左右半身に症状が多い方に
骨がストレスから守ってくれる
ツクシの季節が終わり、スギナが生えてきました。スギナはトクサ科です。日本庭園で見かけることもあるトクサは小さな竹のようで、心惹かれませんか?トクサの表皮にはプラントオパールとよばれるケイ酸が含まれています。ガラス質でザラザラしているのでヤスリとして使われてきました。砥ぐ草なので、トクサは漢字で砥草や木賊と書きます。トクサは中が空洞ですが、プラントオパールのおかげで丈夫なのですね。
ツクシを採っている時に、トクサより細い植物を見つけていました。見つけた植物はイヌドクサのように思われます。麻黄(まおう)は昔からトクサに似ていると言われていましたが、本当に麻黄みたいだと思いました。麻黄は葛根湯などに含まれている薬草です。薬史学雑誌40(2)、41(1)によると、中国では地域的に麻黄の原植物としてイヌドクサを使用していた時期があり、輸入された麻黄の中にイヌドクサが混じっていたそうです。そのため江戸中期、イヌドクサが和産麻黄として使用されたそうです(間違って使われる過程で、節を去った木賊が発汗する作用が見いだされました)。しかし、当時を代表する学者の香川修庵、吉益東洞らが和産麻黄をはっきり否定して、日本における誤用は短期間で終息しました。
fight or flight
生物が危険から身を守る時、戦うか逃げるために適した身体状態になるように、心理的・生理的な反応が生じます。不安や恐怖を感じたり交感神経が興奮したりです。(交感神経が興奮すると)腎臓の上にある副腎から、アドレナリンやノルアドレナリンという物質が出て、血液にのって、気管や血管や心臓に命令を出します。命令をキャッチすると、交感神経がさらに興奮した状態になります。例えば気管は拡張して、体にたくさんの酸素を取り入れるようになり、闘争・逃走しやすくなります。麻黄には、エフェドリン(中枢興奮作用・発熱作用・気管支拡張作用あり)、プソイドエフェドリン(鎮痛作用・抗炎症作用あり)が含まれています。この2つの物質はアドレナリン、ノルアドレナリンとかたち(骨格)が似ているため、興奮剤として競技会(時)に禁止される薬物に指定されています。そのため、スポーツ選手は葛根湯を始めとする麻黄を含む漢方薬を服用できません。ドーピングのためなど服用が制限されないように、「エフェドリン系アルカロイドを含有しない葛根湯の開発研究」という研究があるのを知りました。マオウ属植物の中でアルカロイドを含有しない種や、イヌドクサが麻黄の代わりになるかという研究です。現在でも、中国の一部の地方ではイヌドクサを麻黄として利用していることを確認しているそうです。
調べているうちに、「闘争・逃走反応」の新しい研究結果を知りました。今まではアドレナリンの作用と考えられてきましたが、骨から放出されるオステオカルシンが引き起こすことが分かったそうです。研究チームは、「脊椎動物の骨は突然の危険から身を守るために進化した」という仮説を立て、マウスにストレスを与えたところ、オステオカルシンが急上昇し、その後、心拍数・体温・血糖値が上昇したのを確認しました。副腎を切除したマウスでも同じように反応し、恐怖に晒されていないマウスに大量のオステオカルシンを注射することで、ストレス反応を促すことに成功しました。そのことが、骨から放出されるオステオカルシンこそが、危険から身を守る「闘争・逃走反応」に関与しているといる証拠だそうです。
副腎より先に骨からの反応があるということは、イヌドクサが骨に対して作用することで麻黄の代わりになりうるのではないかと思えてなりません。ケイ素摂取量と骨の強さの研究で、ケイ素はカルシウム以上に骨を強くする可能性が高いそうです。イヌドクサを守るためのプラントオパールが、突然の危険から身を守るための骨を強くし、私たちを守ってくれるイメージが浮かびました。麻黄とイヌドクサのさらなる研究に期待したいですね。そして、骨が強くなれば身を守ってくれるので、エアーなわとびなどの運動をしたり、木槌で足の裏を叩いてみてくださいね。