末摘花に使う漢方〜生薬の話「紅花」
あじさいで有名な鎌倉の長谷寺で、あじさいをピンクにするために牡蠣の殻を使っているそうです。
あじさいは土の酸性度で色が変わるのは聞いたことがありますか?土が酸性だと青(水色)、土がアルカリ性だと赤(ピンク)になります。どうしてそうなるのでしょうか?あじさいのアントシアニンと、アルミニウムイオンと結合し、そこに助色素が反応すると青色になります。日本の国土はほとんどが酸性の土壌です。酸性の土だとアルミニウムがよく溶け、アルミニウムイオンになります。アルミニウムイオンになると根から吸収できるようになります。そのため日本では青(水色)のあじさいが多いのです。
長谷寺では水色だけでなく、ピンクのあじさいも咲いています。あじさいの花をピンクにするには、アルミニウムイオンを取り入れないように土をアルカリ性にする必要があります。土をアルカリ性にするために牡蠣の殻を使っているのをテレビで見ました。奈良の長谷寺と鎌倉の長谷寺のご本尊は、同じ楠から作られました。彫られた2体の観音像のうちの1つは奈良の長谷寺に安置されました。有縁の地で人々を救うようにと海に投げ入れられた観音像は、付着した「かきがら」の導きにより三浦半島の長井浦に流れ着き、間もなく鎌倉に移され、鎌倉の長谷寺のご本尊になりました。鎌倉の長谷寺に関係が深い牡蠣の殻が、いろとりどりのアジサイにしているのですね。
あじさいの色素について詳しく知りたい方は、アジサイの青色色素を青色細胞から直接検出!で検索してみてください。
生薬の話「牡蛎」
今回は「牡蛎」について紹介します。
主薬として用いる時は、「ぼれい」と読みます。
イタボガキ科の海産二枚貝カキ類、マガキなどの貝殻を使います。
主成分は炭酸カルシウムで鎮静作用、収斂作用、制酸作用があります。
海水中で育ったためか、水飲による凝堅を軟らかくして
動悸や不必要な汗を飲める働きがあります。
動悸を引き起こす気を下降させ、熱をさまして煩熱を鎮め、
水の流れを正常化させて渇きを止めます。
痰を化し、牡蠣に含まれる多糖類には免疫を増強させる働きが
認められ虚労にも効果があります。
漢方では、制酸薬としてや精神不安、不眠、寝汗などに用います。
牡蛎を含む漢方薬は、桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、
柴胡桂枝乾姜湯、安中散などです。
桂枝加竜骨牡蠣湯は、桂枝湯に竜骨・牡蠣の2味が加わったものです。竜骨と牡蠣は相性の良い組み合わせで一緒に用いる場合があります。竜骨は古代の哺乳動物の骨の化石です。牡蠣と同様炭酸カルシウムを含むほか多量のリン酸カルシウムを含み、固気に働きます。 鎮静作用があり、気分のふわふわしたものを落ち着かせます。 また、微量のアミノ酸や各種元素を含み収斂作用があり、汗を止める働きがあります。 桂枝加竜骨牡蠣湯を用いる人は、体力・精力が消耗して疲れやすく下腹部は突っ張り、臍上動悸が認められるという特徴があります。竜骨・牡蠣は、この顕著な臍上動悸を鎮め、のぼせてフラフラしたり驚いて発汗したりするものを治します。精神不安や神経症、不眠症、また脱毛症や不妊症の治療によく用います。
桂枝加竜骨牡蠣湯は虚証の人に用いますが、これに対して実証で下腹部の緊張ではなく心下部に緊張がある場合は柴胡加竜骨牡蠣湯を用います。柴胡加竜骨牡蠣は 11 味から成り生薬の種類は多いです。小柴胡湯に近い性質があり胸脇苦満や心を治します。また、竜骨・牡蠣を含むいくつかの生薬の働きにより動悸や頭驚を治します。実証の高血圧症、神経症などに用いる薬ですが、物音や光に敏感でビクッと驚き、動悸する人に良く効果があります。
柴胡加竜骨牡蠣湯と大小の関係にあるのが柴胡桂枝乾姜湯です。柴胡加竜骨牡蠣湯は体力の充実している人に用いますが、 柴胡桂枝乾姜湯は外見がいかにも疲れている人に用い柴胡剤としては最も虚証の漢方薬です。 柴胡桂枝乾姜湯に竜骨は含まれず牡蠣のみですが、臍上動悸はほとんどの場合に認められます。柴胡桂枝乾姜湯は神経症以外に、胃潰瘍、皮膚病、冷え症、頭痛など幅広く使用する機会の多い漢方薬です。