烏瓜の青いあかり〜生薬の話「カロコン」
今、将棋の藤井聡太さんが竜王戦を戦っています。今回は、前回の竜胆(りゅうたん)に続き、竜がつく生薬「竜骨(りゅうこつ)」についてです。
先日、藤井さんが、王座戦に勝利し8冠になりました。竜王と名人が8冠のうちの特別な2つなので、藤井さんが7冠だった時は、竜王・名人と呼ぶのが正式だったそうです。免状は将棋連盟の会長と竜王と名人の3人が署名するのですが、竜王と名人が藤井さんなので、今、免状を申し込むと羽生善治日本将棋連盟会長と藤井さんの署名になっているそうです。写真は羽生さんが7冠達成した時のテレホンカード(使用済)です。羽生さんが7冠のころは叡王(えいおう)戦というタイトル戦がなかったため、7冠で全冠制覇でした。
竜骨は、大型哺乳類動物の化石化した骨で主に炭酸カルシウムからなります。不定形の塊または破片で外面は淡灰白色、質は重くて堅いけれどややもろく、粉砕して小片および粉末にして用います。少し赤みがかった内部の髄質は多数の細孔が縦走しているため水分を吸着しやすく、噛むと舌に付着し吸われるれるような感じがします。
鎮静剤として使われ、気分のふわふわしたものを落ち着かせる働きがあります。漢方では鎮静、収斂を目標に心悸亢進、精神不安、不眠などの症状に用います。 竜骨は、主成分が同じ炭酸カルシウムである牡蠣 (ぼれい) と働きは似ていますが、牡蠣とは異なり燐酸カルシウムを多量に含んでいるので固気にも働きます。 よく使われる漢方薬には、柴胡加竜骨牡蠣湯、桂枝加竜骨牡蠣湯があります。
今回は竜骨が含まれる漢方薬「柴胡加竜骨牡蠣湯」「桂枝加竜骨牡蠣湯」についてです。
柴胡加竜骨牡蠣湯は、 甲状腺機能が亢進しているような興奮しやすいものによく用いられます。体格がよくて体力のある人にこの証は多いです。 神経症、高血圧、 精神分裂病、不眠症などで胸がはって精神状態がもうろうとする、 物音や光に敏感で驚きやすく、驚けば動悸し、気苦労が多く、悪夢に悩まされるなど心的傾向の悩みが多い症状に用います。 これは五感の働きが病的に敏感になっている状態です。 構成は、 10味と比較的含まれている生薬は多いです。 柴胡、 半夏、生姜、 大棗、 人参は、 小柴胡湯の方意で胸脇苦満を治し、桂枝・茯苓、 竜骨・牡蠣は心頃、動悸を治します。 これに大黄が加わります。 桂枝茯苓は水気の逆行を下降し、 竜骨・牡蠣はふわふわした気を収斂し水血の凝堅を軟らかくして動悸を鎮め煩驚、煩躁を治します。
桂枝加竜骨牡蠣湯は7味から成り、桂枝湯(桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草)に竜骨・牡蠣を加えたものです。 体質は虚弱で疲れやすく、神経症や精神不安がある場合に用います。 のぼせてフラフラしたり、驚いて発汗したり、腹部に動悸があり、 下腹部が突っ張るような症状がみられます。 竜骨・牡蠣は、顕著な臍上動悸を鎮め、煩燥、動悸、不眠を鎮静します。 また、 固気に働く竜骨は桂枝と組んで、胸中に走り驚狂を鎮静します。 利水に働く牡蠣は、桂枝と組んで気の上衝を緩和、甘草と組んで神経症状を伴う胃腸障害を治します。 下腹部の腹直筋のひきつりは芍・甘草により緊張を緩め、腹痛、疼痛を治し、症状を改善します。