に、

自社はどこへ向かおうとしているのか。

を問い続ける必要があります。

SWOT分析とは、

会社を知るためのフレームワークではありません。

会社の未来を決めるためのフレームワークなのです。

次回は、3C分析を取り上げます。

顧客(Customer)

競合(Competitor)

自社(Company)

という有名なフレームワークですが、私は現場で使う際に、もう一つ加えるべき重要な視点があると考えています。

それは、

「経営者自身」

です。

なぜそれが重要なのか。

次回、詳しく考えていきたいと思います。

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橋本貢
専門家

橋本貢(経営コンサルタント)

しずおか経営サポート

表面的な課題ではなく、売上・組織・戦略の根本構造を見極め、本質的な打ち手を実行まで伴走支援します。経営者の意思決定に寄り添い、成果に直結する改善を行います。

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